性犯罪

性犯罪の「被害者」にも「加害者」にもならないために
犯罪白書平成27年版によると、強姦の発生件数は,平成9年から増加傾向を示し,15年に2,472件を記録した後,16年から減少しましたが,24年から増加し,26年は1,250件(前年比159件(11.3%)減)でした。これに対し検挙率は,10年から低下し,14年に62.3%と戦後最低を記録しましたが,その後は上昇傾向にあり,20年以降は80%を超えています。
強制わいせつの発生件数は,平成11年から急増し,15年に戦後最多の1万29件を記録した後,21年まで減少しましたが,22年から増加傾向にあり,26年は7,400件(前年比254件(3.3%)減)でした。検挙率は,11年から急低下し,14年に35.5%と戦後最低を記録した後は上昇し,平成26年は58.1%(前年比6.3pt上昇)でした。
この項では、性犯罪の被害者・加害者の両面から、起きてしまったときの対策や起きないための防止策などについて考えます。
性犯罪かそうでないかの判断基準として、その行為を相手の同意を得て行っているかどうか、が挙げられますが、一方同意を得ていても13歳未満の女子に対する姦淫は強姦扱いであり、児童買春は、相手が児童であり尚且つ同意を得る手段に金銭を用いているため、性犯罪に該当するものと考えられます。
- 暴力的性犯罪に該当するもの
強姦、強制わいせつ(痴漢)、強盗強姦、わいせつ目的略取・誘拐 - それ以外の性犯罪
色情狙いの窃盗(下着泥棒など)、公然わいせつ、管理売春(売春防止法)、児童買春・児童ポルノ製造等(児童福祉法、児童ポルノ禁止法)、のぞき・つきまとい(軽犯罪法、ストーカー規制法、迷惑防止条例)、盗撮(軽犯罪法、建造物侵入罪、迷惑防止条例)、わいせつ画像等の販売や公開(わいせつ物頒布等の罪)、リベンジポルノ(わいせつ物頒布等の罪、リベンジポルノ防止法、名誉毀損罪)、卑猥な行為(迷惑防止条例)
※性犯罪には該当しないが法に抵触する行為として、淫行(青少年保護育成条例、いわゆる淫行条例)や児童ポルノ単純所持が挙げられます。
被害者になってしまった時にやるべきこと性犯罪の被害に遇ってしまった。どうしたらいいのか…。
警視庁や自治体などでは、性犯罪の被害者になってしまったときの対処法について情報発信をしています。ここではそれらに共通する事項を掲げておきましょう。
- まずは、被害者の安全確保が第一。性犯罪は暴力などの犯罪を伴う場合も多いので、屋内であれば施錠を、屋外であれば通行人やコンビニ、交番等に助けを求めるなどすること。
- 安全を確保した上で、なるべく現場の近くですぐに警察に110番通報する。被害現場には証拠が残っていることがあるので、警察官が来るまでそのまま待つ。
- 警察官が来たら、落ち着いて、犯人の様子や被害状況等を話す。
- 病院へ行って診てもらう。できる限り女性警察官が付き添ってくれる。病院の費用なども相談可能。
- 被害届を出し、告訴の手続きを取る。強姦、強制わいせつ、ストーカー犯罪などは、「親告罪」といって被害者等から告訴されないと犯人を起訴できない。起きてしまった犯罪はきちんと罰することで、以後の犯罪発生を抑制することが重要。泣き寝入りは絶対にしないこと。
- 一人暮らしなどの場合、自宅へ帰るのが不安なときは、警察のあっせんで宿泊もできる。
裁判の際に、被害者にとって最も厄介な問題は、被告人側から「合意」の主張がなされた場合です。合意の主張に対しては、被害者および検察側が強いられる立証が困難なことも多いのです。
性犯罪の多くは、知り合いの間で発生していることから、性行為に至る経緯を詳細に調査しないと、合意の有無を判断することは難しく、また、単純な意味で、性行為が行われる状況では、通常目撃者が少ないといった問題もあります。強姦被害者が法廷や取り調べの場で、加害者につけいる隙をつくったか否かを詮索されたり、被害者が異性との交友関係、性体験の有無について詮索されることもあります。
被害者が児童の場合は別の問題もあります。性に対する知識不足や証言の信憑性に対する疑いから、明確な物的証拠がないと、犯罪行為の有無自体の立証が難しいケースが多く、またそもそも被害児童に自分が犯罪の被害者になったという認識自体がない場合もあって、犯罪行為自体がなかなか発覚しにくいという問題があるのです。性教育、法教育の課題でもあると言えるでしょう。
性犯罪に予防策はあるのでしょうか。犯罪を起こす側に身勝手な動機がある以上、必ず防げる方法などあり得ないでしょう。ただ、統計的な観点から、性犯罪が比較的起こりにくい環境を保つことは、或る程度可能と思われます。
- 帰宅する際は、なるべく複数で行動する。やむを得ず一人で帰宅する際は、周囲を見回すなど警戒していることをアピールする。
- エレベータに乗る際、閉まる直前に見知らぬ人が入って来たときは特に注意が必要。
- 入居時は鍵を交換し、極力2ロックにする。ベランダも完全に施錠する。
- ネームプレートには男性の名前を併記したり、洗濯物に男性の衣類を干したりする。
- 宅配便や集金を装うことがあるので、来訪のコールを受けても安易にドアを開けない。
- 電話番号やメールアドレスなど不用意に個人情報を教えない。
また、このような個人レベルでの注意事項とは次元が違いますが、地域住民自身による防犯活動など、まち全体をあげて犯罪防止に取り組むことの重要性が説かれています。
性犯罪で逮捕されたらどうなるか性犯罪も犯罪の一つです。逮捕後の流れは他の犯罪と基本的に流れは変わりません。ただ、強姦、強制わいせつ、ストーカー犯罪などは「親告罪」だということ、また「合意」の上の行為ではなかったのか、という疑念が持たれやすいことに特徴があるといえます。
まず前項でも述べたように、被害者等から告訴がなされることが必要です。ひとたび告訴がなされれば、警察・検察は立件へ向けて活動します。
その反面、捜査のスイッチは「有罪」へ向けて入ってしまいますから、うその告訴がされても、容疑者側にとっては相当不利な状況に置かれます。弁護士に相談しながら、有罪攻勢に立ち向かわなければなりません。本当に「やってない」のなら、決め手になる直接的な証拠は、あるはずがありません。うその自白など絶対にしない強い意志が必要です。(もちろん、うその自白を促すような行為が警察の側にあるとしたら、断じて許せません。)
先述のように、被告人は、合意があったことを確信しているのであれば、そのことを前面に出して争うのが有効と思われます。
先述のように、性犯罪の代表的なものは強姦ですが、続いて公然わいせつ、わいせつ物陳列など社会の風俗を乱すものも性犯罪のカテゴリーに入るといわれます。ただ、わいせつ物陳列罪などは、強姦などとは対照的に「被害は何なのか」が問われることがあり、また表現の自由との相克も問題となる(ろくでなし子事件など)こともありますので、被害者がはっきりいる性犯罪とは、分けて論議することが求められるといえます。
性犯罪を得意としている弁護士
岡 直幸 弁護士 福岡県
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