弁護士コラム

不動産所有者が行う事業方式(その3の3:権利調整 - 貸宅地の整理)

[投稿日] 2020年05月12日 [最終更新日] 2020年05月13日

1 貸宅地とは、借地権の底地に対する地主側からの呼称

  一般には、貸宅地の整理のことを借地権の整理と称することが多いが、土地の権利調整コンサルの依頼は、

 地主側からがほとんどであるため、地主側からの視点で貸宅地の整理と言うことも多い。

  貸宅地の対象になる土地は、ほぼ全てが旧借地法に基づくものといってよく、しかも、そのほとんどが

 戦前からのものなので、都心に近く、最寄駅にも近いというような交通上の立地に優れ、駅前商店街とか

 人気ある住宅地に多いという特徴がある。

  このような貸宅地は、長期間、賃貸借関係が経過し、地主側も借地人側も、二代目、三代目、・・・と

 代替わりしているケースも多く、地主側も借地人側も複雑な事情を抱えていたりする。

 

2 貸宅地の整理のパターン

(1)固定資産の交換の特例を使った交換

   貸宅地と借地の交換、借地と地主所有の他の土地との交換、貸宅地と借人所有の他の土地との交換

(2)貸宅地の売却

   借地人への売却、第三者への売却

(3)借地権の売却

   地主への売却、第三者への売却

(4)共同で第三者へ同時売却

(5)第三者との等価交換による事業化

 

3 各パターンについて

(1)固定資産の交換の特例を使った交換

  ア 貸宅地と借地の交換

    貸宅地と借地を固定資産の交換における税制の特例を使って交換し、それぞれが土地の完全所有権を

   取得する方法。

    敷地を分割することになるので、分割線に建物がかかる場合には、建物の取壊しが伴う。そのため、

   借地人の同意を得られないこともあり得る。

    双方の交換比率は、一般的には、相続税路線価の借地権割合を基準とするが、借地人が第三者への

   借地権譲渡の際に、通常、借地人から地主に譲渡承諾料として譲渡する借地価格の10%程度を支払う

   ことから、この貸宅地と借地の交換の場合も、相手方が第三者ではなく、たまたま地主だったという

   理由で、相続税路線価の借地権割合から10%程度減らしたものを最初の交渉のベースにすることが

   多い

    注意すべき点は、賃貸借に到った経緯や、地代等を考慮して、交換交渉のときに条件とすることなど、

   本来借地人が負担すべき費用を地主が負担する等々、負担すべきでない人が出費すると、交換差金と

   みなされてしまい課税の対象になり、更に、高い方の20%を超えると交換差金全額に課税されるハメ

   になることである。

    借地人が本来負担すべき費用としては、登録免許税、不動産取得税、建物取壊し費用、建物改築費用、

   借家人の立退き費用などがある。

  イ 借地と地主所有の他の土地との交換

    貸宅地の整理の対象となる借地の近隣に地主が以前から所有している土地や、貸宅地の整理によって

   更地になった土地を代替地に使って、借地と交換する。

    ただ、地主が貸宅地の整理のために借地人との交換用に周辺に代替地を取得し、これを借地と交換

   することは認められない。最低でも、交換の1年以上前から保有していて、代替地として購入したもの

   ではないことが要件となる。

    この手法は、借地人が建物を新築することになるので、建物が老朽化して建て替えが必要といった

   状況でないと、借地人の同意を得るのはなかなかに困難である。

    逆に、借地人から建て替え申し出があったときなどは、タイミングとしてグッドということになる。

  ウ 貸宅地と借地人所有の他の土地との交換

    これはケースとしては少ないと思われる。

    借地人やその妻が相続などで土地を取得したような場合などが考えられる。

    このようなケースのとき、借地人は、相続した土地を処分して、貸宅地の買い取り資金を作ろうとしがち

   であるが、はじめから固定資産の交換の特例を使って貸宅地と交換すれば無駄な税金がかからないということ

   になる。

    地主は地主で、更地を取得できるため、将来、資金が必要になった場合、いつでも換金可能で、かつ、

   自分が居住するわけでもないので、場所もそれほどこだわらないといった面があり、話があれば、

   スムーズにまとまりやすいとは言える。

(2)貸宅地の売却

   貸宅地を処分することによって貸宅地の整理を行う。借地人への売却による貸宅地の整理は、毎度おなじみの

  最も多く利用される手法である。

   もっとも、最近は、借地人の高齢化・核家族化、先行きの収入面の不安等による購入意欲の減退が目立ってきており、

  従来とは事情が変わりつつある。

   借地人による購入不可の場合、第三者へ貸宅地を売却することになるが、借地人が存在するために足元を見られ、

  価格的にはかなり安くなってしまうことも多い

   したがって、地主側に、相続税の納税資金や、事業の運転資金調達といった換金の必要に迫られているような場合

  以外には、第三者への売却は、あまりお勧めできない。

(3)借地権の売却

   通常は、まず、地主に売却を申し出るが、価格などで折り合えなければ、第三者に売却することになる。

   地主側は、もともと自分の土地なのに、自分の土地をなぜお金を払って買わなければならないのかという意識

  有していたりして、特に高額での借地権購入には積極的になれないことも多い。

   第三者に売却する場合、旧借地法の借地権は、ほとんど賃借権であるため、売却について地主の承諾が必要となる。

  このときに、借地契約が不備・不明確では、リスクが高くて購入しようと言う第三者はいなくなるため、あらかじめ

  借地契約を整備することが重要になる。

   売却の際には、地主に譲渡承諾料を支払う必要も出てくる。

   自ら借地権を積極的に買い取る借地権ビジネスを展開する不動産会社も存在するが、当然、再販を前提として、

  再販の購入者が不安を持たないように地主との借地条件を全て整備した上で、借地上に一戸建て住宅やマンション

  を建てて売り出すことになる。そのため、名前の知れた住宅地や容積率の高い地域に多くこのようなものが認められる。

(4)共同で第三者へ同時売却

   この場合、土地の所有権を売るのと同じことなので、当然、最も高く土地を売却できる場合となる。

   ただし、地主と借地人が土地売却代金をどのような割合で分配するのかをあらかじめ明確に決めておかないと、

  地主と借地人との間でトラブルが発生することになるため注意が必要。

   通常の配分割合は、貸宅地と借地の交換と同様、相続税の借地権割合から譲渡承諾料相当分として10%程度

  減らしたものをベースにする場合が多い。すなわち、借地権割合が60%であるなら、地主50%、借地人50%

  で配分するのは一般的である。

   また、10%という数字は、法定されているわけではないが、これまでの借地非訟事件において、譲渡承諾料として

  借地権割合の10%を命じる判例が積み重ねられてきており、ある種の相場感がある数字である。

(5)第三者との等価交換による事業化

   これは、ディベロッパーや投資家などの第三者を事業主体にして、その資金で、マンションや賃貸建物を建て、

  完成した建物と、貸宅地・借地とを立体買換えによって等価交換するものであるので、貸宅地の整理の中では、

  地主・借地人の双方にとって最もメリットが大きい手法で、共同売却をはるかに上回る土地評価を得られることが

  多い。

   当然、一定規模の敷地面積が必要なため、単独での敷地が狭いときには、可能な限り周辺地域を取り込んで、

  大がかりな事業にする必要がある。

   事業化に同意しない借地人は、固定資産の交換により、地主が所有する他の土地との交換や、地主や第三者の

  資金で借地権の買い取りをする場合もある。

   地主・借地人とも、事業資金の負担なしで土地所有権と完成した建物所有権が手に入る上、税制の特例があり、

  一定の条件を満たせば、課税の繰り延べが可能である。容積率の高い地域や、商業性のある地域ほど、地主・借地人

  双方に、より大きなメリットが生じる。

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梅村 正和 弁護士

取扱分野
不動産・建築 相続

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