薬物事件(覚せい剤・麻薬・大麻)

薬物事件の怖さを学ぼう。一度の過ちが人生を狂わせることに
薬物犯罪は、いわゆる麻薬四法(あへん法、覚せい剤取締法、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法)で定められた犯罪の総称です。毒物及び劇物取締法の犯罪を含めることもあります。
我が国の薬物犯罪の中では、覚せい剤事犯が検挙件数、検挙人員、押収量で他を大きく引き離しています。覚せい剤取締法違反の検挙人員は,昭和29年(5万5,664人)に最初のピークを迎えましたが、罰則の強化や徹底した検挙等により急激に減少し、32年から44年までは毎年1,000人を下回っていました。その後、45年から増加傾向となり、59年には31年以降最多となる2万4,372人を記録しました。60年からいったん減少傾向となった後、平成7年から再び増加に転じ、9年には平成に入って最多となる1万9,937人を記録しています。13年以降は減少傾向にあるものの、毎年1万人を超える状況が続いています。
あへん:あへんをめぐる犯罪
あへんに関する犯罪は、刑法第2編第14章「あへん煙に関する罪」(136~141条)に定められており、あへん煙の輸入、製造、販売 - 6カ月以上7年以下の懲役、吸入具の輸入、製造、販売 - 3カ月以上5年以下の懲役、あへん煙吸引 - 7年以下の懲役、場所提供 - 6カ月以上7年以下の懲役などとなっています。(これとは別に、あへんの取扱いや取締りについて規定するあへん法があります。)
覚せい剤:覚せい剤をめぐる犯罪
覚せい剤に関わる犯罪は覚せい剤取締法に規定されていて、輸入・輸出・製造 - 1年以上の有期懲役(営利目的の場合は 無期又は3年以上の懲役、情状により1000万円以下の罰金併科)、覚せい剤の所持・譲渡し・譲受け - 10年以下の懲役、営利目的での上記行為 - 1年以上の有期懲役、覚せい剤の使用 - 10年以下の懲役、覚せい剤原料の輸入・輸出・製造 - 10年以下の懲役、覚せい剤原料の所持・譲渡し・譲受け・使用 - 7年以下の懲役、覚せい剤・覚せい剤原料の没収となっています。
大麻:大麻をめぐる犯罪
大麻取締法は、大麻の所持、栽培、譲渡等に関する法律で、大麻取扱者の免許、大麻取扱者の義務、大麻取扱者に対する監督などが規定されていて、最大で10年までの懲役が罰則として定められています。
麻薬など他のクスリ:麻薬及び向精神薬取締法
麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬と向精神薬の乱用を防止し、中毒者に必要な医療を行うなどの措置を講じ、生産や流通について必要な規制を執り行うことによって、公共の福祉の増進を図ることを目的として制定され、最大で無期懲役までの刑罰が規定されています。
この法律で規制する薬物を以下に列挙します。
- 麻薬:モルヒネ、コカイン、幻覚剤など。
- 第1種向精神薬:メチルフェニデートのような精神刺激薬やバルビツール酸系薬。
- 第2種向精神薬:バルビツール酸系や、ベンゾジアゼピン系のフルニトラゼパムなど。
- 第3種向精神薬:多くは、ベンゾジアゼピン系の薬物。
※対象外:タバコ、アルコール、カフェインなど。
薬物事件で逮捕された後の流れ覚せい剤取締法違反や大麻などで逮捕されると、早ければ翌日には検察庁へ送検されます。検察官は、容疑について弁解を聞き、裁判官に勾留請求し、多くの場合、10日間の勾留がつき、警察署に身柄が拘束されます。この間、2日間ないし3日間は、家族は逮捕された本人に面会はできず、面会ができるのは唯一弁護士だけです。
10日間捜査した後に、検察官は、勾留を延長するか、起訴するか、不起訴とするかを判断します。ほとんどの覚せい剤や大麻などの事件では、鑑定に時間がかかることから勾留延長となります。検察官は勾留の延長を請求しますが、延長期間は基本的には10日間です。結局、覚せい剤や大麻などの事件では、合わせて最大23日間、身柄が拘束されると考えなければなりません。
起訴前の捜査段階では、制度上、保釈は認められませんが、起訴後は保釈請求できます。ただ、頻繁に覚せい剤を繰り返し、前科もあって、長年にわたって使用してきた人は、常習性ありとしてやはり保釈は却下される確率が高いのが実態です。初犯であって、薬物犯罪で逮捕起訴されたことがなく、中毒症状も進行していなければ保釈される可能性はあります。
保釈金は、所持のみ、あるいは使用のみで起訴されたときは、概ね150万円程度といわれています。所持と使用など、複数の起訴事実の場合は、150万円よりも高額になることがありますし、所持量によっても金額に差が出てきます。保釈金は、裁判が終わると返還されます。
薬物犯罪では保釈は重要です。保釈を獲得することにより、公判に向けて生活環境を整えることができます。たとえば、両親の下でその監督を受けながら生活するために、引っ越し等が可能ですし、再犯防止のため任意団体に支援を求め、覚せい剤と縁を切るために活動を積極的に始めることができます。こうした活動は、裁判において執行猶予判決を得る上でとても重要な活動となります。
さて、起訴の概ね1か月ないし1か月半後に公判が開かれます。
公判手続では、開廷の宣言の後、次のような手続きが行われます。
(1)人定質問、(2)起訴状朗読、(3)罪状認否、(4)冒頭陳述と検察官証拠請求、(5)弁護人の証拠に対する意見、(6)検察官証拠の取調べ、(7)検察側証人尋問、(8)弁護側立証、(9)被告人質問、(10)論告・弁論、11最終陳述、12結審
以上の手続きが、短ければ1時間で終了します。
判決期日は、自白事件では概ね結審後1週間から2週間以内で期日指定されます。
厚生労働省が作成・公表している冊子「ご家族の薬物問題でお困りの方へ」の中で、家族からみた薬物依存症者に顕著な行動の主なものを挙げています。以下にその抜粋を掲げました。
- 手などが震える。
- 感情の起伏が激しく、人が変わったようになった。
- 薬物について尋ねると不機嫌になった。
- 意味不明な話をしたり行動がまとまらないことがあった。
- 本人が作った借金の督促が来たことがある。
中には、徴候というより「薬物依存そのもの」としか言いようがないものもありますが、シグナルの一つとして参考にして下さい。いずれにしても、「そうかな」と思ったらすぐに本人に確認するのが、すべてのスタートです。
再犯率高し。使用をやめる、やめさせるための対策薬物依存や薬物中毒、そして薬物犯罪は、再犯率が高いと言われています。「二度目」を招来させないために必要なことは何か、厚生労働省「ご家族の薬物問題でお困りの方へ」では、以下のように説いています。
- 学ぶこと
まずひとつは、薬物依存症という障害について学ぶことです。ご本人とご家族の共通の敵である薬物依存症と効率よく戦うには、まずその障害がどういうものかということや、医学的・心理学的側面から理解を深め、回復に有効な資源や治療機関のことなど、学ぶべきことがたくさんあります。 - 対応方法を身につけること
二つ目は、薬物依存症者ご本人に対する適切な対応方法を身につけることです。その場しのぎの対応や感情に左右された一貫性のない対応ではなく、長期的に見てどうすることが薬物依存症からの回復に役立つのかという基本をしっかり守った対応法を身につけることが大切です。 - 3.家族が元気を取り戻すこと
最後に三つ目は、家族がまず元気を取り戻すことです。一見ご本人のこととは関係がないようですが、実はこれが一番大切なことです。
そのためには、同じような経験をしている仲間と出会うことが役に立つでしょう。依存症病棟がある医療機関・精神保健福祉センター・保健所などでは家族教室や家族相談を行っているところもあります。依存症者ご本人と同じように、家族同士の自助活動も各地で行われています。
本人の薬物依存症からの回復に時間がかかるのと同じように、家族も普段の冷静さを取り戻し、薬物依存症という障害を理解し、回復に役立つ態度を身につけていくには時間がかかるものです。家族の方がまずそのことを受け入れ、落ち着きを取り戻してじっくりと取り組む姿勢が大切だと思われます。
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薬物強要された時、罪になるの?