ファイナンス

ファイナンス(資金調達)
ファイナンス(資金調達)は、企業・組織などが外部から事業に必要な資金を調達することをいいます。企業が存続・発展する上で欠かせない条件になります。
ファイナンスの方法としては、自己資本による調達と、負債による調達の2つに大別できるといえます。自己資本による調達とは、株式会社の場合、株式の発行による調達を指します。また、負債による調達は、金融機関からの借入れ、コマーシャルペーパー(CP)や社債の発行による資金の調達までを含みます。
会社にとって運転資金を調達することは、業務遂行をしていく上で、重要な部分を占めています。 一口に資金調達といっても、銀行からの直接的な借入れ、プロジェクトファイナンス、株式発行による間接的な資金調達など多岐にわたります。
企業のおかれた状況・過程に応じた資金調達の仕組み(スキーム)を用いる必要があります。それこそが、その後の無理のない企業成長を促進するものとなるはずです。
銀行等から金を借りるだけが資金調達ではありません。個々に合わせた、戦略を判断しつつ、有効な資金調達・ファイナンスを行うことが今後の経営執行を遂行する上で、最大の懸案であり、重要事項であるといえます。
自己資金のメリットは、以下のように理解されます。
- 経営権を保持できる。
- 経営の自由度が高い。
- 金利負担がない。
またデメリットは
- 資金量が限られる
- 事業清算をした場合、自分の資産を失うことになる
ということになります。
また、「社員持株会」という方法があります。
社員持株会は、社員が設立する会社の資本金を出資しあう方法です。規約を作ることが必須であり、従業員持株会の組織・理事が必要となってきます。
そのメリットは
- 従業員のモチベーションアップ
デメリットは
- 運営の手数がかかること
- 株主が分散すること
- 退職時の株の現金買取が必要なこと
となります。
外部資金による方法外部資金による調達方法には、以下の4つがあります。
- 新株発行による資金調達
株主を募集して、その出資という形式で企業の長期資金を調達する新株式は自己資本の形成となります。株式は配当可能利益があれば株主に配当します。利益がないのに配当をした取締役は、会社に対して連帯して賠償責任を持ちます。 - 社債発行による資金調達
企業が一般人に対して社債を発行し長期資金を調達する方法です。社債は他人資本として形成し、株式と異なり配当可能利益の有無にかかわらず利息を支払います。 - 借入金による資金調達
社債も一種の借入金と考えられますが、ここでいう「借入金」とは銀行などの金融機関からの借金を指します。 - 手形・小切手による資金調達
手形は元々代金支払の手段としての機能を持ちますが、企業の資金調達の手段としての機能も持っています。その中には、(1)金銭貸借の機能、(2)金融調達の機能、(3)債権担保の機能、に分かれます。この手形には多くのリスクが発生します。
資金調達の話が進むと、投資実行前にデューディリジェンスが行われるのが通常です。どの程度DDをやるかは会社や担当者によって異なりますが、投資額の大きさに比例して、厳密に行われると考えていいでしょう。
デューディリジェンス(DD)は、直訳すると「当然払うべき努力」を意味しますが、M&Aや資金調達を実施するにあたって、その対象会社について詳細に調査することを指します
会社にとって都合の悪い情報を出すことについては抵抗があるかもしれませんが、下手に嘘をつくとかえって窮地に追い込まれる可能性があります。つまり、投資契約においては提出した情報に虚偽がないことを表明保証させられるのが通常です。投資が実行された後に、DDで虚偽の情報が提出されたことが判明した場合には、経営者個人に株式の買い取りを請求されるなどの責任追及がなされる可能性もあります。従って、会社に不都合なことも隠さずに答えるのが賢明です。
ただ、致命的な問題が見つかってしまった場合には、投資が見送られることになりかねません。この点はDDが始まってから対処するのでは遅く、出来る限り早い段階から体制を整備しておく必要があります。以下に問題視されやすい主な点を参考に掲げます。
- 株式譲渡に関する資料が保管されていない
- 株式譲渡に必要な手続が行われていない(特に株券発行会社における株券交付)
- 株式譲渡の対価が低額過ぎて、税務上問題視される
- 過去に行った自己株式取得の手続に問題がある
- 契約で広い範囲の競業避止義務を負ってしまっている
- 外注先との業務委託契約で知的財産権が適切に確保されていない
- 重要な契約であるにもかかわらず、いつでも相手方が解約できる規定が定められている
- 未払残業代などが発生していることが疑われる状況にある
起業資金のうち、自己資金や個人借入れで足りない分は、主に融資か出資を受けることになります。ただ実際には、設立直後の会社が出資を受けられるケースはほとんどなく、また大手金融機関から融資を受けられる可能性も低いのが実情です。
しかし、公的機関の融資には、会社設立直後でも融資可能なのがあります。ここでは、日本政策金融公庫の「公庫融資」について概略を説明しましょう。
日本政策金融公庫は国民生活事業と中小企業事業がありますが、創業希望者は国民生活事業の「新創業融資制度」に申し込むことができます(これとは別に「新規開業資金」制度もありますが、条件が厳しいのが実情です)。
融資額は上限1,000万円で、返済の金利は1.25%~3.00%、原則として設備資金ならば15年以内、運転資金ならば5年以内が返済期間の目安となります。借入上限金額は事業計画、自己資金などを勘案して決められます。
メリット
- 創業前でも申込みできる
- 無担保、第三者無保証(借入金額による)
- 制度融資に比べると比較的早く結論が出る(2~3週間)
デメリットは特にありません。
補助金・助成金以上のほか、公的機関の補助金や助成金などの制度も簡潔に紹介しましょう。
1.創業促進補助金
経済産業省系の補助金です。金額上限200万円で、補助率は2/3。申請には認定支援機関の確認書が必要です。
認定支援機関とは、中小企業経営力強化支援法に基づき、中小企業支援で高い専門性を持つと認定された支援機関のことをいいます。主に金融機関、税理士、中小企業診断士などの士業、並びに士業の団体の多くが認定されています。ただし、士業=認定支援機関なわけではありません。
メリット
- 創業前、創業後どちらでも申込みできる
- 補助金であるため基本的に返済不要
デメリット
- 常に募集しているわけではなく、申込み期間がある
- 採択率は直近で3割程度
- 補助金は後払いであるため、つなぎ資金を用意する必要がある
- 補助対象経費の種類が限定されている
- 将来、収益が上がった場合は補助金額を上限に返済しなければならない場合がある
2.再就職手当
再就職手当は、雇用保険の受給資格者(前職を離職したサラリーマンなど)が創業した場合にもらえる手当です。つまり創業も「再就職」なのです。
メリット
- 申請対象者(前職の退職日から原則として1年以内に起業する人)であれば、いつでも申請できる
- 要件が適格であれば、基本的に手当を受けられる
デメリット
- 創業した日の翌日から1か月以内に支給申請書を郵送しなければならない
- 自己都合で前職を退職した人は、待機期間満了後1か月を経過してから起業しないと支給対象にならない
資金調達にあたり、最善の策を見つけるのは容易ではありませんが、そのためにすべての手法や制度をよく理解することは必須のプロセスです。
ファイナンスを得意としている弁護士
吉田 圭二 弁護士 東京都
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