株主総会

株主総会
株主総会は、株式会社の機関の一つです。株主で構成され、会社の基本的な方針や重要な事項などを決定する機関です。単純には、国民=株主と置き換えると、会社は民主主義国家に似ているといえるかもしれません。この項では、株主総会の概要を追いつつ、運営実務について触れていきましょう。なお、本稿で掲げる法条は、特に断らない場合、会社法を指します。
株主総会の役割と株主の資格先に述べたように、株主総会は通常、会社運営上基本的または重要な事項を決定するのが役割ですが、一方で会社法上、株主総会は取締役とともに必要的機関とされているのに対して取締役会、監査役(381条)、監査役会(390条)などは任意設置機関なので、設置されない場合には株主総会が直接代わりを務めなければいけません。ですから、株主総会の役割と権限については、取締役会非設置会社と取締役会設置会社とでは業務の範囲が全く異なってきます(295条)。
株主総会の構成員は株主であり、1株以上(定款において1単元の株式数の定めがある場合には1単元以上)の株式を有していればその人は株主(=株主総会の構成員)になります。
開催の手続き-時期は? 場所は?開催時期
株主総会は、事業年度ごとに必ず1回開催しなければなりませんが、必要に応じていつでも開催することができます(296条)。前者は定時株主総会、後者は臨時株主総会といわれます。日本では、3月期決算の会社が多いので、5月から6月に定時株主総会を開催する場合が多数です。なぜ事業年度終了後3ヶ月以内に開催されることが多いかといえば、日本では基準日制度(株主としての有効期間を確定するための基準日)を採用している会社が大半ですが、権利行使できるのが基準日(その大半はいわゆる年度末の3月31日)から3ヶ月以内、と124条2項において規定されているからです。
かつて、総会を特定の日に集中させることで総会屋の出席を実質的に排除し総会を円滑に進める目的で、6月下旬に集中して開催されていましたが、総会屋の活動が以前と比べるとやや弱まったことや、株主総会をもっと出席しやすい日程にする考え方が浸透してきたことなどにより、いまでは分散化が進み、1995年の96%をピークに大幅に集中率は減少し、2016年には30%代にまで落ちています。
招集手続
会社法上は、取締役が招集する、とのみ規定されています(296条3項)が、実際には代表取締役が招集するのが通例です。また、総株主の議決権の100分の3以上の株式を有する少数株主は、招集目的、理由を付して取締役に招集を請求することができます(297条1項)。
招集通知は、株主に出席の機会と準備の時間を与えるため、期日より2週間前に発信しなくてはいけません(299条1項。非公開会社は1週間)。
招集通知への記載事項は同法298条1項、299条4項に規定されています。その主な内容は、(1)株主総会の日時及び場所、(2)株主総会の目的である事項があるときは、当該事項、(3)株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨、(4)株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨、(5)法務省令で定める事項、などです。また、取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に対し、承認を受けた計算書類及び事業報告を提供しなければならないとされています(437条)。
運営の実際-提案~質疑~決議まで-総会本番では、決議事項などについて提案→質疑→決議が行われます。決議事項は以下の3つに分かれ、必要賛成数がそれぞれ違っていますので、注意が必要です。
- 普通決議
役員の選任・解任やその報酬決定、共有物の果実たる剰余金の配当、欠損填補のための行為などに適用され、出席株主の議決権の過半数の賛成を要する。 - 特別決議
株式の併合や監査役の解任、定款の変更、解散などについて決議し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する。 - 特殊決議
全部の株式を譲渡制限とする定款の変更、新設合併契約等の承認などについて決議し、議決権行使できる株主の半数以上かつその株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する。
※以上の他に、特殊普通決議、特例有限会社の特別決議があり、また特殊な事項については、総株主の同意を要する場合があります。
議案については、議決権のある株主であれば、過去3年以内に賛成10%未満の議案を再提案した場合など、特殊な例外を除き、株主総会の場において議決すべき議案を提出することができます。
各株主は、1株または1単元株毎に1票を有し、通常は多数決によって議事を決します。また、現在はインターネットを通した投票も可能になっています。
事務局としての留意点
当日の運営においては、事務局としては、それぞれの役割を明確にしておき、やるべきこと、対応すべきことに抜けの無いように体制を整え、極力書面化しておくのがミスを防ぐためには有効です。予想される展開に応じた行動を要領化しておき、その場の判断部分を最小にしておきましょう。
また、出される動議は、延会を求めるもの、議長不信任案、会計監査人の出席を要求するもの、休憩を要求するもの、また修正動議として、議案の内容を修正して決議にかけるよう要求するもの、などさまざまです。動議なのか意見なのかで扱いが全く違ってきますので、事務局は、どちらなのかを公正・明確に判断し(恣意的に「みなす」のではありません)、動議であれば、その旨議長に伝達します。
議事録の作成総会が終わったら、議事録を作成します。議事録は株主総会の日から本店に10年間、議事録の写しをその支店に5年間、備え置かなければならないとされています(318条)。
議事録には、開催日、開催場所、出席株主数、株式数、報告事項の概要、決議議案の内容、審議内容、採決結果、その他動議の内容とその採決結果などを記載します。議事録の作成期限は、登記申請がある場合、申請手続が、総会終了後2週間以内と決められているので、それまでには作成しておく必要があります。そうでない場合も、できる限り速やかに作成するのが通例です。
総会屋対策のいま総会屋とは、株主総会において株主としての地位を利用して会社から不当な利益を得ている者をいいます。会社から利益を与えられて、株主総会を短時間で終わらせる調整・根回し等に努める与党総会屋と、株主総会の妨害を予告して会社から利益を得ようとし、得られない場合には株主総会を妨害しようとする野党総会屋に分類されるといわれます。
彼らの存在は、会社側にも利用価値を認められ特に上場会社において利用されていましたが、会社の株主への株主権の行使・不行使に基づく利益供与の禁止(昭和56年)、同時に導入された単位株主制度(現・単元株主制度)による単位未満株主の議決権の排除により現在は沈静化の方向に向かっています。しかし、特定の経済誌への広告の出稿要求や観葉植物のレンタルといった見えにくい形で、いまでも総会屋への利益供与は継続しているとする見方があるのも事実です。
株主総会は、とかく儀式のようにとらえられがちですが、会社を滞りなく運営するためには、スムーズに、また株主が納得感を得られるような運営を心掛けることが肝要といえます。
株主総会を得意としている弁護士
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書面開催における定時株主総会招集ご通知と同意のお願い文書内の日時の記載時刻について