弁護士コラム

賃借人の原状回復義務に関する民法改正

[投稿日] 2019年02月27日 [最終更新日] 2019年02月27日

民法の債権法の部分が改正され、

平成29年5月26日に成立、6月2日に公布されました。

平成32年4月1日から施行されます。

この民法改正では、不動産に関する取引(売買・賃貸など)にも

色々な影響があります。

 

そこで、まずは、賃貸契約に関する原状回復義務から説明しましょう。

 

原状回復義務とは、借主は、借りた物を返すときには、

原状(元の状態)に回復して(戻して)返さなければならないという義務です。

 

現行の民法では、

「借主は、借用物を原状に復して、

 これに附属させた物を収去することができる」(民法616条にて準用する598条)

として、借主の権利という形で、

原状回復義務があるということだけ抽象的に規定していますが、

その内容については特に明記してませんでした。

 

改正民法では、

 改正民法621条

  「 賃借人は、賃借物を受け取った後に

   これに生じた損傷(通常の使用及び収益によって

   生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化を除く

   以下この条において同じ。)がある場合において、

   賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務

   を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することが

   できない事由によるものであるときは、この限りでない。」

と規定されました。

 

すなわち、

「原状に復する義務」として、元に戻すのが義務であると明記され、

通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の

経年劣化を除く」として、通常の使用等による経年劣化などの

原状回復義務はない、すなわち、

単なる老朽化と言えるようなものを

新品にして返す義務はないということも明記されました。

これらは、最高裁判所での判決などを改正民法の条文に取り入れたものです。

 

注意しなければならないのは、

よくある例で、ハウスクリーニング代として○万円を支払うと

最初から契約条項に書かれていたりする場合です。

 

改正民法621条は、

この条文のとおりにしないと違法になってしまうような

強行規定ではなく、

この条文と違うことを合意して定めることができる任意規定です。

 

民法の条項が任意規定の場合、

当事者どうしの契約で、

その規定と違うことを取り決める(特約と言います)のは

自由です。

そのため、

上に書いたような

「ハウスクリーニング代として○万円を退去の際に支払う」

というような

契約条項が契約書に書いてあれば、

改正民法621条の特約として有効になってしまいます。

 

現行民法の解釈としても、最高裁判所の判例は、

「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が

賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、

仮に賃貸借契約書では明らかではない場合には、

賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、

それを合意の内容としたものと認められるなど、

その旨の特約が明確に合意されていることが必要である。」と

していました。

 

下級審の判決例では、

オフィスビルなどについて、

賃貸物件のクロス・床板・照明器具などの取り替えを

原状回復義務としていた契約条項を有効と認めたり、

天井の塗り替える原状回復義務を課す契約条項までも

有効だと認めたものがあるようです。

 

ただ、住宅の場合には借主保護の観点が強くなり、

また、一方的に個人借主に不利な契約条項などは、

消費者契約法10条などによって無効になる可能性もあるので

一概に特約が有効とは言えない面もあります。

リアルバリュー法律事務所 〒466-0006 愛知県名古屋市昭和区北山町3-10-4 [現在営業中] 平日9:00-21:00  |  土曜9:00-21:00  |  日・祝9:00-21:00
Resized avatar mini magick20180620 2437 1whr8bt

梅村 正和 弁護士

取扱分野
不動産・建築 相続

コラムの内容は更新時のものであり、最新の情報と異なることがあります。

ページ
トップへ