携帯メモリーの削除
[投稿日] 2014年04月24日 [最終更新日] 2017年02月08日
犯罪・刑事事件を得意としている弁護士
田中 克幸 弁護士 福岡県
天神ベリタス法律事務所 皆さんは、知人の連絡先を携帯にしか記録していなかったり、スケジュール管理を携帯で行ったりしていませんか?
こうした人々にとって、携帯メモリーが消えることは死活問題といえます。
しかし、現在のところ、法律は携帯メモリーをそれほど厚く保護してはいません。
「恋人などが嫉妬して異性の友人に関するメモリーを消してしまった」という話もよく耳にしますが、法律上、個人携帯のメモリーの削除に関する罰則はないのです。
たとえば、刑法259条は、文書・電磁的記録の毀棄(本来の効用を害する行為)を処罰する「私用文書等毀棄罪」を規定しています。
携帯メモリーを改ざんしたり削除したりすれば、当然データが利用不能になりますので、携帯本来の効用を害する毀棄行為として本罪を適用したいところですが、本罪が保護しているのは「権利義務に関する文書や電磁的記録」のみ。
先ほど示したような知人の連絡先やスケジュール、メール内容等は、権利義務に絡まないものがほとんどでしょうから、私用文書等毀棄罪の対象とはなりません。
では、携帯メモリーを損壊したとして、他人の物の損壊を罰する「器物損壊罪(刑法261条)」を適用するのはどうでしょうか。
残念ながら、こちらも適用外とされています。
本罪が保護している「物」とは、基本「かたちあるもの」なので、携帯電話本体を壊された場合は利用可能ですが、情報内容を損壊した場合まではカバーしていないのです。
ただし、この解釈は、今までこのような裁判が起こされなかったから維持されている面もあります。今後の裁判によっては、事態が変化するかもしれません。
刑事訴訟がだめなら民事訴訟で!と思われるかもしれませんが、実際のところ、民事訴訟に持ち込んでもメモリー削除に対する損害額の算定が困難なので、こちらもあまり現実的な対応策とはいえないでしょう。
もっとも、ここまで示してきたのは個人携帯のメモリーに関する話ですので、会社携帯のメモリーが消されたとなれば話は別です。
削除された会社携帯のメモリーが権利義務に関するものならば、先に触れた私用文書等毀棄罪の適用範囲内といえます。
また、会社携帯のメモリーを消せば少なからず業務に支障が出ますので、業務用コンピュータや携帯のデータを不正に改ざん・削除するなどして業務を妨害する行為を罰する「電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)」も成立する可能性があります。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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