浄水汚染罪[食用紅混入事件]
[投稿日] 2016年06月07日 [最終更新日] 2017年02月08日![浄水汚染罪[食用紅混入事件]](https://dn07ar7mppjqz.cloudfront.net/uploads/assets/eyecatch_default-2b48616791b031ac0fdae87083f5a8963c852d15d4a3035fc2a46cc84a630ef8.jpg)
犯罪・刑事事件を得意としている弁護士
山本 友也 弁護士 神奈川県
やまもと総合法律事務所~最高裁昭和36年9月8日判決~
人間が生きていくうえで水の摂取は不可欠。
飲み水の安全は、刑法上も特に保護の必要があります。
この役割を果たすのが「飲み水を汚染して使用できないようにする行為」を処罰している浄水汚染罪(142条)です。
ここでは、犯罪成立の条件として、飲み水を「汚染」することと「使用することができない」状態にすることの2点が挙げられています。
今回の事案では、人の飲食に使用できるような、人体に無害の物質を混入した場合でも、上記2点を満たしているといえるかが争われました。
S一家は、被告人X所有の敷地内に、期限付きの約束で居住していました。
ところが、S一家は期限を過ぎても家屋を明け渡さなかったのです。
Xはこれに憤慨し、一日も早くS一家をその家屋から退去させようと、井戸水の中に食用紅50グラムを溶かした水1升を注ぎ込み、薄赤色に変色させました。
この井戸水はS一家が飲み水に使っていたため、Xは「飲み水を汚染し、使用不能にした」として浄水汚染罪に問われることとなりました。
第1・2審ともに、飲み水を変色させる行為=「汚染」と認め、浄水汚染罪を適用しました。
これに対して、弁護人は、「汚染」=不潔にすること、と解釈。
食用紅である以上不潔にはなっておらず、Xの行為は浄水を「汚染」したとはいえないため、飲み水として「使用することができない」という評価はあたらないとして上告しました。
しかし、最高裁は上告を棄却しました。
食用紅であるとはいえ、一見して異物が混入したと認識できる程度まで飲み水用の井戸水を薄赤色に混濁させたXの行為は、やはり「汚染」と評価するにふさわしく、物理的には無害でも、心理的に飲み水としての「使用を不能にした」との判断です。
これによって、「使用することができない」状況が「有害だから」というような物理的な理由のみならず、「色が気持ち悪くて飲めない」のような、心理的な理由によるものでも構わないと示しました。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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