弁護士コラム

賃借人は壁にポスターや画びょうの跡が残っても責任なし

[投稿日] 2019年03月01日 [最終更新日] 2019年03月01日

賃貸借契約では、契約が終わって、借りていた物件を返還するときに、

賃借人に原状回復義務があります。

原状回復義務とは、借りたときの元に戻して返すということですが、

自分で元に戻すのではなく、元に戻すための修繕費を負担することにする場合も多いです。

 

原状回復義務は、元に戻して返すということですが、

しかしながら、

通常の使用・収益のための経年劣化老朽化を新品にする義務はありません

ただ、

通常の使用・収益による経年劣化・老朽化なのか、

それとも、賃借人が原状を変更したと言えるような

原状回復しなければならないものなのか、

どちらなのか微妙なものは数多く存在します。

 

そこで、

国土交通省は、どちらになるのかについての基準となる

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(いわゆるガイドライン)を

制定し、国土交通省のHPで公開しています。

 

これの別表を見ていくと、

1.床については

(1)家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡について

  家具保有数が多いという我が国の実情に鑑み、その設置は、

  必然的なものであり、設置したことだけによるへこみ、跡は、

  通常の使用による損耗と考えられる。

   カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビについて

  飲み物等をこぼすこと自体は通常の生活の範囲と考えられるが、

  その後の手入れ不足等で生じたシミ・カビの除去は、

  賃借人の負担により実施するのが妥当と考えられる。

(2)畳の変色、フローリングの色落ち日照、建物構造欠陥による

      雨漏りなどで発生したもの)について

   日照は、通常の生活で避けられないものであり、また、

  構造上の欠陥は、賃借人には責任はないと考えられる(賃借人が

  通知義務を怠った場合を除く)。

   冷蔵庫下のサビ跡について

   冷蔵庫に発生したサビが床に付着しても、

  拭き掃除で除去できる程度であれば、

  通常の生活の範囲と考えられるが、そのサビを放置し、

  床に汚損等の損害を与えることは、賃借人の善管注意義務違反に

  該当する場合が多いと考えられる。

   ただし、賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるものは、

  賃借人の善管注意義務違反に該当する場合が多いと考えられる。

(3)引越作業で生じたひっかきキズについて

   賃借人の善管注意義務違反または過失に該当する場合が多いと

  考えられる。

   落書き等の故意による毀損については当然賃借人の負担で行う。

2.壁・天井については

(1)テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電機ヤケ)について

   テレビ、冷蔵庫は、通常一般的な生活をしていく上で必需品であり、

  その使用によるヤケは通常の使用ととらえるのが妥当と考えられる。

(2)台所の油汚れについて

   使用後の手入れが悪くススや油が付着している場合は、

  通常の使用による損耗を超えるものと判断されることが多いと考えられる。

(3)結露を放置したことにより拡大したカビ、シミについて

   結露は、建物の構造上の問題であることが多いが、

  賃借人が結露が発生しているにもかかわらず、賃貸人に通知もせず、

  かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合には、

  通常の使用による損耗を超えると判断される場合が多いと考えられる。

(4)壁に貼ったポスターや絵画の跡について

   壁にポスター等を貼ることによって生じるクロス等の変色は、

  主に日照などの自然現象によるもので、通常の生活による損耗の

  範囲であると考えられる。

(5)タバコ等のヤニ・臭いについて

   喫煙等によりクロス等がヤニで変色したり、臭いが付着している場合は、

  通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多いと考えられる。

   なお、賃貸物件での喫煙等が禁じられている場合は、用法違反にあたるものと

  考えられる。

(6)エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡について

   エアコンについても、テレビ等と同様、一般的な生活をしていく上で、

  必需品になってきており、その設置によって生じたビス穴等は通常の損耗

  と考えられる。

(6)壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボード

  の張替が必要な程度のもの)

   重量物の掲示等のためのくぎ、ネジ穴は、画鋲等のものに比べて深く、

  範囲も広いため、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多いと

  考えられる。

   なお、地震等に対する家具転倒防止の措置については、予め、賃貸人の承諾、

  または、くぎやネジを使用しない方法等の検討が考えられる。

(7)クーラー(賃貸人所有)から水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食した

  場合について

   クーラー保守は、所有者(賃貸人)が実施するべきものであるが、

  水漏れを放置したり、その後の手入れを怠った場合は、通常の使用による損耗

  を超えると判断されることが多いと考えられる。

(8)クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)について

   畳等の変色と同様、日照は通常の生活で避けられないものであると

  考えられる。

(9)壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)

  について

   ポスターやカレンダー等の掲示は、通常の生活において行われる範疇の

  ものであり、そのために使用した画鋲、ピン等の穴は、通常の損耗と考えられる。

(10)クーラー(賃借人所有)から水漏れし、放置したため壁が腐食した

  場合について

   クーラーの保守は、所有者(この場合賃借人)が実施すべきであり、

  それを怠った場合には、善管注意義務違反と判断されることが多いと

  考えられる。

(11)天井に直接つけた照明器具の跡について

   あらかじめ設置された署名器具用コンセントを使用しなかった場合には、

  通常の使用による損耗を超えると判断されることが多いと考えられる。

(12)落書き等の故意による毀損について

   通常の使用の結果による損耗とは言えない。

3.建具(襖、柱など)については

(1)網戸の張替え(破損等はしていないが次の入居者確保のために

  行うもの)について

   入居者入れ替わりによる物件の維持管理上の問題であり、

  賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。

(2)地震で破損したガラスについて

   自然災害による損傷であり、賃借人には責任はないと考えられる。

(3)網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)について

   ガラスの加工処理の問題で亀裂が自然に発生した場合は、賃借人には

  責任がないと考えられる。

(4)飼育ペットによる柱等のキズ・臭いについて

   特に、共同住宅におけるペット飼育は、未だ一般的ではなく、

  ペットの躾や尿の後始末などの問題でもあることから、ペットにより

  柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合は、

  賃借人負担と判断される場合が多いと考えられる。

   なお、賃貸物件でのペットの飼育が禁じられている場合は、

  用法違反にあたるものと考えられる。

(5)落書き等の故意による損耗について

   通常の使用による結果とは言えない。

4.設備、その他(鍵など)については

(1)全体のハウスクリーニング(専門業者による)について

   賃借人が通常の清掃(具体的には、ゴミの撤去、掃き掃除、

  拭き掃除、水回り、換気扇、レンジ回りの油汚れの除去等)を

  実施している場合は、次の入居者確保のためのものであり、

  賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。

(2)エアコンの内部洗浄について

   喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において

  必ず行うとまでは言い切れず、賃借人の管理の範囲を超えているので、

  賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。

(3)消毒(台所、トイレ)について
   消毒は、日常の清掃と異なり、賃借人の管理の範囲を超えているので、

  賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。

(4)浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保の

  ため行うもの)について

   物件の維持管理上の問題であり、賃貸人負担とするのが妥当と考えられる。

(5)鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)について

   入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とする

  ことが妥当と考えられる。

(6)設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)について

   経年劣化による自然損耗であり、賃借人に責任はないと考えられる。

(7)ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すすについて

   使用期間中に、その清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合は、

  賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断される場合が多いと考えられる。

(8)風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等について

   使用期間中に、その清掃・手入れを怠った結果、汚損が生じた場合は、

  賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断されることが多いと考えられる。

(9)日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損について

   賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断されることが多いと考えられる。

(10)鍵の紛失、破損による取替えについて

   鍵の紛失や不適切な使用による破損は、賃借人負担と判断される場合が多い

  ものと考えられる。

(11)戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草について

   草取りが適切に行われていない場合は、賃借人の善管注意義務違反に該当すると

  判断される場合が多いと考えられる。

 

と、国土交通省のガイドラインでは、こんな風に列挙されています。

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梅村 正和 弁護士

取扱分野
不動産・建築 相続

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