【弁護士に聞く】強制性交罪で「合意」の有無が問題となるケース
[投稿日] 2019年03月22日 [最終更新日] 2019年03月22日
性犯罪を得意としている弁護士
合意の上で性交渉に及んだはずなのに、後日「強引に関係を迫られた」と被害届を提出されるケースがあります。その場合は「合意」があったかどうかが非常に重要になります。
そこで、今回は強制性交罪を疑われた場合の「合意」の有無が問題になるケースについて、ワールド法律事務所の渡邉祐介弁護士に説明していただきました。

(ワールド法律会計事務所)
弁護士になる前は、IT企業のサラリーマンという異色の経歴の持ち主。相談者の主張や立場を深く理解し、親身になって寄り添う姿勢が、法律の狭間で苦しむ方から高い評価を得ている。
――強制性交罪とはなんですか?強姦罪とは違うのですか。

渡邉 弁護士
強制性交罪とは、少し前までは強姦罪と呼ばれていた犯罪です。
法改正によって強姦罪から強制性交罪へと罪名も内容も変わりました。
暴力を振るったり、脅迫したりして相手の同意なく性行為をした場合に成立するという点は同じです。
強姦罪から強制性交罪に名称が変わったのは、相手の同意なく行われる性行為というものが、必ずしも男性から女性に対するケースのみではないからです。
条文もそのような内容に変わっています。
そして、行為時には同意があったにも関わらず、後から「合意がなかった」などと主張されて訴えられ、強制性交罪だとされてしまうケースが少なからずあります。
- 強制性交罪は強姦罪から名称・内容が変わったもの
- 強制性交罪は女性だけでなく男性も被害者として想定されている
- 強制性交罪は後から合意がなかったと訴えられる可能性がある
――「合意」の有無が問題となるケースにはどのようなものがありますか。

渡邉 弁護士
相手がお酒に酔っていた場合、相手に他にパートナーがいる場合、風俗で本番行為をしてしまった場合などがよくあるケースです。
そうしたケースで訴えられると「合意の有無」が問題になるでしょう。
――相手がお酒に酔っている場合はどうして合意がなかったと言われやすいのですか。

渡邉 弁護士
「お酒の勢いで行為をしてしまった」というケースでは、後になってから後悔したり、その事実を自分の中で認めたくないという思いになったりする場合があり、相手から強制に行為に持ち込まれたんだ、というストーリーに置き換えることで、そうした思いから解放されようという心理が働くのです。
また、飲みすぎた場合などで記憶を失って、「そもそも記憶にない」というような場合も「強制的にされた」と言われてしまう可能性があります。
――相手に交際相手や配偶者がいる場合に合意がなかったと言われる理由はなんですか。

渡邉 弁護士
性交渉を行なった相手に、交際相手・配偶者がいる場合、浮気行為がバレた言い訳に「無理矢理された」と言うことが少なくありません。
夫や彼氏にバレた時に「浮気じゃない、無理矢理にされた」と主張することで、自分は悪くないのだということにしたいのです。
そうした場合は、当時は合意があったのにもかかわらず、後から犯罪者に仕立て上げられてしまうことになります。
――風俗店で本番行為をしてしまった場合はどうでしょうか。

渡邉 弁護士
いろんなケースがありますが、たとえ風俗店であってもお金を対価とするいわゆる本番行為は違法です。
そのことがお店にバレてしまい、従業員が本番行為したことを咎められた時に、「お客に無理矢理された」などと主張されるケースがあります。
――他にはどんなケースで後から合意がなかったと言われやすいですか。

渡邉 弁護士
交際しそうだったから体を許したのに、交際に至らなかったケースでは、当時は合意があったにも関わらず後から無理矢理だったと言われるケースもあります。
交際できなかったことで、否定されたという気持ちになり、その反動で、相手に反撃しようという心理が働いたりします。
後は、配偶者同士の性交渉で合意じゃなかったと主張するケースもあります。
夫婦であれば合意がなくてもそういうことができるのでは、と思われがちですが、夫婦でも合意が必要です。
- 当時は合意があったのに後から合意がなかったと強制性交罪で訴えられた場合は合意の有無が重要になる
- お酒を飲んで行為をした場合や、相手に配偶者がいる場合、風俗で本番行為をした場合などに「合意がなかった」と主張されるケースがある
――後から「合意がない」と主張されて警察に駆け込まれたら、逮捕・起訴されてしまいますか。

渡邉 弁護士
もちろん警察は、被害の届け出があったからといって被害者の供述だけで、逮捕・起訴するわけではありません。
――それぞれのケースで、「合意」があったと反論することは可能でしょうか。

渡邉 弁護士
もちろん可能です。ただ、性交渉で事前に合意があったことを証明することは難しいです。
あたりまえですが、性行為をする前に契約書を取り交わす人もいません。意思表示があるとしても、せいぜい口頭です。
口頭ですらしないことが多いでしょう。
だから、本当に合意があったこと自体を直接証明するような証拠自体が、そもそもないのです。
前後の経緯や時間・場所などから間接的に推認していくしかないケースがほとんどなのです。
――では、「合意」があったと認められることは難しいのでしょうか。

渡邉 弁護士
そうでもありません。
二人で仲良くお酒を飲んでいて、二人でラブホテルに入ったなどの状況では合意がなかったとは言い難いです。
また、毎回自宅でも、たとえばそれまでに10回性交渉を行なっていたのに11回目の性交渉については「無理矢理だった」と言われても、合意がなかったとは認められにくいですよね。
そもそも、犯罪の立証責任は、捜査機関にあるから、合意がなかったことを証明するのは検察です。
ですので、検察側が合意がなかったと言えるような証拠をそろえていく必要があります。
合意がなかったことが認められやすいケースとしては、たとえば、被害者の着衣に乱れや破損があり、被害者の体に乱暴を受けた傷があり、加害者の腕や身体などに被害者から受けた引っかき傷があるようなケースでしょう。
- 警察に駆け込まれてもすぐに逮捕や起訴されるわけではない
- 「合意がなかったこと」を検察が立証しなければならないので、必ずしも起訴されるとは限らない
――これらのケースで弁護士に依頼すると、どのような対応をしてもらえますか。

渡邉 弁護士
すでに被疑者となっている状態の場合、弁護人となって弁護活動を行います。
知り合って間もない関係よりも、頻繁に会う親しい関係や夫婦などの関係のほうが、「同意がなかった」とは言いにくい方向になります。
当事者二人の行為前後のメールその他のやりとりの中に、同意による性交渉だったことを匂わせるような会話があるかもしれません。
また、被害者の友達が「あの二人は付き合っていた」などと言えば、合意がなかったとはいえないのではないかという話になります。
弁護士は、こうした被疑者に有利な主張を組み立てたり、捜査機関が目にしていないであろう証拠を集めたりすることで、同意がなかったということはできないということを捜査機関に主張していくことになります。
――後から「合意がなかったから強制性交罪だ」と訴えられた場合は、どのように解決することが多いですか。

渡邉 弁護士
証拠がないケースが多い上に、双方が裁判にしたくないという思惑もあり、示談で解決するケースが多いです。
加害者にされてしまった人は、トラブルに巻き込まれていること自体が大きな不利益になるので、「解決金」を支払って早く解放されたいと考える人が少なくありません。
二人の間に何かしらのトラブルの原因があったということも多く、言われる側の中にも、思い当たる節があることも多いんです。
だから、同意がなかったという箇所については不本意でも、二人の間のトラブルを解決するという視点から、譲歩して解決金を支払って被害届を取り下げてもらうという解決をするケースが多いのです。
――示談で終わらせるメリットはあるんですか。

渡邉 弁護士
大いにあります。
裁判になったら時間も手間もかかりますし、他の人にばれてしまう可能性がありますが、示談で終わらせることで早く解決することができます。
――強制性交罪で相手から訴えられたらどうすればいいですか。

渡邉 弁護士
まず大切なのは、当事者間で話をしないことです。
恋愛感情が絡んだトラブルでは、当事者同士で話をすることで話がこじれてしまうことが少なくありません。
復縁しようというなら別ですが、強制性交罪で訴えてくる段階になってからの復縁ということはないでしょうから。
こじれて「絶対に許さない」となってしまうことが多いので、早い段階で弁護士などが入って、冷静に、法的な面からお話をすることができます。
相手が言っていることが無理な主張であれば、その主張が法的に実現困難であるということお話していくのです。
――強制性交罪で訴えられないためにできることはなんですか。

渡邉 弁護士
信頼できる相手としかそういう行為をしないことに尽きると思います。
ワンナイトラブのようなものや酔った勢いで性交渉を行わないことです。
よくわからない相手と性交渉を行うこと自体に様々なリスクがありますので。
- 弁護士は「合意があったこと」を推定できる証拠を集めてくれる
- 相手と示談して解決するケースが少なくない
- 相手から訴えられたら弁護士に相談しよう
合意があったはずなのに後から強制性交罪で訴えられた場合、まずは弁護士に相談することが大切です。
法律の専門家である第三者を介して冷静に話を進めることで、こじれることなく早期に解決することも可能になります。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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