少年事件

少年事件の扱いはおとなの犯罪とは違う。手続きや処分について
ここでは、少年事件について説明します。
「少年事件」とされる犯罪とは少年事件とは、14歳以上20歳未満の少年(この場合は男女の区別なく使っていて、「少女」も少年に入ります)が犯した犯罪、それが「少年事件とされる犯罪」です。少年事件は、家庭裁判所が専属的に管轄します。
家庭裁判所は、罪を犯した少年などに過ちを自覚させ、更生させることを目的として、少年の調査、審判を行い、処分を決定します。審判は、少年の再非行を防止することを目的として、本当に少年に非行があったかどうかを確認の上、非行の内容や少年の抱える問題点に応じた適切な処分を選択するための手続です。
少年が逮捕されてからの流れ少年事件の通常の流れは下図の通りです。(最高裁判所ホームページより)
1.事件の受理
家庭裁判所は事件を受理したときに、少年を少年鑑別所に送致することがあります。これを観護措置といいます。少年鑑別所で、少年の処分を適切に決めるための様々な検査等が行われます。
2.家庭裁判所調査官による調査
家庭裁判所調査官が、少年の性格、日頃の行動、生育歴、環境などについて、心理学、教育学、社会学などの専門知識・技法を活用して、調査を行います。家庭裁判所調査官の方から、少年の家や学校などに出向いて調査をすることもあります。このほか、家庭裁判所の医師の診断を受けさせたりして調査を行うこともあります。調査に当たっては、少年の更生のために必要な助言や指導も行います。
家庭裁判所調査官は、調査の結果を取りまとめ、報告書を作成して裁判官に提出します。
3.審判
審判には、少年と保護者が出席します。また、家庭裁判所調査官、付添人(多くは弁護士)、学校の先生、雇主などが出席することもあります。家庭裁判所の判断で検察官を出席させることもあります。
審判は、本当に少年に非行があったかどうかを確認した上、非行の内容や個々の少年の抱える問題点に応じた適正な処分を選択するための手続です。審判の過程そのものが、少年の再非行防止に向けた教育的機能を果たすことになりますので、少年に対し非行の重大性や自分の問題点などを理解させて反省を深めさせる必要があります。裁判官にもそのために工夫が必要とされます。
また、少年審判は非公開ですが、ごく例外的に殺人や重い傷害事件で、被害者本人や遺族に、審判の傍聴が認められる場合があります。
裁判官は審判において、少年が再び非行に及ばずに更生するにはどのような手当てが必要かということを十分に考えて、最終的な処分を決定します。
4.処分の決定
裁判官は、調査や審判の結果に基づいて少年の処分を決定します。場合によっては、試験観察という期間を持ったうえで決定します。
処分の決定は以下の4つに大別されます。
- 保護観察:保護観察官や保護司の指導・監督を受けながら社会内で更生できると判断された場合には、保護観察に付されます。
- 少年院送致:再非行のおそれが強く、社会内での更生が難しい場合には、少年院に収容して矯正(きょうせい)教育を受けさせます。
- 児童自立支援施設等送致:比較的低年齢の少年につき、開放的な施設での生活指導が相当と判断された場合には、児童自立支援施設等に送致します。
犯行時14歳以上の少年について、保護処分よりも刑事裁判によって処罰するのが相当と判断された場合には、事件を検察官に送致することがあります。なお、少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させ、犯行時に16歳以上であった場合には、原則として、事件を検察官に送致しなければならないとされています(いわゆる原則検送制度)。
(3)知事又は児童相談所長送致少年を児童福祉機関の指導に委ねるのが相当と認められた場合には、知事又は児童相談所長に事件を送致します。
(4)不処分、審判不開始(教育的働きかけ)上記のような処分をしなくとも調査、審判等における様々な教育的働きかけにより少年に再非行のおそれがないと認められた場合には、少年に処分をしないこととしたり(不処分)、軽微な事件であって調査等における教育的な働きかけだけで十分な場合には、審判を開始せずに調査のみを行って事件を終わらせたりすること(審判不開始)もあります。
不処分や審判不開始という語感からすると、家庭裁判所が何もしないまま少年事件を処理しているかのような誤解を与えてしまいがちですが、不処分や審判不開始で終わる場合でも、裁判官や家庭裁判所調査官による訓戒(くんかい)や指導、犯罪被害について考えさせる講習などといった教育的な働きかけを行い、少年及び保護者がそれをどのように受け止めたかを見極めた上で決定を行っています。
裁判所の決定を受けて不服がある場合は、双方とも抗告することができます。
現在日本で実名報道を制限している法令としては少年法があります。
(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
同条において、なんらかの民事トラブル及び他人間とのトラブルにおいて被害者と加害者の両者が存在した場合について、本人を特定できる情報を新聞紙や出版物に記載することが禁じられています(インターネットは対象外)。この趣旨は、社会的偏見によって更生が阻害され妨げられる可能性があるときに、傷つきやすく将来のある少年を保護すること、少年はしばしば事件を模倣してしまうため実名の公表は少年を「悪い意味でのヒーロー」にする恐れがあることなどといわれています。
これは、少年の名誉・プライバシーを保護することによって、健全な育成をすすめる目的で定められているものです。この条文で直接に成長発達権を保障するものとする考えも多いですが、努力義務規定のため、違反しても、刑事・民事および行政責任などが課せられないため、一部の週刊誌などでは実名が掲載されることが多々あるのも事実です(もっとも、報道が名誉毀損として責任を問われることはあり得ます)。
少年法で禁止しているのは、あくまでも家庭裁判所の審判に付された少年、または少年のとき犯した罪により公訴を提起された者に対してであり、逮捕者や指名手配者は含まれません。したがって逮捕された段階で少年の氏名などを報道しないのは、マスコミによる自主規制によるものです。報道の自由・表現の自由という基本的人権に関わる問題であり、法文上禁止されていない逮捕時点での実名報道を規制することはできないという理屈です。
しかし、こうした規定や自主規制は、表現の自由としての知る権利や報道の自由を侵害し、違憲であるとする批判があります。また公判中(控訴審、上告審)に成人しても実名が出ないため“捕まるようなワルをやるなら未成年の間に限る”という意識を少年達に植え付ける恐れがあるという意見もあり、決着がつかないまま今に至っているのが実態です。
こうした論議の背景として、一般社会に少年犯罪への危機意識があり、それが重罰化を後押ししていることがあるのではないか、という見方もあります。
少年による刑法犯の検挙人員の推移は、戦後3回のピークを経て昭和59年以降は、平成7年まで減少傾向にあり、その後、若干の増減を経て、16年から毎年減少しており、26年は戦後最少の7万9,499人でした。人口比についても、16年から毎年低下し、26年は、678.4(前年比85.4pt低下)となり、最も人口比の高かった昭和56年(1,721.7)の半分以下となっています。
少年犯罪は、確実に減っているのです。マスコミの報道に安易に乗って、あたかも少年犯罪が増えているように錯覚するのは、広く公共社会のあり方を考える際にも、正しい判断を導きません。
少年事件を得意としている弁護士
細川 宗孝 弁護士 神奈川県
やまもと総合法律事務所トップへ
行為時14歳未満で発覚時成人