執行猶予判決
[投稿日] 2016年06月13日 [最終更新日] 2016年10月28日
執行猶予を得意としている弁護士
6月1日の新聞各紙は、1面といわゆる3面において、元プロ野球有名選手の覚せい剤事犯についての、東京地裁判決を大きく扱っていた。
有罪は当然のことであるし、過去の例からして執行猶予も100パーセント近く予想できたことである。ということで、社会的インパクトのある事件ではあったが、そんなに驚くべきまた大きく扱うべき記事であるかどうかは疑問であった。
ところで、この記事の中で「ふ~ん」と思ったことが一つと、それまで疑問に思っていたことがあるので、そのことについての私見である。
記事中には「弁護側は、通常の執行猶予より厳しいとされ、専門家が更生を指導する保護観察付きの執行猶予判決を求めていた」とある(産経1面)。
まずは、そんなことがあるのかと思った。覚せい剤事犯では、仮に否認をしていたとしても、有罪判決となることはほぼ間違いなく、したがって、弁護の重点も執行猶予を獲得できるかどうかにある。そして、初犯の場合、執行猶予となる可能性は大である。
もちろん、執行猶予が出るだろうと見込まれても、入手できるあらゆる情状証拠は提出して、最善を尽くすことになる。
執行猶予が微妙である事件の場合、「保護観察付きでもいいから執行猶予を」という弁護活動や主張をすることもある。それは、記事にあるような「求める」というものではない。そこに違和感を覚えたのである。
もちろん、弁護人なりに、その元選手の更生を考えた挙句、保護観察を求めたのかもしれないので、そのやり方をうかつに批判することはできないと思う。
ただ、保護観察を弁護人から求めたという事例を見聞きしたことがないため驚いたのである。
元選手の場合、検察官の求刑が「2年6月」で判決も「2年6月」としている。
執行猶予が付くのかどうかギリギリの事件で判決を聞くとき、主文の言い渡しで、「被告人を懲役○年」と言われ、それが検察官求刑と同じであれば、次の「この判決確定の日から○年刑の執行を猶予する」との言い渡しを聞く前に、執行猶予だと分かる(現在では求刑どおりかつ実刑も散見されるので、すべてというわけにはいかなくなった)。
ところで、実刑の場合には求刑を下回る刑が言い渡されることが多いが、執行猶予の場合、なぜ求刑どおりなのだろうか?執行猶予中に再度の犯罪に及ぶことのないように、できるだけ重い刑(求刑目一杯の刑)とするのだろうか。
執行猶予中に何らかの罪を犯して、執行猶予が取り消された場合、執行猶予中の犯罪についての刑と執行猶予とされた刑を合算して服役することになる。つまり、その時点から実刑となるのだが、当初から実刑となった場合には、求刑を下回る刑での服役だから、下回った分だけ重いことになる。
それは当初からの実刑と均衡を欠くとして、求刑を下回る刑の言い渡しをして、執行猶予を付した裁判官を一度だけ目にしたことがある。
当時はなるほどと思ったのであるが、執行猶予中の犯罪は刑法上の再犯ではなく(刑法上の再犯は刑の執行終了後5年以内に罪を犯した場合をいう)、再犯加重することはできないが、執行猶予中にもかかわらず、罪を犯すというのは、かなり情状が悪いのであって、重く処罰すべきとの考えに立脚すれば、最も重い刑である求刑をもって言い渡すというのも理解できないわけではなく、現在でも求刑を下回る刑を言い渡すのがいいのか、求刑どおりがいいのか分からないままである。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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