契約書

契約書
ここでは、主に会社で取り扱う契約書について概略を説明しましょう。
契約とは、そして契約書とはまず契約書を定義する前に、契約とは何でしょうか。契約は、2人以上の当事者の意思表示が合致することによって成立し、さらに法的な拘束力を持つことを期待して行われる法律行為、といえます。契約書とは、そのような契約を締結する際に作成され契約の内容を表示する文書のこと、と考えればいいでしょう。
日本法上は、一部の例外(保証契約など)を除き、契約書を作成しなくても契約は成立します。ただ、合意内容の明確化や紛争の防止等の理由から、売買、賃貸借、金銭消費貸借、請負、雇用など多岐にわたって、契約書が作成されることが多いのです。それが契約書の意義といえます。しかし、両者の合意が得られた時点で既に契約は成り立っており、契約書はその後に作られる付随的なものに過ぎませんから、「契約書が作成されたから契約が成立した」といった認識を持つのは誤りです。
また、民事訴訟においては、契約書が、問題とされる当該契約の成立や内容を立証するための最も重要な証拠方法であることは確かです。
契約書の構成と必須事項契約書はそもそも紛争を避けるため内容を明確にしておくことが必要です。したがって、事前にあとあとどのようなことについて紛争が生じやすいかを考え、そのような紛争に対して契約書の不備がないかをチェックしておくことが必要です。
具体的には、まず記載がなければ契約を結んだ意味をなさないとも言い得るような、契約の根幹をなす事項が欠けてはいけません。また、必須事項が揃っていたとしても記載があいまいであれば、その解釈をめぐって紛争が生じてしまいます。誰が読んでも同じ判断ができるような記載でなければなりません。ここでは、どんな契約書にも共通する重要事項を説明します。
(1)契約当事者
契約は、契約した当事者間で効力を生じるものですから、契約の当事者が誰であるかを明確にしておくことが重要です。特に法人の場合、法人自体と法人の役員や社長個人とは法律上まったく別のもの(法人格)ですので、会社と契約するのか、あるいは個人と契約するのか、契約書上、明確にしないといけません。たとえば「○○株式会社 ××(人名)」ではどちらの意味ともとれるので、このような記載は避けなければなりません。会社が当事者となる場合には「○○株式会社 代表取締役××(人名)」と明確にするべきです。
(2)期間・期日
契約の有効期間を定めることが必要です。また、契約では各種の期日も重要です。たとえば代金の支払期日、商品の納入期日などです。そこで、これらの期間・期日が明確に定められているのかチェックしなければなりません。たとえば、「相当程度の期間」「検査のために通常必要と考えられる期間」などは、10日間なのか1か月なのか、人によって解釈が異なる可能性がありますから、明確に定めましょう。
(3)権利義務内容=対価関係の内容
権利義務の内容は明確に定めなければなりません。ビジネスでは無償で何かをすることはありえませんから、常に、何らかの行為(商品の提供)とそれに対する対価(代金の支払)という関係があるはずです。たとえばコンサルティング契約であれば、どのようなコンサルティング業務をし、それに対していくらの対価を受け取るのかということが対応的に書かれることが必要です。
契約書作成上の際のポイント(1)不利な条項がないか
契約書を見る際に、相手方にとって一方的に有利な規定がないか、逆に言えば、自分にとって著しく不利な規定がないかについて検討しなければなりません。具体的には契約書のなかで自分が負うことになっている義務が必要以上に重くなっていないか、また広く解釈することが可能になっていないか、自分が相手に対して負ってもらいたい義務についての記載があるか、記載があったとしても不足がないのかを吟味する必要があります。
なお、民法、商法など関係する法律の規定に比べて重い義務を課せられていないかどうかも不利な条項であるか否かの判断基準となりますが、この点は法律の専門家でないと分からないことが多いので、まずは、自分の頭で、自分(自社)にとってビジネス的に不利かどうかを考えてみることが大切です。
(2)契約の有効性
契約を締結したとしても、契約自体が無効であれば意味がありません。契約の締結は自由なのですが、例外的に締結された契約が無効とされることがあります。言い換えると、いくら自由に契約を締結できるからといっても限度があり、社会の秩序を乱したりすることや、犯罪的な契約は効力が認められないのです。極端な例ですが、殺人を依頼するような契約は公序良俗違反として無効となります。そこまでいかなくても、違約金として莫大な金額を要求するような条項は無効となる可能性が高いのです。
(3)強行規定と契約の制限
また、契約の内容と法律の内容が異なる場合であっても、契約を交わしてしまった以上、契約のほうが優先して適用されるのが原則ですが、法律上一定の規定について、例外的に法律が優先し、法律に反する契約が無効になるものがあります(「強行規定」といいます)。たとえば、お金を貸すときに利息制限法の制限を越える利息を定めれば、少なくともその部分は無効となります。ただ、そのような強行法規の問題は微妙なものも多く、法律の専門家でないと分からないことが多いので、弁護士に相談することをお薦めします。
会社がよく扱う契約書とは会社でよく作成・利用される契約書には、以下のものがあります。
- 業務委託基本契約書
業務委託基本契約書とは、相手方と何度も取引が発生し長期的な関係になる場合に取り交わす契約書です。通常、この基本契約書の下に個別契約を取り交わします。 - 秘密保持契約書(NDA)
秘密保持契約書とは、契約先の機密情報を扱う場合に締結する契約書です。 - 業務提携契約書
業務提携契約書とは、会社間でお互いに得意な分野で提携したり、業務の一部を他社に委託したりするときに締結する契約書です。
いったん交わした契約は、何も未来永劫に変わることなく続くものではなく、取引環境の変化に応じて、見直しをして変更することが可能であり、またそれが望ましい姿といえます。
具体的には、相手方を巡る環境とこちらの環境とに分けるとすれば、前者では、たとえば相手方に競合業者が現れたとき、それはこちらにとって優位の要因になりますから、これまでのこちらからの対価を下方修正することも検討に値します。また相手方が供給するものが自然環境の変化などから品薄な方向に動いたときは、こちらに優先的に供給する条項を盛り込む提案をするなど、取引の安定のために改訂を検討する必要があるかもしれません。
後者では、こちらの経営状態を考慮して、こちらが支払う代金の決済のサイクルや割賦払いへの転換などの改訂を提案(お願い)する場面もあり得ます。
いずれにしても、「改訂ありき」と考える必要はありませんが、漫然と以前の契約内容のまま延長を繰り返すことだけは避けねばなりません。
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