決議事項 ~重要な財産の処分及び譲受け2~
[投稿日] 2015年01月23日 [最終更新日] 2017年08月01日
取締役会を得意としている弁護士
嶋岡 英司 弁護士 奈良県
登大路総合法律事務所前回は、土地の売却の場合を例として、取締役会決議をした場合の記載方法を説明しました。しかし、そもそも「重要な財産の処分及び譲受け」とはなにかを判断するのが困る場合が多いです。そこで、「重要な財産の処分及び譲受け」の意味についての説明をしたいと思います。
重要な財産の「重要」とは?判例は、会社財産の売却が「重要な財産の処分及び譲受け」にあたるかについて、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきとしています(最判平成6年1月20日民集48巻1号1頁)。この判例では、譲渡株式の帳簿価額7,800万円で、これは会社の総資産の約1.6%に相当するから「重要な財産の処分」にあたらないとしています。
実務では、便宜上、総資産のうち一定割合以上のものを「重要」と定めていることが多いです。しかし、たとえ帳簿価額が100万円の株式の譲渡であったとしても、当該会社にとって欠かすことのできない取引先会社の株式であれば、「重要」な財産にあたるとの取扱いをすべきです。したがって、一律に割合だけで決めることも不都合な場合もあり、判断は難しいです。
ただし、代表取締役が代わるごとに「重要」な財産の判断が異なることは、会社の業務執行の一貫性を欠くこととなり、望ましくありません。そこで、取締役会において、一応の基準について取締役会規則等で定めておくべきです。
財産は、会計上、積極財産(貸借対照表の資産の部に計上される財産)と消極財産(貸借対照表の負債の部に計上される財産)がありますが、ここでの財産は「重要な財産」ですので、基本的には積極財産のことを指します。
ただし、積極財産でも、繰越資産は、開発費・試験研究費・株式発行費用等のように既に支出された費用を繰延処理するため便宜上資産として計上するものなので、「財産」には含まれません。
また、拘束性の預金のように流動資産の多くは、不動産会社の販売用不動産や現先取引のように、営業目的に供されるものであったり、適切迅速な処理が必要なものであって、そのつど取締役会決議することは馴染みません。
したがって、ここでいう財産とは、積極財産の中でも工場所有権等の固定資産ということとなります。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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