商業登記

商業登記
商業登記とは、商法などに規定された商人の一定の事項について商業登記簿に記載して公示するための登記をいいます。
企業運営で商業登記が必要になるのはどんな場面か株主総会において、登記事項に該当する定款変更、募集株式の発行、役員選任等の決議を行った場合には、登記することが必要となります。
商業登記は、株式会社等の商人に関する重要な事項を公示して、その信用の維持を図り、かつ取引の安全と円滑に資するための制度です(商業登記法1条)。商人に関する情報を大量かつ十分に公開すれば、それだけ取引の安全に資することとなりますが、その一方公開される側の負担も大きくなり、公示制度の限界もあります。したがって、重要事項として何を登記事項とするかは、この取引の安全と円滑に資する最低限の事項として、会社法911条3項をはじめとした法令により規定されています。
株式会社の登記事項株式会社の登記すべき事項は、以下のとおり整理されます。
(商号区)
商号
商号譲渡人の債務に関する免責
本店の所在場所
会社の公告方法
貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項
中間貸借対照表等に係る情報の提供を受けるために必要な事項
会社成立の年月日
(目的区)
目的
株式・資本区
単元株式数
発行可能株式総数
発行済株式の総数並びにその種類および種類ごとの数
株券発行会社である旨
資本金の額
発行する株式の内容
発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容
株主名簿管理人の氏名又は名称および住所並びに営業所
創立費の償却の方法
事業費の償却の方法
その他株式又は資本金に関する事項
(役員区)
取締役、仮取締役および取締役職務代行者
監査等委員である取締役、監査等委員である仮取締役および監査等委員である取締役職務代行者
会計参与、仮会計参与および会計参与職務代行者並びに計算書類等の備置き場所
監査役、仮監査役および監査役職務代行者
代表取締役、仮代表取締役および代表取締役職務代行者
特別取締役
委員、仮委員および委員職務代行者
執行役、仮執行役および執行役職務代行者
代表執行役、仮代表執行役および代表執行役職務代行者
会計監査人および仮会計監査人
取締役が社外取締役である旨
監査役が社外監査役である旨
清算人、仮清算人および清算人職務代行者
代表清算人、仮代表清算人および代表清算人職務代行者
職務の執行停止
その他役員等に関する事項(役員責任区に記録すべきものを除く)
(役員責任区)
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人の会社に対する責任の免除に関する規定
取締役(業務執行取締役等であるものを除く)、会計参与、監査役又は会計監査人の会社に対する責任の制限に関する規定
(会社支配人区)
支配人
支配人を置いた営業所
(支店区)
支店の所在場所
(新株予約権区)
新株予約権に関する事項
(会社履歴区)
会社の継続
合併をした旨並びに吸収合併消滅会社の商号および本店
分割をした旨並びに吸収分割会社の商号および本店
分割をした旨並びに吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の商号および本店
(企業担保権区)
企業担保権に関する事項
(会社状態区)
存続期間の定め
解散の事由の定め
取締役会設置会社である旨
会計参与設置会社である旨
監査役設置会社である旨
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨
監査役会設置会社である旨
特別取締役による議決の定めがある旨
監査等委員会設置会社である旨
重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがある旨
指名委員会等設置会社である旨
会計監査人設置会社である旨
清算人会設置会社である旨
解散(登記記録区に記録すべき事項を除く)
設立の無効
株式移転の無効
特別清算に関する事項(役員区および登記記録区に記録すべきものを除く)
民事再生に関する事項(他の区に記録すべきものを除く)
会社更生に関する事項(他の区に記録すべきものを除く)
承認援助手続に関する事項(役員区に記録すべきものを除く)
破産に関する事項(社員区および登記記録区に記録すべきものを除く)
業務および財産の管理の委託に関する事項
(登記記録区)
登記記録を起こした事由および年月日
登記記録を閉鎖した事由および年月日
登記記録を復活した事由および年月日
法令により規定されていない事項は、登記することができません(商業登記法24条2項)。誤って規定されていない事項が登記されたとしても、当該事項には登記としての効力はありません。逆に、会社法等により登記をすることとされている事由が発生したときは、必ず登記をしなければなりません(会社法915条等)。
株主総会決議と登記事項商号の変更や取締役の選任等株主総会で一定の事項を決議した場合、その決議に基づいて登記を申請する必要が生じます。登記の申請が必要となる株主総会決議は、登記事項の設定、変更又は廃止となる定款変更決議のときに登記が必要となります。
登記手続上のポイント(要注意事項)登記手続ができる者と方法
登記は,法令に別段の定めがある場合を除いて,当事者の申請又は官庁の嘱託がなければ,することができません(商業登記法14条)。法令に規定されている方式以外の方式,たとえば,電話や登記所の窓口での口頭による登記申請は認められません(商業登記法17条)。
登記すべき時期
株式会社は,日々取引をしているため,利害関係を有する者が多数存在します。安全で円滑な取引を維持するためには,登記すべき事由が発生した場合には,速やかに当該株式会社の商業登記簿に,その登記すべき事由を反映させなければいけません(会社法909条)。
会社法では,登記の種別に応じて一定の登記期間を規定しています。
(1)株式会社の設立の登記(会社法911条):その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内
A)会社法46条1項の規定による調査が終了した日(設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合にあっては、設立時代表執行役が同条第三項の規定による通知を受けた日)
B)二 発起人が定めた日
(2)会社法57条1項の募集をする場合の登記(会社法911条):次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない。
A)創立総会の終結の日
B)会社法84条の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
C)会社法97条の創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日
D)会社法100条1項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日
E)会社法101条1項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
(3)会社の変更登記(会社法915条):2週間以内
(4)会社の新設合併の登記(同法922条):同
(5)会社の吸収分割の登記(同法923条):同
(6)会社の新設分割の登記(同法924条):同
(7)会社の株式移転の登記(同法925条):同
(8)会社の解散の登記(同法926条):同
(9)会社の継続の登記(同法927条):同
(10)会社の清算人の登記(同法928条):同
※その他、清算結了の登記(929条)、支店の所在地における登記(930~932条)、外国会社の登記(933~936条)について、期間が会社法で定められています。
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