弁護士コラム

履行確保法について

[投稿日] 2019年08月12日 [最終更新日] 2019年08月12日

1.履行確保法の制定の経緯 

  平成11年に制定された

 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下、「品確法」といいます。)

 によって、新築住宅の売主は、構造耐力上主要な部分及び

 雨水の浸入を防止する部分については、引渡しの時から10年間の瑕疵担保責任を

 負うことになりました。

  ところが、平成17年に発覚した構造計算書偽装問題を皮切りに、

 新築住宅の売主等が十分な資力を持たず、瑕疵担保責任が履行されないことにより、

 住宅購入者等が極めて不安定な状態に置かれることが明らかとなったため、

 新築住宅の売主等に瑕疵担保責任履行のための資力確保の措置として、

 保証金の供託等を義務づけることになりました。

  これが「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(以下、

 「履行確保法」といいます)です。

  履行確保法は、請負契約における請負人である建設業者や、

 売買契約における売主である宅建業者に対する規制です。

  以下は、主に、宅建業者に対する規制について記述しますが、

 建設業者の場合も基本は同じです。

2.品確法と履行確保法

(1)品確法における瑕疵担保責任の特例

   新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時から

  10年間住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、

  瑕疵担保責任を負います(品確法95条1項)。

   これに反する特約で、買主に不利なものは無効になります(同法95条2項)。

  また、この特例では、買主に瑕疵修補請求も認められています。

(2)履行確保法における資力確保措置の義務づけ

   宅建業者は、自ら売主として引き渡した新築住宅について、

  品確法により定められた瑕疵担保責任の履行を確保するため、

  保証金の供託又は保険への加入が義務づけられます。

   履行確保法は、平成19年5月30日に公布され、

  平成21年10月1日以降に引き渡される新築住宅について

  保証金の供託等を義務づけています。

(3)履行確保法が適用される主体

   資力確保措置が義務づけられるのは、自ら売主として

  買主に新築住宅を引き渡す宅建業者であるが、

  買主が宅建業者であるときは、資力確保措置の義務づけの対象とは

  なりません

   買主が宅建業者であるときは、不動産取引について専門知識を

  有するのが一般的であるため、資力確保措置を売主に義務づけていません。

   また、新築住宅の売買の代理媒介をするにすぎない場合には、

  資力確保措置を講ずる義務を負いません

3.定義など

(1)新築住宅

   工事完了から起算して1年を経過していない新たに建設された住宅で、

  まだ、人の居住の用に供したことのないものをいう。

(2)住宅構造耐力上主要な部分

   住宅のうち、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として

  政令で定めるもの。

   例えば、住宅の基礎、基礎ぐい、壁などで、当該住宅の自重、積載荷重

  などを支えるもののこと。

   例えば、住宅の屋根や外壁、もしくは、雨水を排除するため住宅に設ける

  排水管のうち、当該住宅の屋根や外壁の内部にある部分などのこと。

4.保証金の供託等

(1)供託の義務

   宅建業者は、各基準日において、当該基準日前10年間に自ら売主となる

  売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について、

  当該買主に対する特定住宅販売瑕疵担保責任の履行を確保するため、

  住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならない。

   基準日は、年2回で、毎年3月31日及び9月30日である。

   平成21年10月1日から起算して10年を経過する日までの間は、

  まだ10年経っていないので、平成21年10月1日から当該基準日までの間に

  買主に引き渡した新築住宅の戸数に対応する保証金の供託を

  していなければならない。

(2)供託額

   住宅販売瑕疵担保保証金の額は、

  基準日における販売新築住宅の合計戸数を基準として、法律及び政令で

  定めた額である。

   ただし、住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結し、保険証券又は

  これに代わるべき書面を買主に交付した場合における当該保険契約に係る

  新築住宅は、上記の合計戸数の算定対象とはならない

(3)供託場所・供託物

   住宅販売瑕疵担保保証金の供託は、当該宅建業者の主たる事務所の

  最寄りの供託所にする。

   住宅販売瑕疵担保保証金は、国債証券地方債証券その他の国土交通省令で

  定める有価証券により、供託することもできる。

   ただし、住宅販売瑕疵担保保証金に充てうる有価証券の価額は、

  国債証券では額面金額100%、地方債・政府保証債では90%、それ以外では

  80%となる。

(4)保険への加入

   保険への加入とは、国土交通大臣が指定した住宅瑕疵担保責任保険法人との

  間で瑕疵担保責任の履行等に対して保険金を支払うとする住宅販売瑕疵担保責任

  保険契約を締結することであり、この保険契約は、一定の要件に適合するもので

  なければならない。

5.供託等の届出

  新築住宅を引き渡した宅建業者は、基準日ごとに、当該基準日に係る

 住宅販売瑕疵担保保証金の供託及び住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結状況

 について、免許権者に届け出なければならない

  この届出は、基準日から3週間以内に、所定の様式による届出書によって行う。

  新築住宅を引き渡した宅建業者は、原則として、保証金の供託等の資力確保措置

 を講じていない場合や届出をしていない場合、基準日の翌日から起算して50日

 経過した日以後においては、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結して

 はならない。

6.保証金の還付・追加供託・取戻し

(1)保証金の還付請求

   住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている宅建業者が特定住宅販売瑕疵担保責任

  を負う期間内に、品確法に規定する隠れた瑕疵によって生じた損害を受けた

  当該特定住宅販売瑕疵担保責任に係る新築住宅の買主は、その損害賠償請求権に関し、

  当該供託宅建業者が供託をしている住宅販売瑕疵担保保証金について、他の債権者に

  先だって弁済を受ける権利を有する。

   この権利を有する者は、一定の場合に限り、この権利の実行のため住宅販売瑕疵

  担保保証金の還付を請求することができる。

   一定の場合とは、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権について債務名義を取得

  又は公正証書等を作成した場合、供託宅建業者が死亡や倒産等して、損害賠償義務

  の履行が困難と認められる場合である。

(2)不足額の追加供託

   供託宅建業者は、買主からの還付請求により、住宅販売瑕疵担保保証金の額が

  基準額に不足することとなったときは、法務省令・国土交通省令で定める日(国

  土交通大臣から還付があった旨の通知書の送付を受けた日から2週間以内に、

  その不足額を供託しなければならない。

(3)超過額の取戻し

   供託宅建業者は、基準日において、住宅販売瑕疵担保保証金の額が基準日に

  係る基準額を超えることとなったときは、その超過額を取り戻すことができる

  が、この取戻しは、免許権者の承認を受けなければすることができない。

7.供託所の所在地等についての書面の交付・説明

  供託宅建業者は、自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結するまでに

 住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在及びその表示等について、

 これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。

8.紛争処理体制

  指定住宅紛争処理機関は、住宅瑕疵担保責任保険契約に係る新築住宅の売買契約

 に関する紛争の当事者の双方又は一方からの申請により、当該紛争のあっせん、

 調停及び仲裁の業務を行うことができる。

  住宅紛争処理支援センターが、紛争処理に必要な費用の助成・あっせん等に関する

 情報及び資料の収集等により、指定住宅紛争処理機関が行う業務を支援している。

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梅村 正和 弁護士

取扱分野
不動産・建築 相続

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