弁護士コラム

不動産所有者が行う事業方式(その3の4:権利調整 - 共有対策)

[投稿日] 2020年05月13日 [最終更新日] 2020年05月13日

1 不動産の共有の問題点

(1)不動産の共有とは、1個の不動産(土地または建物)を、複数の所有者(共有者)が権利を分け合って所有することです。

  登記簿に、共有持分2分の1とか書いてあるやつです。

   共有物の処分や管理は、法律上、各共有者が単独で自由にできないため、共有者間で意見を調整し、合意する必要があり、

  場合によっては、これが結構面倒なことになったりします。

(2)不動産の共有は、通常は、相続によって発生したり、不動産購入時に夫婦や親子で資金を出し合った場合に共有にしたり

  します。

   マンションなどの集合住宅の底地を共有する場合や、共同利用する私道が共有となっている場合もあります。

   不動産が賃貸物件など収益物件である場合は、原則としては、その不動産が生み出す利益を、各共有者の持分割合に応じて

  按分することになり、逆に、不動産の管理にかかる費用は、各共有者が持分割合に応じて負担することになります。

(3)共有になった始めの時点では特に問題がなくても、長期間を経過するうちに、代替わりしたり、夫婦であれば離婚したり、

  家族間の不和が発生したりとトラブルが発生しがちになります。

   そして、上の(1)に書いた、共有者間での意見調整や合意が全くできなくなると、その共有不動産を何の利用もできない

  単に固定資産税を納税するだけの死んだ土地になってしまうおそれもあります。

 

2 共有状態を解消する各種の方法

  上の1(3)に書いたように、共有不動産は、将来、トラブルが発生するおそれがあるので、共有状態を解消できるのであれば、

 解消しておいた方が良いということになります。

(1)共有物分割(現物分割)

   共有不動産が十分な面積のある土地であれば、各共有者の持分割合に応じて、土地を分筆し、分筆後の各土地を共有者であった

  人たちが単独所有するようにする(現物分割)ことが可能です。

   ただ、土地の面積や形状、地域の状況によっては、土地を細分化すると土地の価値が大きく下がってしまう場合がありますし、

  そうでなくても、土地を細分化すること自体に抵抗感がある場合もあり得ます。

   また、綺麗な形に真っ二つに分筆できる場合は良いですが、分筆後の土地の形状がまちまちであったりすると、分筆後のそれぞれの

  土地の価値が違ってくるので、どのように分筆するかで揉めることも多いです。

(2)共有者による持分の取得(売買)

   共有者の一人が、他の共有者の持分を買うことです。いくらで買うかということの合意ができ、買う立場の共有者に買うだけの資金

  があれば、その買った共有者が不動産の単独所有者となって、その不動産を十分に利用することができるようになります。

(3)持分交換

   遺産相続等によって、複数の不動産を共有する形態になってる場合、それぞれの持分を交換して、それぞれが単独所有者になると

  いう方法もあります。これの場合、条件を満たせば、前に固定資産の交換のところで述べた課税上のメリットがあり得ます。

(4)同時売却・換価分割

   共有不動産を売却して、売却代金を持分に応じて按分する方法です。

(5)共有持分の売却

   異常の(1)から(4)の方法は、各共有者全員の合意か、あるいは共有物分割訴訟の判決などがないとできません。

   これに対して、各共有者は、自分の持分だけを第三者に売却することができ、自分の持分だけを売ることについては、他の共有者の

  同意や承諾は不要です。

   ただ、共有持分の売却では、売却価格は、不動産の価格に持分割合を乗じた価格に比べて低額でしか売れません。買い手からすれば、

  共有者になっただけでは、その不動産を他の共有者を排除して独占的に使えるわけではなく、場合によっては、持分の登記名義を得た

  だけで、何も利用できないということもあり得るからです。

   なので、共有持分の売却は、売却が安くなっても良いから、とにかく、共有者という関係から離脱したいと思ってる共有者が選択する

  方法ということになります。

 

3 所有者不明土地の問題

  相続によって共有状態になった場合、法定相続人間で遺産分割協議が調わず、あるいは、協議が調っても、その協議に基づく相続登記

 をしないまま、被相続人(亡くなった人)を所有者とする登記名義のまま長期間放置されるケースがあります。

  このような場合、いったい誰がその不動産の所有者なのか不明であるということが発生します。

(1)法務省による不動産登記簿の相続登記未了土地調査

   法務省が平成29年に実施し、公表した「不動産登記簿の相続登記未了土地調査(サンプル調査)」の結果、所有権の登記から50年以上

  を経過した個人所有の土地の割合は、農地山林について比較的高く、かつ、大都市部よりも中小都市中山間地域において比較的高い

  傾向が明らかになりました。

   たとえば、中小都市、中山間地域の山林では、最後の登記から50年以上経過した土地が調査対象地の筆数の32.4%を占めており、

  更に、90年以上経過した土地も9.4%を占めていました。

   また、大都市の宅地であっても、50年以上経過した土地が5.4%を占め、程度の差はあっても、問題状況の広がりが明らかとなりました。

(2)所有者不明土地の権利処理の困難

   相続登記未了のまま放置されると、取り敢えずは、不動産登記を調べただけでは所有者が誰か分からないということになります。

  特に長期間放置されたため、関係者の死亡や相続が複数発生していると、相続人らが自分がその不動産を相続したという認識もなく、

  相続人の数が何十人にもなってしまっているという事態になります。

   そうなると、その不動産の現時点での最終的な相続人は何人いて、それは誰だということを戸籍関係書類などを調査して判明させなく

  てはならず、その調査に手間暇や時間がかかったり、専門家に依頼すれば依頼費用もかかるということになります。

   また、現時点での最終の相続人を全て判明させたとしても、たとえば、そのうちの一人が海外等にいて、あるいは、どこに居住している

  のか分からず、連絡が取れなかったりすると、相続人全員の同意(ハンコ)をもらうことができないので、結局、その不動産の処分が

  何もできないということもあり得ます。

   なお、相続調査や権利処理の具体的な方法については、国土交通省の取り組みによる「所有者の所在の把握が難しい土地に関する

  探索・利活用のためのガイドライン」が国交省ウェブページからダウンロード可能であり、参考になります。

(3)制度改正

   所有者不明土地問題が東日本大震災後の復興事業の円滑な進捗の支障となったことを契機として、平成29年頃から、政府主導により、

  問題解決のための複数の立法作業等の対策が進められてきています。

   平成30年には、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が成立し、同法に、法務大臣、国交大臣に対して、

  基本方針の策定を求めることが明記され、令和元年5月には、所有者の氏名や住所が一部あるいは全部が記載されていない変則型登記

  の解消を図る新法が成立しました。

   ただ、当面は、所有者不明土地が発生しないように、遺言書作成したり、相続登記を漏れなく行うといったことを励行することが

  求められます。

 

4 共有私道の問題

(1)解消できない不動産の共有の類型に共有私道があります。

   公道に接道しない複数の宅地所有者が、公道に至る私道敷の土地の権利を共同で所有するような場合です。

   私道が一筆の土地として登記され、その土地を複数名が共有するという民法の共有規定が適用される私道(共同所有型私道)と、

   私道が複数の筆で構成されていて、隣接する宅地の所有者等が、私道の各筆をそれぞれ所有し、相互に利用させ合う私道(相互持合

  型私道)があります。

   原則として、相互に通ぶ行を認め合う関係にありますが、通行権、特に車両での通行権をめぐって深刻なトラブルになる場合が

  あります。

   共有者相互に、明示・黙示の取決めがあれば、それに従って利用・管理することになりますが、取決めがなかったり、あっても不明確

  であれば、共同所有型私道については、民法の共有規定に従って決するということになります。

(2)共有私道所有者不明土地問題

   上の3(1)の法務省による調査の結果、自然人名義の道路(私道だと思われます)についても、最後の登記から50年以上経過した

  土地が相当割合で存在していることが判明しています。

   中小都市・中山間地域では、道路敷の土地の31.2%について、最後の登記から50年以上経過していました。

   共有私道の舗装工事、地価のライフライン(上下水道、ガス管など)や電柱の維持管理等について、一般論としては、権利者らの

  適宜の合意によって実施されるはずですが、私道の共有者の一部が不明であることによって、これらの管理に支障が生じる場合が

  多く発生しています。

   このような場合、不明となった所有者(共有者)の同意無しでできることや、法律上同意が必要なことがあるはずですが、同意が要る

  のか、要らないのか、はっきりしない場合も当然あります。一応、「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に

  関する研究報告書 ~所有者不明私道への対応ガイドライン~ 」(法務省ウェブページにてダウンロード可)がありますが、

  なかなかに難しい場合もあります。

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梅村 正和 弁護士

取扱分野
不動産・建築 相続

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