相殺について

User image 1 lu_1a67ea87さん 2021年10月28日 11時22分

当社を売主、A社を買主とする売買契約を締結し、当社は、売買代金の一部を前金としてA社から受領しています。

しかし、A社が売買対象物の引渡しを拒むため1年以上引渡すことができていない状態にあり、幾度と連絡してもはぐらかされてしまいます。
また、その引渡せない売買対象物を保管するための倉庫保管料が当社において毎月発生しており、これをA社に負担させるつもりです。

そこで、売買契約を解除し、先方から受領済みの前金と倉庫保管料を相殺通知書を交付のうえ相殺しようと思うのですが、何か問題点等はありますでしょうか。相殺禁止特約等は特にありません。

なお、保管料の額の方が大きく、相殺しても保管料は残るのですが、止む無く差額は請求しない予定です。

こんにちは。

解除原因についてはA社の(代金の)債務不履行ということでお考えということと思われます。
おそらく、売買目的物の受領を促すとともに支払いの催告もされているのでしょうから、いわゆる債務不履行解除の要件も満たしているのでしょう。

解除権を行使した場合、その効果として、双方に原状回復義務が生じます。
同義務について、金銭の返還については受領の時から利息を付する必要があります。
つまり御社は「売買代金の一部を前金」として受領した金額に、(契約に定めがなければ)年3%の利息を乗せてA社に返還する債務を負うことになります(後述の議論と関連しますが、目的物の引渡し前の解除なので御社に利息の支払い義務が生じることに法的な争いはないと思います。)。
他方で、A社はお書きのとおり目的物を受領していないので、原状回復にあたっては何らの行為も必要ないということになります。

前置きが長くなりましたが、ここで当職が考えます結論を述べます。

相殺はできないと思います。
理由は次のとおりです。

民法575条によると、目的物の引渡し以前は、売主が当該目的物より生じた果実を収取することができる旨定められています。
これは、その反面として、当該目的物の管理・保存にかかる費用もまた売主に帰属するということを含意するものと解されています。
同条は、引渡しを一つのポイントとして、それ以前は上記のように売主に果実収取権を認めると同時に、買主に対しては代金に対する利息の支払い及び目的物の管理・保存費用の支払いを免除する(つまり上記のとおり売主がこれを負担する)ことをとおして、簡易な決済を図ろうとするものです。
すなわち、御社は引渡し以前にかかっている管理・保存費用をA社に請求するための権利を有しないことになります。
この結論は、売主、買主双方ないしいずれかが履行遅滞に陥っていても同様とされます。
「引渡しの有無」だけが基準ということです。

本件は目的物の引渡し以前の段階であるため、管理・保存の費用は御社の負担になっています。
従って、相殺するための自働債権(たとえば管理費を不当利得とする返還請求権など)がなく、相殺できない、ということです。

以上は、法律に従った場合の検討結果ですが、そうはいってもやはり納得のいかない部分もおありかと思います。
上記のご相談内容にくわしい事情がないため想像になりますが、A社は特に経営が傾いているというようなことはないのだろうと思いますので、まずは受領しない理由を問いただした上で話を前に進めるという方向を模索されることが検討されてもよいのかもしれません。
管理・保存費用の多寡にもよりますが、場合によっては解除の場合のコストと、話し合いに応じない場合には代金支払い請求として調停なり訴訟なりをおこなうことのコストとを比較してみるということも考えられてよいことではないかと思います。

いずれにしましても、御社にとって気持ちの良い話ではないことは間違いないと思います。
お近くの弁護士に相談されることをお勧め致します。

以上、ご参考になれば幸いです。

2021年10月28日 13時41分
補足質問
User image 1

lu_1a67ea87 - 2021年10月28日 13時50分

野中先生

詳細なご回答ありがとうございます。

一点、記載漏れがあったのですが、先の倉庫保管料については、目的物の引渡しまで買主負担で発生するということを買主から同意を得ております。

これであっても結果は変わりませんでしょうか。

よろしくお願いいたします。
補足回答
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野中 大輝 弁護士 - 2021年10月28日 21時31分

お答え致します。

倉庫保管料について、引き渡しまで買主負担で発生するという同意があるのであれば、民法575条は適用を排除される結果、御社は保管料請求権を有していることになりますから、同請求権を自働債権として相殺することができると思います。
その同意については書面の形になっていれば立証上も心配がないことと思います。
お礼メッセージ

ご回答ありがとうございました。

注力分野
借金・債務整理 相続 不動産・建築 離婚・男女 企業法務

A社の受領拒絶を理由として、売買契約を解除することはできません。ただし今回の民法の改正によれば、増加した履行費用を請求することはできます。例えば保管料の増額などがそれにあたるのではないでしょうか。そしてA社の受領拒絶後は、御社の目的物の保管義務の程度は軽減されます。

御社が売買契約を解除するには、目的物を提供したにもかかわらず、代金を支払わないというA社の債務不履行を理由として解除することとなります。解除すれば目的物を第三者に売却することができ、御社の損害を最小限カバーすることができます。
ただし売買契約を解除すると、売買契約は最初に戻って解消されたこととなり、共に原状回復義務が発生します。 御社は前受金をA社に返還する義務が発生します。A社の売買代金支払義務の不履行責任は、金銭債務なので法定されています。

それでは御社はA社に対して、保管費用額を何を根拠として請求できるか。増加した保管費用額を損害として、不法行為に基づきそしてA社が知り得たであろう特別事情があるとして、損害賠償を請求することが考えられます。そしてA社の前渡金返還請求に対しては不法行為に基づく損害賠償請求をもって対抗(ないし相殺)するということが考え得るところです。

なお違約金の約定は、文書として見当たりませんでしょか。

2021年10月29日 16時10分

投稿時の情報です。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。

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