住居侵入

住居侵入~お家の平和を侵すことは家族でも未遂でも犯罪です
住居侵入罪の発生件数は,平成15年に戦後最多の4万348件を記録した後,16年から減少しており,26年は1万7,897件(前年比1,825件(9.3%)減)でした。
住居侵入罪は刑法130条前段に規定される罪で、「住居不法侵入」などと言われることもあります。
住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居など(人の住居若しくは人が看守する邸宅、建造物、廃墟や若しくは艦船)に侵入した場合に成立します。法定刑の最大は、懲役3年です。
住居侵入罪の保護法益(この罪によって侵されてしまう価値のようなもの)については、これを居住権であるとする説と、住居の事実上の平穏であるとする説とがあります。
ここでいう「居住権」の内容は、様々です。戦後の下級審裁判例では平穏説に親和的な判決が多数出現し、最高裁判決においても、傍論ではあるが平穏説に立つことを明言し、あるいは、平穏説に立つと見られるものが現れました。しかし、「侵入」の意義に関して、これを「他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいう」とした最高裁判決が登場して以来、判例は新住居権説に立っていると理解されています。
住居侵入罪によって結果的にプライバシーが保護されることはありますが、プライバシー侵害を理由として処罰されるわけではありません。
どこに侵入することが住居侵入罪となるのでしょうか。住居侵入罪の客体、すなわち、本罪において侵入が禁止される場所として刑法130条に規定されているのは、「人の住居」のほか、人の看守する「邸宅」、「建造物」、又は「艦船」です。建造物侵入罪という言葉がありますが、対象が住居でない建造物であるというだけの違いで、犯罪としては全く同じように理解されています。
「住居」は、人が寝泊まりしたり食事したり、日常的に使用する場所と定義され、会社の事務所、大学の研究室、店舗などが「住居」に含まれるか否かという問題が生じますが、「建造物」には該当するため、住居侵入罪が成立しなくなるわけではありません。
「人の看守する邸宅」への侵入も住居侵入罪を構成します。「人の看守する」とは、人による事実上の管理・支配を意味しますが、鍵も囲いもなく放置されている場合には「人の看守」がないとされ、そこへの侵入が住居侵入罪とはならない場合があるといわれています。なお、住居に付属した敷地(庭など)は「邸宅」として、そこへの侵入も住居侵入罪となります。また、建造物に付属した敷地は、建物に接続して障壁等で囲まれている土地であると認められる場合には、建造物の一部として扱われ、住居侵入罪を構成します。そのため、建物に侵入していなくても塀を乗り越えて中庭等へ侵入した時点で、住居侵入罪になってしまうのです。
住居侵入罪にはならない例他人の自動車の中や列車の中に入っても住居侵入罪は成立しません。また、住居等の付属地であっても囲みのないところに入ったり、囲みの有無にかかわらず空き地に入っても住居侵入罪は成立しません。(もっとも、別に軽犯罪法1条1号または32号違反が成立する可能性が高いでしょう。)
たとえ立ち入った行為が「侵入」ではないなどとして住居侵入罪の成立が否定されたとしても、管理者等から退去するよう要求されてこれに応じない場合には「不退去罪」(住居侵入罪と同じ刑法130条)が成立します。
また、窃盗や強盗などの財産を奪うことを目的に住居侵入をするケースもありますが、この場合は、住居侵入罪に比べて窃盗・強盗の罪の方が重いため、窃盗罪・強盗罪で逮捕されることが多いと思われます(未遂の場合は住居侵入罪で逮捕されることもあります)。
このように、住居侵入罪は、一つの犯罪目的を達成するための手段として実行されることが多いといえます。この場合の処罰はどうなるでしょうか。
たとえば窃盗目的で人の家に忍び込んだ場合には、窃盗罪と住居侵入罪の2罪が成立し、両罪は手段と目的の関係にあるといえるため牽連犯(刑法54条1項後段)となり、科刑上一罪として最も重いほうの罪の法定刑の範囲で処罰されることになります。
それでは、実際に住居侵入罪で逮捕されてしまったのであれば、今後どのようになってしまうのでしょうか。住居侵入罪での逮捕後の流れと傾向について説明します。
動機が単純な住居侵入罪では、微罪処分になる可能性もあると考えられます。たとえば、窃盗目的・わいせつ目的ではない、ただ単なる好奇心で住居侵入をしたようなケースです。この場合、保護者や配偶者、会社の上司などが監督者として迎えに行くことになります。その後、よほどのことがない限り、逮捕後数日中に(最短で72時間後)身柄を解放されることになります。
逮捕されてしまうと、原則的に逮捕後72時間はたとえ家族であっても面会することができません。逮捕後の捜査が長引くと勾留され、さらに拘束期間が長引くことがあります。この勾留期間は最大20日になり、逮捕から併せて最大23日間身柄を拘束されることもあります。仮に23日も職場や家庭から離れてしまうと、何かしらの不都合が生じてくることも十分に考えられるでしょう。
住居侵入罪では、不起訴処分を受けることも多く、この起訴・不起訴の分かれ目が重要になります。起訴とは、検察官が刑事裁判を行うように公訴の提起を行うことで、起訴されてしまうと、ほぼ有罪となり何かしらの刑罰を受けることになります。
また、住居侵入罪では略式起訴も多いとされています。略式起訴とは、簡単に言うと軽微な事件で被疑者が罪を認めている場合に、身柄を解放された上で書面にて起訴されることで、法廷で裁判が開かれることはありません。裁判所は被告人に罰金の支払いを命じ、手続は終了します。短期間で身柄を解放されるというメリットがありますが、罰金とはいえ、前科がつくことになります。日常生活を送るうえでのデメリットはほぼありませんが、きちんと意味を理解したうえで判断する必要があります。
いずれにしろ、このような逮捕後の流れで、基本的な対処法を説明します。
(1)まずはきちんと反省すること
「やった」のが事実であれば、まずは、本人がきちんと反省してください。人は悪いことをしてしまうと、ついつい言い訳をしてしまいます。特に住居侵入罪自体は、罪も軽いと考えている人もいることから、きちんと反省しない人もいます。しかし、反省していない態度が警察や検察などの捜査官に伝わると、罰則を与える意味合いも込めて、拘束期間が長引いたり、判決・処分にも影響してきます。
また、やっていない場合は、やっていないことをきちんと捜査官に伝えましょう。
(2)弁護士に相談すること
弁護士に個別の事件内容を元に直接相談することで、より具体的な解決方法をアドバイスしてくれるでしょう。まずは相談から始めてください。逮捕後72時間はたとえ家族でも面会できません。しかし、弁護士ならその間も面会することが可能です。なお次の(3)や、また勾留後の細かな対し方については、常に弁護士と相談しながら進めることになります。
(3)被害者との示談
住居侵入罪による被害者がはっきりしているのであれば、その被害者と示談をすることも対処法の一つです。
(4)冤罪の場合は、絶対にうその自白をしない
やっていないのなら、絶対に罪を認めてはいけません。捜査官は、「クロ」と心証を持てば、様々な角度から誘導尋問的に同意を求めてきます。安易に乗ってはいけません。弁護士と相談して、黙秘の手を使うかどうかも検討しましょう。
現在、海外で社会現象を巻き起こしている「ポケモンGO」は、スマートフォンを通して現実世界の中でポケモンをGETできるスマートフォンのゲームですが、住居侵入罪と絡んで、今後問題が出てくるかもしれません。
もちろんポケモンGOというゲーム自体を否定するいわれは毛頭ありません。どのような遊びであれ、周囲に目を配り、法律を守りながら遊ぶのが常識といえます。
住居侵入を得意としている弁護士
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