株式譲渡M&Aにかかる費用は?仲介費用・弁護士費用の計算方法・相場
[投稿日] 2021年03月12日 [最終更新日] 2021年03月12日
株式譲渡M&Aは大規模な取引であるため、その分売主・買主ともに大きなコストを負うことになります。
当然ながら、株式譲渡M&Aを行うことが本当に利益になるかどうかは、取引の過程で生じるコストも計算に入れたうえで判断しなければなりません。
実際に株式譲渡M&Aの検討を行う際には、取引全体としてどのようなコストがどのくらいかかるのかという全体像を理解しておきましょう。
この記事では、株式譲渡M&Aにかかる費用の種類を紹介したうえで、特に仲介費用と弁護士費用について深掘りして解説します。
1. 株式譲渡M&Aにかかる費用一覧まずは、株式譲渡M&Aにおいて、売主・買主のそれぞれにどのようなコストが生じるかを一覧的に見てみましょう。
1-1. 株式譲渡の代金買主側にかかるもっとも大きなコストは、当然ながら株式譲渡の代金です。
株式譲渡の代金は、対象会社の企業価値を踏まえたうえで、売主・買主間の交渉によって決定されます。
適正妥当な金額を設定するためには、信頼できる専門家による企業価値の評価を行うことが大切です。
企業価値の評価は、公認会計士・税理士事務所が業務として行っているほか、M&A仲介会社を通じて行うことも可能です。
株式譲渡M&Aは大規模な取引であるため、自社の従業員を大量投入して作業に当たることになります。
そのため、従業員に支払う人件費がかかる点も、無視することはできません。
株式譲渡M&Aに多額の人件費がかかる点は、売主・買主ともに共通です。
特に買主側は、対象会社のデューデリジェンスに膨大な労力を要するため、負担する人件費の金額はいっそう大きくなります。
株式譲渡M&Aの相手方候補が見つからない場合や、自社で株式譲渡M&Aに関するノウハウを持っていない場合には、M&A仲介会社にアレンジャーとして役割を任せるのが便利です。
M&A仲介会社を利用して株式譲渡M&Aのマッチング・交渉を行う場合、仲介手数料の支払いが生じます。
仲介手数料についての詳細は後述します。
株式譲渡M&Aは、最終的に株式譲渡契約を締結・実行することが目的となるため、弁護士によるサポートが必要不可欠です。
さらに、株式譲渡M&Aを行う際には、税務・会計に関する検討も必要となるため、公認会計士や税理士にも相談することになります。
したがって、これらの各種専門家に対して支払う報酬についても、コストとして見積もっておくことが必要です。
このうち、弁護士費用についての詳細は後で解説します。
1-5. 売主は譲渡所得への課税にも注意譲渡対象株式の対価が取得費を上回っている場合、売主に対して譲渡所得課税が行われることにも注意する必要があります。
売主が個人の場合、以下の計算式によって譲渡所得税が計算されます。
譲渡所得税額
={(株式譲渡代金-株式譲渡M&Aに要した費用)-取得費}×20.315%※
※所得税15.315%(復興特別所得税を含む)、住民税5%
なお、株式譲渡に係る譲渡所得税は申告分離課税であるため、他の所得との合算は行われません。
一方、売主が法人である場合には、株式譲渡M&Aによって得た利益が益金として算入され、最終的な当期純利益に対して法人税等が課税されることになります。
2. 株式譲渡M&Aにおける仲介手数料の種類・計算方法・相場M&A仲介会社を利用する場合、仲介手数料が高額になるケースも多いので、事前にきちんと見積もりをとることをお勧めいたします。
可能であれば、複数のM&A仲介会社から合い見積もりを取得するとよいでしょう。
以下では、一般的な株式譲渡M&Aの仲介手数料の種類・計算方法・相場について解説します。
2-1. イニシャルコストイニシャルコストは、株式譲渡M&Aの検討を開始する際にM&A仲介会社に対して支払う費用を意味します。
イニシャルコストに該当する費用としては、主に「相談料」と「着手金」が挙げられます。
これらの費用は、株式譲渡M&Aの成否にかかわらず、原則として払い戻しが認められないので注意しましょう。
イニシャルコストの相場は、取引金額にもよりますが、おおむね100万円~500万円の範囲で設定されることが多いです。
なお、M&A仲介会社によっては、クライアント企業からの相談しやすさを重視するため、イニシャルコストを無料としているケースもあります。
株式譲渡M&Aを検討するに当たって、売主・買主の双方は、M&A仲介会社から継続的なアドバイス・コンサルティングを受けることになります。
M&A仲介会社によっては、このコンサルティング費用が毎月数十万円程度かかるケースがあるので注意が必要です。
なお、イニシャルコストと同様、月額のコンサルティング費用を無料としているM&A仲介会社も存在します。
2-3. マイルストーンフィー株式譲渡M&Aの取引は、売主・買主間で基本合意書が締結された時点で確度が高まります。
そのため、M&A仲介会社によっては、基本合意書の締結をもって「マイルストーンフィー」が発生するケースがあります。
マイルストーンフィーは、成功報酬の一部前払いともいうべき性質のものです。
金額はM&A仲介会社が設定する報酬体系によりますが、おおむね成功報酬の10~30%程度が標準的でしょう。
株式譲渡M&Aが無事実行された場合、M&A仲介会社に対して成功報酬を支払います。
成功報酬は、弁護士事務所などでも採用されている「レーマン方式」(取引価格に応じて料率が逓減する報酬体系)によって設定されます。
(例)
・取引金額が5億円までの部分・・・5%
・取引金額が5億円を超え10億円までの部分・・・4%
・取引金額が10億円を超え50億円までの部分・・・3%
・取引金額が50億円を超え100億円までの部分・・・2%
・取引金額が100億円を超える部分・・・1%
株式譲渡M&Aの検討に当たっては、弁護士のサポートを得ることが必要不可欠です。
そのため、弁護士費用についても、取引の必要経費としてあらかじめ見積もっておきましょう。
株式譲渡M&Aは、企業法務系の弁護士事務所に依頼するケースが多いところ、多くの企業法務系の弁護士事務所では「タイムチャージ制」を採用しています。
タイムチャージ制の場合、以下の計算式によって弁護士費用が決定されます。
タイムチャージ制の弁護士費用
=弁護士ごとの報酬単価×弁護士の稼働時間数
弁護士の報酬単価は、年次・実績・立場などによって個別に設定されており、おおむね2万円~10万円程度です。
株式譲渡M&Aの場合、取引の複雑性にもよりますが、500万円~2000万円程度が標準的でしょう。
特に取引金額が大きい場合、金額にかかわらず稼働時間によって報酬額が決まるタイムチャージ制では、弁護士費用が割安になるメリットがあります。
3-2. 着手金・成功報酬制を採用する場合もある弁護士事務所によっては、M&A仲介会社と同様に、着手金・成功報酬制を採用しているケースもあります。
しかし、取引金額が大きな場合には、着手金・成功報酬制では弁護士費用が割高になってしまうので注意しましょう。
弁護士事務所によっては、タイムチャージ制と着手金・成功報酬制のいずれかを選択できる場合もあるので、依頼の際に弁護士に確認するとよいでしょう。
4. まとめ株式譲渡M&Aの実行に至るまでには、さまざまな関係者に対する報酬などの支払いが発生します。
予期せぬコストが重なって費用倒れに終わってしまわないように、必要となるコストの全体像を事前にきちんと見積もっておきましょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
問題は解決しましたか?
弁護士を検索して問い合わせる
弁護士Q&Aに質問を投稿する
トップへ
M&A・アライアンス2018年11月23日
前回に引き続き、今回は、ゴーン氏らの逮捕を踏まえた、会社としての新たなガバ...
小川 智史 弁護士
小川智史法律事務所