飲食店

料理・接客・予約・支払い…飲食店での問題は適切に対応しよう
レストランやカフェ、居酒屋など、飲食店を利用する機会はとても多いです。おいしいものやおいしいお酒を楽しむのはとても良いことですが、飲食店を利用する場合でも法的なトラブルが起こることがあります。
たとえば、予約やキャンセルの場面でトラブルが発生することもありますし、店内での対応などが原因で問題が起こることもあります。支払いに関するトラブルも多いです。
そこで今回は、飲食店で起こりがちな法的なトラブルへの対処方法をご紹介します。
飲食店を利用する場合には、事前に予約をすることが多いです。予約をしても、後に都合が悪くなってキャンセルすることがありますが、その場合、キャンセル料がかかるケースがあります。当日のキャンセルなどの場合には、100%の食事代金がかかってしまうことも多いです。
そうなると、客側にしてみると、一切食事をしていないのにどうして100%ものキャンセル料を支払わなければならないのかと感じてトラブルになります。
また、そもそも店側からキャンセル料についての明確な説明を受けていなかったので、キャンセル料を支払う必要がないのではないかという問題も起こりがちです。
まず、店からキャンセル料の説明がなかった場合にキャンセル料を支払う義務があるかどうかという問題から見てみましょう。
飲食店に利用の予約をした場合には、店と客との間で、当日利用するという内容の契約が成立します。また、インターネットなどで予約をする場合、通常ホームページ上にキャンセル料についての定めが記載されていることも多く、見落としたことが客の確認ミスになることもあります。
それを一方的に破棄するわけですから、キャンセルをしたら、キャンセル料が発生すること自体はやむを得ません。店側から明確な説明を受けていなかったとしても、何らかのキャンセル料を支払わなければならない可能性が高いです。
しかし、キャンセル料を支払う場合でも、金額には限度があります。消費者契約法によって、業者が消費者に請求できるキャンセル料は、キャンセルによって業者に通常発生する平均的な損害額に相当する金額までとされています(消費者契約法9条1号)。
たとえば当日にキャンセルをした場合であっても、飲食代の100%が妥当であるとは言いがたいことが多いでしょう。店側が、キャンセルされた食事のために用意した材料を他の客の料理に使うことができた場合などには、その分減額することもできる可能性があります。また、店側が予約時にキャンセルについてきちんと説明していれば、トラブルを防止できた可能性もあるので、そのことも勘案するとさらにキャンセル料の金額が減額される可能性があります。
このように、飲食店利用をキャンセルした場合、基本的にキャンセル料が発生しますが、その金額については100%になるとは限らないので、覚えておきましょう。
次に、飲食店利用の際に店内で起こりがちなトラブルについて見てみましょう。
レストランやカフェなどで食事をしていると、店内で飲食中にいろいろなトラブルが起こることがあります。よくあるのが、出された料理の中に異物が入っているなどのトラブルです。たとえばラーメンに髪の毛やゴムが入っているケースなどがありますし、出された食品(生ものや焼き魚など)が原因で食中毒になることもあります。
このような場合には、まず、ラーメンのケースなどでは、代わりのラーメンの提供を要求することができます。また、食中毒のような損害が発生していれば、病院の治療費や慰謝料などの損害賠償をすることも可能です。食品衛生法によって、腐敗したものや有害物、健康を損なう異物が含まれる不衛生な食品の販売は禁じられているからです。
食中毒になった場合や異物が混入していたケースでは、この規定に反するおそれがあるので、店側の対応が悪い場合には保健所などに連絡するとよいでしょう。
また、子どもを連れて行った場合に、子どもが料理を食べてやけどをすることなどもあります。
この場合、熱すぎる料理を出した店に対して慰謝料請求ができるのかが問題になりますが、子どもの年齢や出した料理の種類などによっては、店に慰謝料請求ができる可能性があります。たとえば、子どもが2歳くらいの幼児であり、出したスープが非常に熱く、出したウエイターが「熱いですよ」などの注意を全くしなかった場合などには、店側に責任が発生する可能性があります。
ウエイターが料理や飲料をこぼして客の衣類を汚してしまうケースもあります。この場合にも、衣類のクリーニング費用などを請求することができます。もしクリーニングによっては汚れを取ることができないような汚れ方をしてしまった場合には、衣類の弁償(ただし、新品の価格ではなく、汚された時点での時価です)を要求できるケースもあります。
過剰なクレームは違法行為になることも飲食店を利用していると、店側の対応が悪いのでクレームを言いたくなるケースがあります。
クレームは、正当な範囲であれば特に問題になりませんが、過剰なクレームをつけると、それが違法行為になってしまうことがあります。
たとえば、料理が出てくるのが遅いと感じた場合など、機嫌が悪くなって店員を怒鳴りつけることなどがありますが、これについても過剰な騒ぎになると、店に他のお客さんが来なくなって店側に損害が発生します。「この店は最低な店だ!」などと言って騒いでいると、そのことが威力業務妨害罪と評価されて、こちらが犯罪者扱いされてしまうおそれもあるのです。このとき、店員に無理矢理土下座をさせたら強要罪や脅迫罪になる可能性もありますし、「許してほしかったら慰謝料払え」などと言って金銭を要求すると、恐喝罪になってしまうおそれもあります。
店側から「お引き取りください」と言われて退去を求められているにもかかわらず、それに応じないで店に居座り続けた場合には、不退去罪が成立してしまうおそれもあります。
このように、過剰なクレーム行為を続けると、刑事事件にまで発展してしまうおそれもあるので注意が必要です。
また、店のサービスが悪いと感じた場合に、そのことをSNSやツイッターなどに書き込んでしまったら、そのことが業務妨害などと評価されてしまうおそれもあります。
この場合、店側からネット上で誹謗中傷を受けたと言われて業務妨害罪で告訴されたり、損害賠償請求をされたりするおそれもあります。
飲食店にクレームを言う場合には、くれぐれも相当な限度にとどめることが大切です。
飲食店では、ぼったくりや無銭飲食などの支払いに関するトラブルが良く起こります。
ぼったくりのトラブルとは、店が法外な飲食代を要求することによる問題です。
店外にきちんと料金の表示をしなかったり、わざと誤解を招くような表示をしたり、きちんと料金の説明をしなかったりして、後になって驚くほど多額な請求をするのです。
ぼったくりというと、キャバクラなどの風俗店で多いイメージがありますが、一般の飲食店でも起こることがあります。
飲食料金だけではなく、サービス料やチャージ料などが請求されることも多いです。
ぼったくりは犯罪行為になることがあります。たとえば、実際とは異なる料金を告げて料理を注文させて、法外な代金の支払いをさせるのは詐欺罪になる可能性がありますし、支払いを断られた場合に恫喝して支払わせると、恐喝罪になる可能性もあります。
追加料金がかかるけれども、「ぼったくり」とまでは言えないのではないかという程度に抑えている「プチぼったくり」の飲食店もあるので、注意が必要です。
また、当然のことですが、無銭飲食をしないことも重要です。
無銭飲食は犯罪になります。はじめから支払う意思がなければ詐欺罪になってしまいますし、店内に入ってからお金がないことに気づいた場合にも、支払いの際に嘘をついて支払いをせずに逃げた場合には、やはり詐欺利得罪が成立してしまいます。
店で料理をいただいた後、支払いの段になってお金がないことに気づいたら、正直に話してきちんとお金を持ってきて、支払いをしましょう。そうすれば犯罪が成立にすることはありません。
今回は、飲食店利用にまつわる法的なトラブルについて解説しました。
飲食店の利用の際には、さまざまなトラブルが起こります。予約キャンセルの際や、店内での飲食時、さらには支払いの段にも問題は起こります。
これらのトラブルに遭わないためには、マナーを守って常識的に対応することが大切です。
過剰なクレームをつけると、こちらが犯罪者扱いされてしまうおそれもあるので注意しましょう。
今回の記事を参考にして、上手にトラブルを避けて飲食店を利用して、食事やお酒を楽しみましょう。
飲食店を得意としている弁護士
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