債権譲渡通知書が届いたらどうしたらよい?債権譲渡についてわかりやすく解説
[投稿日] 2019年03月04日 [最終更新日] 2019年03月04日
借金返済を得意としている弁護士
大変です!今朝ポストにこんなものが…。
これは「債権譲渡通知書」ですね。
債権の所有者が変わったとあるのですが意味がわかりません。
これから一体何が起こるんでしょうか?
落ち着いてください、大丈夫ですよ。
通知書の意味や対処方法をお伝えしますので、まずはこれからご説明することを聞いてください。
「債権を譲渡した」というのはどういうことですか?
私の借金はどうなってしまったのですか?
債権譲渡は法律で定められた制度です。
まずはそこからご説明します。
1-1 債権譲渡とは
■債権の譲渡性大昔のローマ法の時代、物は自由に売り買いすることができました。
一方、債権は特定の人(貸主)と人(借主)との間だけで成立するものであることを理由に、売買(譲渡)することは許されていませんでした。
しかしながら、資本主義が発達するにつれ、債権も財産の一つであるという理解がされるようになり、原則として自由に譲渡できるようになりました。
■債権譲渡の仕組みと登場人物債権譲渡の仕組みについて、具体例で説明します。
Aが貸金業者Bからお金を借りているとします。
そしてBはCに債権の譲渡をしました。
この場合、それぞれは以下のように呼ばれます。
- A:債務者
- B:債権者(原債権者・譲渡人)
- C:新債権者(譲受人)
この場合、「債権譲渡」とは、BとCとの間の債権の売買契約のことです。
つまり債権譲渡について、債務者であるAは関与することがありません。
Aの残債が50万円ある場合、BはCに50万円の債権を例えば30万円で売却します。
すると今度はCがAに50万円の弁済を求めることになります。
なおC以外にも、DもBから債権の譲渡を受けたと言ってくるケースもあります。
この場合Aは、そもそもBは債権を譲渡したのかどうか、CとDのどちらに支払えばいいのかなどの問題がでてきます。
債権は自由に譲渡できるのが原則です。ですが例外として、債権が譲渡を許さない内容である場合には、譲渡することはできません。
以下のようなケースです。
例えばBが、画家であるAに肖像画を描いてもらう契約をしたとします。
この場合、債権者Bは債務者Aに対して「自己の肖像画を描いてもらう」という債権を有しています。
ですがこの債権をCに譲渡すると、その内容は全く異なるものになってしまいます。
そのため、債権を譲渡することはできないのです。
そのほかには債務者Aと債権者Bが、この債権について譲渡禁止特約をしていたケースがあげられます。
この場合、特約が付いていても譲渡をすることができますが、一定の要件の下で譲渡が否定されることがあります。
実際にはこの譲渡禁止特約は、企業が企業に対して有している債権が問題となる場面が多く、一般消費者と貸金業者との間で譲渡禁止特約がなされることはまずありません。
またそのほかに扶養を受ける権利や賃借権、恩給請求権など、民法や他の法律で譲渡が禁止されている債権もあります。
■債権譲渡の効果債権譲渡の効果として、原債権者が債務者に対して有していた債権は、同一性を失わずに、新債権者に移転します。
利息債権、担保物権、保証人に対する権利などの従たる権利も、当然に移転することになります。
また売買目的物と引き換えに代金を支払うといった同時履行の抗弁権など、各種の抗弁権も移転します。
1-2 なぜわざわざ債権譲渡をするのか?
■不良債権の処理一般消費者であるAが貸金業者や金融機関であるBから借入れをした場合、行われる債権譲渡のほとんどが「不良債権処理」を目的としています。
つまり債務者Aさんの弁済が滞っていることが前提となります。
一般的には新債権者Cは「債権回収会社(サービサー)」です。
Aに対する不良債権を有している原債権者Bは、不良債権を抱えることによって財務状況が悪化します。
そこでそれを切り離すために、債権譲渡を実施します。
そして債権回収会社Cは、残債の1~2割程度と言われている債権売買代金を上回る金銭を回収することによって、利益を得るのです。
例えば、BがAに対して持っている50万円の債権をCが5万円で買い取った場合、CはAから5万円以上回収できれば利益が出るというわけです。
債権者Bが債務者Aに対し、自らは債権の取立てを行わず、第三者であるCに取立てをさせるために、債権譲渡が行うことがあります。
やや悪いイメージですが、悪質な金融業者が暴力団に取立てを依頼するようなものであると考えてもらってよいでしょう。
■資金調達企業の再建を図るなどの場合には、そのための資金が必要となります。
そこで企業Bが有している債権または将来発生する債権を、新債権者Cに譲渡することがあります。
以前報道されたケースでは、保険診療を行った際に得られる社会保険診療報酬支払基金Aに対する診療報酬債権を、医師や病院であるBが第三者Cに譲渡するケースがあります。
■債務弁済債権者Bが債務者Aに対して売掛金などの債権を有している一方、債権者Bは第三者Cに対して買掛金債務を負担しているとします。
この場合、BのCに対する債務の弁済のために債権譲渡が行われることがあります。
■担保目的債権者Bが債務者Aに対して売掛金などの債権を有している一方、債権者Bは第三者Cに対して買掛金債務を負担しているとします。
この場合、BのCに対する債務を担保するために債権譲渡が行われることがあります。
第2章 債権譲渡通知書が届いたらどうしたらよい?債権譲渡の仕組みはわかりました。
でも通知書を受け取った私は一体どうしたらいいのですか?
本当に債権譲渡が行われたのかどうか、確認することが大事です。
そのためのポイントをご紹介します。
2-1 債権譲渡通知書とはどんなものか
債権譲渡通知書はどのようなものか、次のサンプルを見て確認しておきましょう。
A様
B株式会社
債権譲渡通知書
当社は貴殿に対して、下記に記載した貸金債権を有しておりますが、平成○年○月○日に、この貸金債権を後記C株式会社に譲渡いたしましたので、ここに通知をいたします。
今後のお支払やお問合わせなど貸金債権についての一切の件は、C株式会社宛になされたくお願い申し上げます。
貸金債権の表示
当社が貴殿に対して平成×年×月×日付金銭消費貸借契約に基づいて貸し付けた金100万円の貸金債権の平成○年○月○日現在の残債務○○円の貸金返還請求権
譲受人(新債権者)の表示
C株式会社(代表取締役○○)
住 所 東京都千代田区○○1丁目1番1号
電話番号 03-32○○-1111
fax 03-32○○-1112
振込口座 ○○銀行○○支店 C株式会社名義普通預金口座(○○○○○○)
担当者 鈴木一郎
確定日付印
平成○年○月○日
2-2 なぜ債権譲渡通知書が届いたのか
債務者Aは、原債権者Bと新債権者Cの間で行われる債権譲渡に関与していません。
そのため新債権者Cが何の前触れもなく「債権を譲り受けたので支払ってくれ」と言ってきても、債権譲渡の事実を知らない以上、簡単にそれを信用することはできません。
そこで民法第467条では債権譲渡の際、以下のいずれかの手続きが必要としています。
- 原債権者による債務者に対する通知(債権譲渡通知書)
- 債務者の承諾
これらがない場合には、たとえ債務者が債権譲渡の事実を知っていたとしても、債務者は原債権者だけを債権者として扱えばよいとしています。
いきなり新債権者が通知をしてきても、その新債権者Cが本当に債権を譲り受けたかどうかは債務者Aには分かりません。
詐欺の可能性もあるため、原債権者Bからの通知が必要だとしているのです。
2-3 債権譲渡通知書が届いたら確認すべきこと
■通知書の送付方法原債権者からの通知には通常、通知書がその日に作成されたことを公証人が証明する「確定日付」が付されています。
民法では、原債権者から債務者への通知を要求しています。
また同時に債務者以外の第三者への対抗要件として、確定日付のある通知を要求しています。
つまり債務者Aへの対応だけでいえば、確定日付は必要ではないのです。
ですが原債権者Bが債権をCのほかにDにも譲渡する、いわゆる「二重譲渡」をする可能性があります。
その場合、CとDのどちらが正当な新債権者となるかを決めるために、確定日付が必要になります。
そのため、通常は通知書には確定日付が付されているのです。
ただし新債権者を決める要素は、確定日付だけとは限りません。
例えばCに対して譲渡をしたとの通知の確定日付が「平成31年1月4日」、Dに対して譲渡をしたとの確定日付が「平成31年1月7日」となっていたとします。
ここでAが、Cに対しての譲渡通知書を「平成31年1月9日」、Dに対しての譲渡通知書を「平成31年1月8日」に受け取ったとします。
するとAは、先に届いた通知書に記載されているDを新債権者だと認識するでしょう。
そのため確定日付ではなく、それが債務者に到達した日付が先か後かで優劣が決められます。
つまりこの場合はDが新債権者となるのです。
このように誰が新債権者であるかは重要なため、通常、通知書は配達日時を確定することのできる配達証明郵便で郵送されてきます。
【はがきで届いた場合】通知書がはがきで届くことはまずありません。
葉書に確定日付を押すということは通常なく、また配達証明郵便でもないでしょう。
そのうえ葉書では、債務者の個人情報を保護することができません。
貸金業者などの金融機関が葉書での通知をすることは絶対にないため、はがきの通知書はほとんどの場合架空請求だと考えてください。
【特定記録郵便で届いた場合】特定記録郵便は確実な配達を目的としているものの、配達の記録はありません。
債務者だけに対する関係では特定記録郵便でも問題はないため、利用されることも稀にあります。
書留は特定郵便と異なり、配達記録が残されます。
そのため書留で通知書が送られてくることもありますが、あまり利用されてはいません。
実は、内容証明郵便で送られてくることがほとんどです。
内容証明郵便の場合、どういった内容の書面が郵送されたかを後日証明をすることができます。
そのため通常の金融機関は後日の紛争を防止するため、内容証明郵便を利用しています。
以上のようなことから架空請求などの詐欺であるかどうかは、次の3点を確認して判断しましょう。
- 通知書に確定日付があるか
- 配達証明郵便であったか
- 内容証明郵便であったか
これらがすべて揃っている場合には、詐欺の可能性はあまりないでしょう。
■記載されている債権(債務)は正しいか通知書では、譲渡する対象債権が特定されて記載されています。
そこで発信人が誰であるかと共に、特定された債権を確認しましょう。
まったく知らない債権者からだったり、知っている債権者からでも身に覚えのない債権(債務)だったりする可能性もあります。
自分が借りた人からの通知書で、その内容も間違いがないかを確認しましょう。
■譲受人は誰か何の問題もなく債権譲渡が行われている場合には、通知書に記載されているCが新債権者となります。
現代では一般消費者Aに対する債権が譲渡される場合、その譲渡先のほとんどは債権回収会社(サービサー)です。
そこで譲受人が債権回収会社であるかどうかを確認しましょう。
また債権回収会社を騙っている可能性もあるので、念のため、ネットなどでその譲受人がきちんとした債権回収会社かどうか確認しましょう。
さらに債権回収会社以外が譲受人となっている場合のうち、特に個人や会社組織ではない屋号が記載されている場合、また連絡先が固定電話ではなく携帯電話となっている場合には、架空請求であることが強く疑われます。
架空請求の犯人は金銭をだまし取るだけでなく、連絡してきた人の個人情報を取得しようとしています。安易に連絡をしないようにしましょう。
■何か対応は必要?本当に債権譲渡が行われ、これが有効である場合には、債務者Aの支払先はこれまでの原債権者Bから新債権者Cに変更となります。
そして抵当権といったような担保物権、保証債務も当然に新債権者に移転することになります。
その際、いくつか注意しなければいけないポイントがあります。
まず重要なのは保証債務です。
保証人のところには、原債権者Bから通知書が届くわけではありません。
そのため新債権者Cから履行を求められた場合、戸惑うことになります。
そこで債務者Aは保証人に対し、債権が譲渡されたこと、新債権者がCになったことを伝えておきましょう。
次に重要なのは、債務者Aが原債権者Bに主張できたことを新債権者Cにも主張できるということです。
例えば債務者Aが買主で原債権者Bが売主である場合、債務者Aは売買の目的物の受領と引き換えに売買代金を支払うという「同時履行の抗弁権」を有しています。
そのため原債権者Bから売買代金支払請求権の譲渡を受けた新債権者Cから、その履行を求められた場合、債務者Aは売買の目的物と引き換えに支払うと主張をすることができます。
また債務者Aが原債権者Bから借金をしている一方、Bに対して何らかの債権を有している場合、債務者Aは将来的にこれらを相殺しようと考えている場合があります。
そこで債権譲渡が行われて新債権者Cが債権を取得したとしても、債務者Aはそれぞれの債権の弁済期に関係なく、相殺して新債権者Cに対抗することができます。
いろいろな事項を確認しても、債務者としては本当に有効に債権譲渡がなされたのか、不安に思うでしょう。
もし「新債権者」と偽る人物や会社を信じて弁済をしてしまった場合、原債権者からも弁済請求がなされ、二重払いとなるおそれもあります。
そうなってしまった場合には、債権譲渡通知書や借金の事実が分かる書類を持参し、すぐに弁護士に相談しましょう。
こういったケースでは、法律相談として1時間1万円程度の費用で正しい債権譲渡通知書かどうかを弁護士が判断してくれます。
■おかしいと思ったらおかしいと思った場合には弁護士に相談する以外に、次のような方法もあります。
- 原債権者Bに直接確認をする
- 遅延損害金の発生を抑えるために供託をする
まずは原債権者Bに本当に債権譲渡をしたのか、新債権者はどのような会社なのかを確認してみましょう。
原債権者Bが債権譲渡したこと、譲渡先はCであることが確認できれば、債権譲渡は有効に行われたと判断してよいでしょう。
次に供託する方法もあります。
債権譲渡が有効に行われたかどうか分からなければ、債務者Aは原債権者Bに弁済すべきなのか、新債権者Cに弁済すべきなのかが判断できません。
また債権が二重譲渡されている場合、新債権者Cに弁済すべきなのか、新債権者Dに弁済すべきなのか分からないでしょう。
このような場合、本当の債権者を確認することができないことを理由に弁済金を供託することにより、弁済義務からは解放されます。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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