不当な取調を行う警察官個人を訴える事はできない?

Legalus編集部さん 2015年07月02日

 2007年2月23日付け、鹿児島地裁の公職選挙法違反で起訴されていた人々への無罪判決の報道をみて、取調べ・尋問等のひどさに怒りがおさまりません。

 取調べをした警察官や検察官個人を、刑事・民事を問わず裁くことはできないのでしょうか?

 不法行為によって裁かれれば、この様な冤罪事件も減少すると思います。
 公務員が故意に行った業務上の行為について責任を負わないのは、納得できません。


(30代:男性)

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Legalus編集部

     公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行う際に、故意又は過失により他人に損害を加えたときは、被害者は、国家賠償請求をすることができます(国家賠償法1条1項)。
     今回の事件では、すでに、数件の国家賠償訴訟が起こされ、そのうち1件では県の敗訴が確定したということです。


     しかし、責任を負うのは、公務員自身ではなく国又は公共団体です。

     本来、公務員の行為によって損害が生じたのですから、公務員個人が賠償責任を負うべきところ、個人の資には限度があるので、政策的に国家が公務員に代わって責任を負うこととされたのです。



     では、違法な取調べをした警察官個人の責任は問えないのでしょうか。

     国家賠償請求が認められた場合、公務員がその違法行為をする際に「故意又は重大な過失」があったときには、国又は公共団体は、その公務員に求償することができます(国家賠償法1条2項)。本件では、県は損害賠償を支払った場合には、賠償額の全部又は一部を、違法な取調べをした警察官個人に請求することができます。

     しかし、これは、県と警察官という行政内部の問題です。


     では、被害者が、直接、警察官個人に民事責任を問うことはできないのでしょうか。公務員の個人責任として議論されてきた問題です。

     最高裁は、国家賠償法による請求については、国又は公共団体が賠償の責任を負うのであって、公務員個人は責任を負わないとしました。そうだとすると、本件でも、取調べ中の違法行為について、警察官個人は民事責任を負わないことになります。


     公務員の個人責任が否定される理由としては、国家賠償が認められれば損害は填補されること、あるいは、個人責任を認めると公務員が萎縮してしまい、自由で積極的な業務活動ができない、ということがあげられています。


     今回の事件の報道には、多くの人がはらだたしい思いをしてきたことでしょう。しかし、現在の法律のもとでは、職務に関連する警察官や検察官の行為につき、民事責任は追及できないのです。


     刑事責任については、特別公務員暴行陵虐罪(国家賠償法1条2項)。本件では、県は損害賠償を支払った場合には、賠償額の全部又は一部を、違法な取調べをした警察官個人に請求することがで>刑法195条)が規定されています。検察官や警察官等一定の公務員が、職務に際して、暴行等を加えた場合に適用される規定です。しかし、同罪によって告訴できるのは、暴行等の事実が認められる場合に限られます。



     以上のように、公務員個人の責任を問うことができるのは、非常に限られているのが現実です。

2015年07月02日

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