時効

合法的な借金の踏み倒し!「時効の援用」を実行or阻止するには
借金があると、順調に返済出来ているうちは良いですが、返済が苦しくなってくると、遅延を繰り返すようになることがあります。そうして、ついには全く返済をしなくなり、放置してしまう人もいます。このようにして、長期間借金返済しない期間が続いた場合、借金に時効が成立する可能性があります。
借金が時効にかかると、返済が不要になって合法的に借金の踏み倒しができるようにも思えます。
そこで、今回は、合法的な借金踏み倒し方法とも言える、借金の消滅時効について解説します。
まずは、借金の消滅時効が成立するための条件を確認しておきましょう。
借金にも時効が成立します。この場合の時効は、消滅時効です。借金は、債権者(貸した人)から債務者(借りた人)に対する貸金返還請求権ですが、この貸金返還請求権は債権の一種として、消滅時効の対象になります。
債権に消滅時効が認められるのは、権利があるにもかかわらず長期間行使しない人は、保護する必要がないという考え方にもとづきます。
よって、消滅時効が完成するためには、借金返済を長期にわたって請求しておらず、また、借金の返済も長期にわたって受けていないことが条件として必要です。
すると、どのくらい長期間借金の返済をしていなければ、借金の時効が成立するのかが問題になります。
借金の消滅時効の期間は、借金の種類によって異なります。
借金には、一般の民事債権と商事債権という2種類があります。
一般の民事債権とは、通常の一般人同士の借金のことです。これに対し、商事債権とは、営利目的を持った商人の貸付金であったり、営利目的を持った借入であったりするケースです。
わかりやすいように、具体例を見てみましょう。
まず、消費者金融やクレジットカード会社、銀行などは、営利目的を持っているので「商人」になります。そこで、これらの貸金業者や金融機関から借りた借金は、商事債権です。
これに対して、一般の個人は商人ではないので、個人間の借金は、民事債権になります。
信用金庫や公庫、信用保証協会なども「商人」ではないと考えられているので、これらの機関からの借入や債務も民事債権になります。
ただし、個人事業者が事業目的で借り入れをするケースなどでは、借金の目的自体が商事性を持つので、信用金庫などからの借入でも商事債権となります。
そして、消滅時効の期間は、商事債権については5年、一般の民事債権については10年になります。
よって、消費者金融やクレジットカード、銀行カードローンなどの借金については、消滅時効の期間は5年です。これに対し、個人からの借金や信用金庫、公庫からの借金、信用保証協会への支払い債務などは、時効期間が10年となります。
借金の消滅時効が成立するためには、消費者金融やクレジットカード会社などからの借金の場合、最後に返済してから5年が経過していることが必要ですし、信用金庫や個人などからの借金の場合、最後に返済してから10年が経過していることが必要になります。
以上が、借金の消滅時効が成立するための条件です。
次に、時効援用の手続きと注意点についてご説明します。
借金は、最後に返済してから5年または10年が経過したら、消滅時効が完成するので返済の義務がなくなります。
しかし、これらの期間が経過したからと言って、何もしなくても当然に借金がなくなるわけではありません。
借金の消滅時効の効果を得るためには、時効の「援用」という手続きが必要になります。
時効の援用とは、「時効の利益を受けます」という意思表示のことです。
借金の時効期間が経過したら、援用をしてはじめて、借金がなくなるという効果が発生します。
そこで、援用の手続きの方法をご説明します。
法律上、時効の援用方法については、特に定まった規定はありません。よって、どのような方法でも有効であり、たとえば口頭で告げることでも一応は手続きが可能です。電話などで「時効を援用します」と言っても良いわけです。
しかし、実際にはそのような方法はおすすめできません。借金は、時効期間が経過した後でも、支払をしてしまうと、その後援用することができなくなり、借金全額の支払をしなければなりません。
そこで、援用をしたのかどうかや、いつ援用をしたのかが、大変重要な問題になります。
きちんと証拠が残る形で援用をしておかないと、後になって債権者から「援用通知は受けていない」などと言われて、時効の効果が得られなくなってしまうおそれもあります。
援用の通知を確実に行うためには、内容証明郵便という郵便によって、債権者に対して援用通知を送る方法が効果的です。内容証明郵便とは、郵便局と差出人の手元に、相手に送ったのと全く同じ内容の控えが残るタイプの郵便です。確定日付も入りますし、配達証明をつければ、いつ郵便が相手に届いたかも証明できます。
このように、内容証明郵便で時効援用通知を送っておけば、後になって債権者から「そのような郵便は受け取っていない」と言われるおそれがなくなり、確実に時効援用をして借金の時効の効果を得ることができます。借金を時効によって免れたい場合には、しっかり押さえておきましょう。
貸したお金が時効にならないためにできること借金の時効は、借りた側にとってのみならず、貸した側にとっても重大な問題になります。
お金を貸した場合、相手が長期にわたって返済をしていなければ、借金が時効にかかって請求ができなくなってしまう可能性があるからです。
そこで、借金の時効の完成(成立)を止めるための対処方法を知っておく必要があります。
借金は、最終の返済日から5年ないし10年の期間が経過したら消滅時効によって消滅します。この間、口頭や手紙などで督促をしても、時効の完成を止めることはできず、やはり上記の期間が経過したら借金の請求権はなくなってしまいます。
借金の時効を止めることを中断と言いますが、時効を中断させるには、裁判上の請求をするか、仮処分、仮差押などの手続きをするか、もしくは相手に借金の存在を承認させるか、一部でも支払いを受ける必要があります。
この中で、もっとも手っ取り早く確実なのが、裁判上の請求をする方法です。具体的には通常訴訟や少額訴訟などを利用します。
裁判上の請求をして、判決が出た場合には、その判決確定日から10年間時効期間が延長されます。この場合、もともとの債権が商事債権で時効期間が5年であったものでも、判決が確定したら時効期間が10年に延びます。そして、判決確定日から10年を経過する前に、再度裁判を起こして請求すれば、新しい判決確定日からさらに10年間時効が延長されます。
このように、約10年ごとの裁判を繰り返していけば、永遠に時効を完成させないようにすることができます。
実際、時効完成によって消費者金融などからの借金を免れようとしていても、時効完成の直前になって裁判をされて時効期間が10年延長されてしまうケースなどが多いです。
時効期間が間近に迫っていて、時効完成前に裁判することが難しい場合には、まずは内容証明郵便によって借金の返済請求書を送ったら、6ヶ月間時効の成立を遅らせることもできので、その間に裁判の準備をして訴訟を起こしたら、借金の時効を10年間延長出来ます。
他の方法としては、債務者に債務を承認させて、「払います」などの念書を書かせたり、実際に借金の一部の支払いを受けたりした場合にも時効が中断されます。
このように、借金の時効の成立は、止めることができますので、時効によって借金を免れるのは、難しいことが多いです。
今回は、合法的に借金を踏み倒す手段とも言える、借金の時効と援用手続き、時効を止めるための中断手続きについて解説しました。
借金を5年ないし10年間返済していない場合には、借金が時効によって消滅する可能性があります。時効が完成したら、放置するのではなく援用通知を送る必要があります。時効の援用は、必ず内容証明郵便で行いましょう。また、時効を止める中断という手続きもあります。たとえば、時効期間の進行中に裁判をすると、時効を中断させることができます。
今回の記事を参考にして、借金の時効制度について、正しく理解しておきましょう。
時効を得意としている弁護士
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商事債権における除斥期間経過時に時効の援用は不要ですか