賭博

どこまでは合法?賭博について、この際ハッキリさせておこう
賭博とは、平たく言えば金銭や品物を賭けて勝負を争うゲームや遊びを指す、といえるでしょう。この、「遊びに過ぎない」といえば過ぎないことが、犯罪になってしまうのは何故でしょうか。この項では、ふつうに賭博と呼ばれる行為と犯罪としての賭博とをどう区別するか、犯罪を犯すとどうなるのか、などを通して理解を深めていきます。
そもそも賭博とは罪としての賭博は、刑法185条から187条にかけて規定されています。
語源的には、「賭事(とじ)」( 勝負事の結果に関与できないもの)と「博戯」( 勝負事の結果に関与できるもの)の2つの文字をつなげたと言われます。「賭」には競馬・競輪、野球賭博、富くじ(宝くじ)、ルーレットなどがあり、「博」のほうは賭け麻雀、賭けゴルフ、賭けポーカーなどが例に挙げられます。
保険は、事故に遭遇するという「ギャンブル」に金銭を賭けることから、そのルーツは賭博であるという説もあります。
しかし、何故賭博を犯罪と規定するのでしょうか。戦後間もないころ、賭博罪は憲法13条(幸福追求権)等に違反するとして国と争った賭博開設者に対し、最高裁大法廷は次のように述べて賭博罪は合憲であると判示しました。「勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲法27条1項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある……新憲法にいわゆる公共の福祉に違反するものといわなければならない」(昭和25年11月22日最高裁大法廷判決より)。
賭博が横行したら、勤労と正当な報酬で成り立っている健全な社会が壊れてしまうから、という趣旨のようです。たしかに、賭博罪は何も日本でだけ罰せられているわけではなく、諸外国においても犯罪と規定されています(ただし罰し方には違いがあります)。
罪になる賭博とならない賭博の違いは何か刑法185条は、賭博を最高50万円までの罰金を科すと規定しています。しかしその後に「一時の娯楽に供する物を賭けたときは、この限りではない」とも定めています。これは罰しないといけないほど違法ではない(可罰的違法性が低い)という判断によります。では、それにはどのようなものがあてはまるのでしょうか。具体的には、みかん、缶ジュースや食事などはセーフ圏内といえるでしょう。ただ、少額であっても金銭を直接かけていれば違法は違法、とくぎを刺した裁判例もあります。
罪となるかどうかの境目、という観点からいえばそのようなことになりますが、公然と賭博行為をしているのに、罪とならない場合があります。よく知られている国や自治体などが主催する、いわゆる「公的賭博」です。競馬、競輪、競艇、オートレース、などの競技型の賭博や、各種宝くじ、お年玉はがきなど、関わった経験がない国民などいないと言っていいでしょう。
これらは何故罪とならないのでしょうか。「正当業務行為」といって、法令に基づいて行われる行為や社会通念上正当な業務による行為は、刑法35条の「法令又は正当な業務による行為」として、刑法に規定された罰条に該当しても犯罪は成立しない、とされています。
たとえばお医者さんの手術は、傷害罪に問われません。したがって、特別な法律(たとえば競馬法)において賭博行為が行われることを許容したり、これが行われることを前提として規制を行っていたりしている場合は、合法性が確保されているということになっています。
しかし、先述のように賭博行為を罪として設けた趣旨が「国民の射幸心を煽り、勤労の美風を損い、国民経済に影響を及ぼすから」だとすれば、日本中央競馬会や都道府県が主催する競馬は、自ら「国民の射幸心を煽っている」のでないでしょうか。しかし、そのための法律を作り、公共機関が主催して馬券収入を国が稼ぐ場合は、「正当業務行為」の名の下に、特別に刑法を適用しないことにしているのです。「ご都合主義」というと言いすぎかもしれませんが、理屈付けとしては歯切れが悪いといわざるえを得ません。
海外のカジノで賭博した場合は?日本では「属地主義」という、法の適用範囲に関わる主義を採用しています。これに対立する概念が「属人主義」です。属地主義では、罪の範囲を自国領域内に場所を限定します。刑法であれば、国内で犯された犯罪に対しては行為者の国籍を問わず日本の刑法を適用します(1条)が、逆に外国で日本の刑法上の罪を日本人が犯しても、日本の検察は起訴しません。
ですから、海外のカジノで賭博を楽しんでも、日本で裁判にかけられることはありません。(外国の法律で禁じられている罪を犯せば、その国で罰せられます。)
ただし、オンラインカジノというのがあります。インターネットを通じてプレイするカジノゲームですが、2016年4月末現在、日本国内から日本国外のオンラインカジノで賭けをした場合の可罰性について争われた裁判例はまだありませんが、2016年3月10日、日本国内から日本国外のオンラインカジノで賭けをしたとして、京都府警察が単純賭博罪により3名を強制捜査の上逮捕しました。 日本政府は国会答弁にて「犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄であることから、政府として、お答えすることは差し控えるが、一般論としては、賭博罪・賭博開張図利罪が成立することがあるものと考えられる」と述べています。
賭博罪で捕まるとどんなことになる?刑法185条は、賭博を最高50万円までの罰金を科すと規定しています。また刑法186条は、常習として賭博をした者は3年以下の懲役に処せられると規定しています。常習性とは、賭博を反復累行する習癖のある者を指し、必ずしもプロに限られません。常習かどうかは賭博行為の内容、賭けた金額、賭博行為の回数、前科の有無などを総合的に判断して決められます。
また、刑法には書いてありませんが、警察には「暴力団の資金源を根絶する」という大目標がありますから、実際の摘発や捜査にあたっては、賭博罪についても暴力団マターを優先して行っていると推測されます。
比較的近時の裁判例として、野球賭博事件について「刑法一八六条一項にいう賭博の常習性とは、賭博行為を反復累行する習癖をいうのであって、行為自体の属性ではなく、行為者の属性であり、常習賭博罪は、右の習癖を有する者が、その習癖の発現として賭博を行うことによって成立することは、原判決も説示するとおりであり、右の常習性の認定については、被告人の職業・経歴、賭博の前科・前歴の有無、賭博の性質・方法、賭博の行われた期間、賭金額など諸般の事情を総合して判断すべき」(平成3年10月18日広島高等裁判所岡山支部判決)と判示した裁判例がありますが、これも事案としては暴力団関係者が絡んだケースです。
賭博・富くじ罪の発生件数は、一貫して減少しています。昭和57年には3,000件あったのが、平成26年には221件になっています。理由は多岐にわたりますが、暴力団の封じ込め政策が効を奏してきたことや、暴力団自身の資金源手段が、賭博以外の方へシフトしてきたことも要因としてあるかもしれません。
賭博を得意としている弁護士
渡邉 祐介 弁護士 東京都
ワールド法律会計事務所関根 翔 弁護士 東京都
池袋副都心法律事務所種村 求 弁護士 神奈川県
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参加費を取るゲーム大会での賞品として考えている物が一時の娯楽に供する物か分からないので聞きたい