クーリングオフ

コレ絶対知っとくべき。クーリングオフできる条件と手続方法
商品を購入したりサービスの契約をしてしまったりした場合、後からよく考えてみると、取り消したくなることがあります。そのようなケースでは、クーリングオフという制度によって契約の取り消しができることがあります。ただし、クーリングオフはいつでもできるわけではなく、できる契約とできない契約があります。また、クーリングオフをする場合には内容証明郵便という郵便を使う必要性が高いです。
そこで、今回はクーリングオフ制度のこととその方法をご紹介します。
クーリングオフという言葉を聞いたことがある人はたくさんいるでしょうけれど、それが実際にどのようなものなのかがわからないということがあります。
クーリングオフとは、契約の申込撤回や無条件取り消しのことです。
契約をする場合、原則的には、詐欺行為があったり脅迫行為があったりなど、何らかの問題がない限りは契約の取り消しはできません。
しかし、クーリングオフができる場合には、期間内であれば、特に理由がなくても契約取り消しができます。
クーリングオフの目的は、消費者保護です。
消費者が商品を購入したりサービスの契約をしたりする場合、よく考えてから契約をするかどうかを決めるいとまがないことがあります。
たとえば、急に自宅に訪問されて物品を売りつけられたり、電話で勧誘されたりした場合などです。
また、契約内容が複雑で、すぐには契約内容をしっかり理解しにくいケースもあります。
このような場合、消費者がいったん契約をしたとしても、一定期間クーリングオフできるようにすることによって、熟慮の期間を与えています。
クーリングオフをすると、既に代金を支払っていた場合には、全額が返金されます。契約書内にキャンセル料などの定めがあっても、それを支払う必要はありませんし、商品を返却する際の引取料は業者負担になります。
サービス提供を受けるタイプの契約については、既にサービスを受けていたとしてもクーリングオフによって契約を取り消すことが可能ですし、住宅をリフォームしてもらったケースなどでは、業者に対して、原状に戻すことを要求できます。
消費者にはクーリングオフの権利がありますが、どのような場合でもクーリングオフが認められるわけではありません。以下では、クーリングオフができる場合とできない場合をご紹介します。
まずは、クーリングオフができる場合を見てみましょう。
契約の種類 | クーリングオフできる期間 | 関係法令 |
訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスも含む) | 法定書面受領日から8日間 | 特定商取引に関する法律 第9条 及び 第9条の2 |
電話勧誘販売 | 法定書面受領日から8日間 | 特定商取引に関する法律 第24条 |
連鎖販売取引(マルチ商法) | 法定書面受領日から20日間 | 特定商取引に関する法律 第40条 |
特定継続的役務提供(エステや語学教室などの継続的なサービス提供の契約) | 法定書面受領日から8日間 | 特定商取引に関する法律 第48条 |
業務提供誘引販売取引(副業のための商品や研修制度などの販売) | 法定書面受領日から20日間 | 特定商取引に関する法律 第58条 |
個別信用購入あっせん(1つの商品やサービスの購入のためにするクレジット契約) | 法定受領日から8日間 | 割賦販売法 第35条の3の10~12 |
預託取引契約(現物まがい商法) | 法定書面受領日から14日間 | 特定商品等の預託等取引契約に関する法律 第8条 |
宅地建物取引(宅建業者が売主で事業所外の取引のケース) | 法定書面受領日から8日間 | 宅地建物取引業法 第37条の2 |
ゴルフ会員権契約 | 法定書面受領日から8日間 | ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律 第12条 |
投資顧問契約 | 法定書面受領日から10日間 | 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律 第17条 |
保険契約(保険会社外での契約のケースのみ) | 法定書面受領日から8日間 | 保険業法 第309条 |
上記のように、クーリングオフができる契約はさまざまですが、クーリングオフができないケースや契約などもあります。
クーリングオフができない場合は、以下のようなケースです。
まず、クーリングオフには期間が設けられているので、その期間を過ぎてしまうと行使できません。
また、消耗品の場合(化粧品や健康食品等)、使用してしまうと、すでに使用した分についてはクーリングオフが認められません。
さらに、購入代金が3,000円未満の契約の場合、クーリングオフはできませんし、通信販売の場合もクーリングオフ制度は適用されないので注意が必要です。
エステや語学教室、学習塾、パソコン教室などの場合、短期間の契約であったり少額の契約であったりすると、クーリングオフができません。
具体的には、エステの場合には1ヶ月以内、語学教室・学習塾・家庭教師・パソコン教室・結婚サービスの場合には2ヶ月以内の短期契約ならクーリングオフできませんし、これらの契約において金額が5万円以内の場合にもクーリングオフは認められません。
クーリングオフは、商品やサービスを購入したケースだけではなく、自分が商品を売ってしまった場合にも適用されることがあります。
それは、訪問買い取りのケースです。
近年では、訪問販売に対する規制が強まってきたため、業者が突然自宅にやってきて高級な貴金属などを低額で買い取っていく、訪問買い取りが増えています。
このようなケースであっても、消費者は、突然訪ねてこられて、冷静に判断できないままに貴重な物を安値で売ってしまったりするので、被害を受けることから、クーリングオフが認められるのです。
訪問買い取りのケースでクーリングオフする場合、契約が初めからなかったことになるので、業者に対して、売ってしまった商品の返却を求めることができます。
しかし、訪問買い取りの場合には、実際には商品の返却を受けることが難しくなるケースが多いです。そもそも、業者から何の書類も受け取っておらず、業者の名称や連絡先もわからないことが多いですし、売ってしまった商品の明細書なども作成されないので、具体的にどの商品を取り戻す権利があるのかなどが特定できないことになってしまうからです。
訪問買い取り被害に遭うと、ダメージが大きくなるので、くれぐれも注意しましょう。
次に、クーリングオフする場合の、具体的な方法をご紹介します。
クーリングオフをする場合、書面によって通知をしなければなりません。口頭などで「クーリングオフします。」と言っても、有効にクーリングオフをすることはできません。
これは、特定商取引法において、「書面により」申込の撤回または契約の解除を行うことができる、と規定されているからです。
そこで、クーリングオフしたい場合には、相手業者に対して書面によってクーリングオフの通知書を送ります。このとき、内容証明郵便という種類の郵便を利用することが大切です。
内容証明郵便とは、差し出し人と郵便局に、送ったものと同じ内容の控えが残るタイプの郵便です。日付も入るので発送時も明らかになりますし、配達証明をつけることによって、相手方に到達した日にちも明らかになります。
内容証明郵便でクーリングオフ通知を送ると、相手業者から「そのような通知は受け取っていない」と言われるおそれがなくなって、安心です。
これに対して、もし普通郵便などでクーリングオフ通知を送ってしまったら、配送途中に紛失されてしまうおそれもありますし、業者から「そのような郵便は届いていない」と言われてしまうおそれがあります。相手が悪徳業者で、郵便を勝手に処分してしまっても、こちらは通知書を送ったことを証明する手段がなくなってしまうのです。
このようにしてクーリングオフ期間が過ぎてしまうと、もはやクーリングオフをすることができなくなってしまいます。
内容証明郵便を利用すると、このような危険性がなくなり、確実に期間内にクーリングオフをすることができるので、役立ちます。
内容証明郵便は、どこの郵便局でも取り扱っているわけではありません。事前に取り扱いのある郵便局を確認して、同じ内容の通知書を3通作って郵便局に持参して発送しましょう。
また、その際相手にいつ送達されたかを証明してもらうための「配達証明」をつけることも重要です。インターネットを利用する場合には、ネット上で内容証明郵便を発送できる電子内容証明郵便サービスも利用することができます。
消費者が商品やサービスなどの契約をすると、どうしても業者よりも不利になって冷静に対処できないまま契約させられてしまうケースがあります。訪問販売やエステ契約などのケースでは、クーリングオフと言って、契約の無条件取り消しをすることができます。
クーリングオフにはできる場合とできない場合があり、クーリングオフをしても物品の取り戻しができなくなるケースなどもあるので、注意が必要です。
今回の記事を参考にして、後悔しないようにクーリングオフ制度を賢く利用しましょう。
クーリングオフを得意としている弁護士
大西 洋至 弁護士 京都府
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