核テロ処罰法
[投稿日] 2014年01月08日 [最終更新日] 2017年02月08日
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宇都宮 貴士 弁護士 千葉県
松戸法律事務所田中 克幸 弁護士 福岡県
天神ベリタス法律事務所42回目の今回は核テロ処罰法(放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律)を取り上げます。文字通り、核によるテロリズムの防止のために制定された法律で、2005年(平成17年)に国連で採択された「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」に対応する形で、2007年(平成19年)に成立しました。
裁判員制度の対象となっているのは、放射性物質をみだりに取り扱うこと、もしくは原子核分裂の連鎖反応を起こさせる装置などをみだりに操作することによって、核燃料物質の原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、または放射線を発散させて、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせる行為で、無期または2年以上の懲役に処せられます。
このように説明しても、ピンとこない方が大半だと思いますが、容器に詰めたプルトニウム等の放射性物質を町中でまき散らすとか、小型の核爆発装置を爆発させる行為などがこれにあたるとされています(法案審議における政府参考人答弁より)。
過去の原発事故などをみてもわかるように、放射線は目に見えず、人体に影響が出るまでに時間がかかることもあります。このため、仮に放射線の発散によって被害を受けたとしても、因果関係の立証が難しく、殺人罪や傷害罪での立件が困難なケースが考えられます。そういったことも念頭に、放射線の発散という行為そのものを処罰しているともいえます。
上記以外にも、同法では、原子核分裂等装置の製造や所持、放射性物質の所持などを処罰するほか、放射性物質または原子核分裂等装置を用いて、強要することを処罰しています。この放射性物質等を用いた強要罪は、通常の強要罪(3年以下の懲役)に比べ、重く処罰されます(5年以下の懲役)。
なお、同法による罪は、国外で犯罪が行われた場合であっても、日本人・外国人の別なく全ての者に適用されるとされています。このため、同種の罰則が定められていない国で犯罪がなされた場合であっても処罰されることになります。核テロリズムの防止のための国際協力の表れといえるでしょう。
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更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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