離婚裁判はするべき?メリットや期間、費用、流れまで徹底解説!
[投稿日] 2017年12月21日 [最終更新日] 2018年07月10日
調停・審判・裁判などを得意としている弁護士
大西 洋至 弁護士 京都府
二之宮義人法律事務所離婚の話し合いをしているのですが、なかなか思うように進みません…。
そうですね。離婚の話し合いはどうしても感情的になってしまいがちですし、そこに子供のことや金銭の問題が絡むと、こじれることが多いものです。
では、どうしたらいいのでしょうか?
話し合いで解決できないとなると、第三者に解決してもらうほかありません。
離婚裁判を検討する必要があるかもしれません。
でも、裁判なんてやったことがないし、ちょっとこわいです……。
離婚裁判まですべきなのか、躊躇する方も多いものです。
そこでここでは、そもそも離婚裁判とはどういうものなのかを含めた、離婚裁判をめぐるあらゆる問題について徹底的に解説をしていきます。
目次 |
---|
ではまずは、離婚裁判とはそもそもどんなものなのか、簡単に説明していきます。
1-1 離婚裁判とはどんなもの?
離婚は、夫婦の話し合いで決めることが原則です。
(話し合いで決める離婚のことを協議離婚といいます。)
しかし、夫婦間での話し合いで円満に離婚をすることができないということはよくあります。
また、未成年の子供がいる場合には、親権の奪い合いで争いとなることもよくあることです。
このような場合には、離婚にまつわる様々な事柄を、裁判所という公権力で決定してもらわなければなりません。
例えば、以下のような事柄です。
- そもそも離婚をするかどうか
- 親権者の指定
- 養育費の取り決め
- 財産分与の方法
- 慰謝料の決定
など
そこで、夫婦の一方が配偶者を被告として訴状を提出し、裁判を行うことになります。
家庭裁判所に訴状を提出し、そこで審理が行われることになります。
また、家庭裁判所で出された判決に不服があれば、その家庭裁判所を管轄する高等裁判所に、高等裁判所の判決に不服であれば最高裁判所に、それぞれ上訴することができます。
これらを離婚裁判といいます。
1-2 調停前置主義
ただし、いきなり家庭裁判所に離婚裁判を起こすことはできません。
まずは裁判の前に家庭裁判所に対して離婚調停を申し立て、調停を行う必要があります。
調停は、やはり裁判所で行われるものですが、調停委員を間に挟んで夫婦の話し合いを行うというものです。
そこで調停が成立しなかった場合に、初めて離婚裁判を起こすことができるのが原則です。
これを調停前置主義といいます。
夫婦の離婚というきわめてプライベートな事柄については、できる限り公権力の発動は抑制すべきだと考えられています。
そのため、まずは夫婦の話し合いである調停で離婚問題を解決すべきだとされているからです。
ただし、夫婦の話し合いが客観的に無理な場合、例えば相手方の所在が不明であるとか、相手方が精神的障害を負っているというような場合には、調停を経ることなく離婚裁判を提起することが例外的にできます。
離婚調停について、くわしくはこちらをご覧ください。
1-3 法定離婚原因
離婚裁判を提起するに当たって、注意しなければならないのが法定離婚原因です。
裁判で離婚の判決を受けるためには、民法770条1項で決まっている離婚原因に該当している必要があります。
これは、前述のように、離婚はプライベートな問題でもあるので、明確な離婚原因がないにもかかわらず、裁判所が私的領域に介入して離婚を決めてしまうのは妥当性を欠くと考えられているためです。
なお、夫婦の話し合いで離婚をする協議離婚や調停離婚については、法定離婚原因は不要です。
法定離婚原因について、くわしくはこちらをご覧ください。
ここでは、個々の法定離婚原因について簡単に説明をしておきます。
不貞行為夫婦は、相互に貞操義務を負っています。
この貞操義務に反する行為が不貞行為です。
簡単に言うと、「配偶者以外の異性と性的関係を持つこと」です。
夫婦は、同居をし、相互に扶助・協力をするという義務を負っています。
夫婦の共同生活を維持できなくなることを分かっていながら、これらの義務に反することを悪意の遺棄といいます。
例えば、「相手を置き去りにして家を出る」「相手方を家から追い出す」「生活費を渡さない」などの行為です。
なお、悪意とは「正当な理由がない」ことをいいます。
関係調整のための別居は正当な理由があり、悪意の遺棄にはあたりません。
配偶者が3年以上生死不明である場合には、その婚姻生活は破綻しているとされます。
なお「生存は確認されているが、所在不明」という場合は含みません。
また、その「3年」は、一般的には最後に音信があった時(生存が確認された最後の時)からになります。
夫婦間には精神的結合が必要であるとされています。
そこで、相手方が回復の見込みのない強度の精神病に罹患している場合には、精神的結合を欠いており婚姻関係は破綻しているとされて、離婚原因とされています。
ただ、罹患している相手方への配慮も必要です。
これまで誠実に看病をしてきたことや、離婚後の看病やその費用をどうするのかといった離婚後の具体的方策が決まっていることが要求されます。
最高裁判例も「病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込みのついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当」としています。
これまでの4つとは異なり、非常にあいまいな表現となっています。
つまり、「婚姻関係が回復し難いほどに破綻している」と認定された場合には、離婚ができるということを意味しています。
よくある理由として、性格の不一致があります。
ただし、性格の不一致はそれ自体で離婚原因となるものではないので、さまざまな要素を検討する必要が出てきます。
・別居をしている場合にはその期間
・夫婦の会話の有無や程度
・未成熟子の有無
などなど
こうしたことを考慮に入れ、夫婦関係が回復の見込みのない程度まで破綻しているかを検討することになります。
さらに、DV(暴言やネグレクトも含みます)は婚姻を継続し難い重大な事由になることが多いものです。
また、配偶者が宗教活動にのめり込んで、夫婦としての協力義務を顧みず、婚姻生活が破綻した場合もこれに当たります。
これまで説明をしてきた法定離婚原因があると認定された場合であっても、裁判所は、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却できるとされています。
第2章 離婚裁判のメリットとデメリット離婚裁判についてはわかりましたが、結局、やったほうがいいのでしょうか?
やるべきかどうかは個々の判断になりますが、離婚裁判にはどんなメリットがあり、どんなリスクがあるのかを説明していきましょう。
2-1 メリット
離婚裁判をすることで、次のようなメリットがあります。
強制的に離婚できる離婚についての認容判決が出された場合、相手方が離婚を拒否していたとしても、強制的に離婚をすることができます。
裁判を経ても、離婚届の提出は必要なのですが、この離婚届に相手方配偶者の署名捺印は不要です。
まさに判決に基づいて、一方的に離婚をすることができます。
争いになったときは、お互いが正しいと思って主張しています。ですから、どちらかが譲ったとしても、なんとなく後味の悪さは残ります。
裁判であれば、当事者が提出した証拠に基づいて、裁判所が公平な立場で法的な判断を下すので、本人たちとしても納得がしやすいものです。
強制力話し合いではなく、判決で決まるものなので強制力があります。
また養育費、財産分与、慰謝料といった金銭的要求について判決が出された場合、相手方がそれらの支払いをしなければ、判決に基づいて強制執行ができます。
2-2 デメリット
一方で、次のようなデメリットやリスクを負うことになります。
費用と時間離婚裁判で決着がつくまでには、調停のための費用、裁判のための費用がかかります。
また、弁護士に依頼をするとなればその費用もかかってきます。
さらに、時間がかかることもデメリットの一つです。
まず、調停でおおよそ半年ほどは必要になります(短くて1か月、長くて1年以上)。
さらに、裁判で1~2年はかかります(短くて半年、長引けば3年程度)。
離婚については、夫婦のプライベートな部分が大きくかかわってきます。
ところが、離婚裁判は公開の法廷で行われます。
そのため夫婦とまったく無関係な人でも裁判を傍聴することができます。
プライベートな問題が、第三者に知られてしまうこと自体がデメリットですし、第三者の面前で裁判が行われるという精神的苦痛もあります。
さらに、本人尋問ともなれば、第三者の面前で尋問に答えなければなりません。
離婚裁判で離婚が認容されるためには、前に説明をした法定離婚原因が必要です。
そこで、離婚を求めて、離婚裁判を起こした場合、離婚を求めている人は、離婚原因があることを主張するだけでは足りず、自分の主張する離婚原因が存在することを証拠で証明しなければなりません。
ですから、証拠が不十分な場合には、非常に困難な訴訟活動を強いられることになります。
自分の意に沿わない内容だったとしても、判決が確定すれば、それに従わなければなりません。
訴訟を起こしたからと言って、自分に有利な判決内容が下るとは限らないということです。
離婚を求めて離婚が認容される判決が出された場合、それに基づいて離婚届を提出すると、戸籍には裁判離婚だった旨が記載されます。
協議離婚との記載の方が体裁がよいと考えている人であれば、その記載に抵抗があるかもしれません。
2-3 離婚裁判をした方がよい場合
このように、メリットとデメリットがそれぞれあります。
では、どんな場合は、デメリットに目をつぶってでも裁判を起こすべきなのでしょうか?
これはそれぞれの事情によります。
離婚に当たってどうしてもゆずれないことがあり、その決着をつけなければならないのであれば、裁判をするべきでしょう。
ただし、裁判となれば判決に従わなければなりません。
そのため、条件が自分に不利なのであれば、裁判ではなく話し合いで決めることをお勧めします。
例えば、相手方が離婚に反対しているけれども、何が何でも離婚をしたいと決意しており、離婚原因を裏付ける客観的な証拠もあるような場合なら、離婚裁判をすべきだといえるでしょう。
また、離婚をすること自体に争いはないものの、子供の親権をめぐって争いがあるような場合で、離婚裁判を考えている人が子供の面倒を見ている(子供を連れて別居しているような場合)のであれば、親権を獲得できる確率がかなり高いので、やはり離婚裁判をすべきといえます。
さらに、慰謝料の金額や財産分与の方法で争いがある場合には、後で説明をするように、弁護士を依頼することによって、より多くの金額を手にすることも十分に可能ですから、離婚裁判をした方が良い方向に傾きます。
さらに調停を経て調停委員が提示した調停案について、あなたがそれでよいと考えているのに、相手方が応諾しなかったような場合には、離婚裁判をすべき場合に当たることが多いでしょう。(離婚裁判は、調停案に近い判決が出される可能性が高いため。)
2-4 こういう場合はよく考えよう
まだ夫婦間での話し合いの余地があるような場合には離婚裁判(またその前提としての調停)についても、よく考えて行動すべきでしょう。
ましてや、協議離婚に向けて弁護士に相談をしている場合には、弁護士を交えて話し合いをすることが先決で、調停や裁判ということは次善の策ということになります。
また、財産分与額や慰謝料額に不満があり、それが離婚のネックになっているという場合には、譲歩できる余地がないかどうかを自問自答して考えてください。
この場合、離婚自体に争いがなく、譲歩できるのであれば譲歩して協議離婚とすることができます。
もちろん、裁判をすれば希望の金額を得られる可能性はありますが、上記のデメリットとどちらを取るべきか、という選択になります。
さらに、離婚調停で調停委員から示された条件をあなたが受諾できないで調停が不成立となった場合にも、直ちに離婚裁判とするのではなく、もう一度よく考えてみましょう。
経験豊かな調停委員が提案した調停案は、実際に裁判となった場合も、判決に近いものであることがよくあります。あなた自身が調停案まで譲歩できるかどうかを考え直してみることも大事です。
なお、離婚裁判となった場合には法定離婚原因を主張し、それを裏付ける確たる証拠が必要です。
自分が収集した証拠が裁判所を納得させる程度の証明力があるのかどうかを検討し、それに不足があるようなときには、すぐに離婚裁判とするのではなく、新たな証拠を入手してから離婚裁判とすべきでしょう。
この場合、裁判所を納得させるような証拠かどうかの判断は、専門家である弁護士に相談したほうがよいでしょう。
2-5 裁判をしない場合の解決方法
別居する「話し合いが平行線だけど、裁判に進むのも…」。というときには、いったん別居をすることをお勧めします。
冷却期間を置いて、ある程度双方の頭が冷えたところで、話し合いを再開するという方法です。
別居期間中に弁護士に依頼をして、相手方と話し合ってもらうことによって、無事に協議離婚となったというケースも少なくありません。
なお、親権を獲得したい場合には、子供を置いて別居すると不利になるので、注意が必要です。
さて、別居をしてみたものの、話し合いが進まないということもよくあります。
この場合、裁判まではせずとも、調停はすべきです。そして、譲歩できる範囲での調停案が提示されたならば、それを受諾して調停離婚とすることもできます。
離婚については合意をしているけれども、財産分与や慰謝料額で折り合わないということもあります。
お勧めはできませんが、「財産分与や慰謝料を後回しにして、まずは離婚をする」ということもあり得ることです。
ただ、離婚後に相手方が財産を隠す可能性を否定できません。
どうしても離婚を先行させたい場合には、その時点でどのような財産があるのかをしっかりと把握して、その証拠(例えば銀行通帳のコピーなど)を確保しておきましょう。
裁判を進めたほうがいいような気がしてきました。
でも、裁判にはどれくらい時間がかかるものなのでしょうか?
やはり、裁判となるとそれなりに時間がかかるものです。
3-1 裁判期間
一口に離婚裁判と言っても、争いの内容はさまざまです。
- 離婚するかどうか
- 離婚原因の有無、内容
- 親権をどちらが持つか
- 財産分与
- 慰謝料
- 養育費
などなど・・・。
争いの数、その内容によって裁判期間は異なってきます。
ただ、一般的にはおおよそ1年ほどで家庭裁判所での判決が出されると考えてよいでしょう(争点が少なければもっと短くなります)。
また、高等裁判所や最高裁判所に上訴をすれば、さらに1年くらいはかかると考えておいてください。
3-2 できるだけ早く終わらせるため
周到な事前準備裁判は、大ざっぱにいえば、①それぞれの主張・反論、②証拠提出・証拠調べという段階を踏んで進んでいきます。
そして、裁判所が「それぞれの主張も証拠も把握して、判断できる」という段階になれば、裁判も終わりに近づいているということになります。
つまり、裁判所に対して、早期に内容を把握させられれば、それだけ早く裁判が終わるということです。
そのためには、裁判前に周到な準備をしておく必要があります。
例えば、夫が不貞行為を否定したまま離婚裁判になったとします。
このような場合には、訴状段階で、詳細にかつ具体的に主張し(いつ、どこで、誰と何をしたかなど)、さらにそれを裏付ける客観的証拠(ホテルに出入している写真や旅行の記録など)も訴状と同時に提出しましょう。
このような事前準備をしておけば、訴状と証拠を目にした裁判所は、それだけで、夫に不貞行為がある、したがって離婚を認容しようとの心証を持つはずです。
このことは、親権をめぐる争いでもそうです。
いかに自分が親権者としてふさわしいのかについて、「これまで」「現在」「将来」の監護状況予想を詳細にかつ具体的に主張しましょう。
そして、例えばあなたの実家も子供の監護に協力をしてくれるというのであれば、実家の両親の陳述書(実家で孫の面倒を見ること、どのように見るのかを詳細に記述した父母の書面)も訴状と同時に証拠として提出しましょう。
家庭裁判所では、判決を出す前に、双方に和解案を提示することが一般的です。
裁判所の提示する和解案は、判決となった場合と比較してさほどかけ離れた内容となっていません。
つまり、裁判所の提示する和解案で、裁判所が出すであろう判決内容を予測することができます。
そこで、判決に至るまでの期間を考えると、和解案を受諾することも十分に検討しなければなりません。
本人尋問が終了していないのであれば、判決まではさらに3~4か月、本人尋問が終了していても、最終口頭弁論期日を入れると、2~3か月はかかります。
とすると、裁判所の提示する和解案に対して、譲れるところがあるかどうかを検討して、これに応ずることも得策であるといえます。
ただし、相手方が和解案に応じない場合には、判決を待つことになります。
控訴しない家庭裁判所(第1審)で離婚裁判の判決がなされた後、内容に不服があれば高等裁判所に控訴できます。
ただし控訴をした場合、家庭裁判所の判決が出されてから、高等裁判所の判決が出されるまでは、最短でもおおよそ3か月程はかかると思っていてください。
争点が複雑な場合にはそれ以上の期間が必要となります。
ですから、離婚裁判をできる限り早く終了させるためには、控訴をしないことも検討しなければなりません。
一般的に、よほど新しい争点がない限りは、高等裁判所で家庭裁判所と大幅に異なった判決を出してくれる可能性は低いものです。
いたずらに期間を長引かせるよりも、判決内容で許容するという考え方もあります。もっとも、相手方が判決に不服であるとして控訴した場合には、それに付き合わなくてはなりません。
第4章 離婚裁判にかかる費用では、離婚裁判にはどれくらい費用がかかるのでしょうか?
4-1 基本的な費用
裁判を行うために最低限必要な費用は、印紙代(手数料)と切手代です。
調停と裁判で、それぞれ見ていきましょう。
裁判に先んじてまずは調停を行う必要がありますが、調停申し立ての場合、印紙代として「1,200円」が必要です。
また、切手代は、各家庭裁判所によって相違がありますので、管轄の家庭裁判所に問い合わせをしてください。
次に、調停が不成立となって、離婚裁判を起こす場合です。
印紙代は、離婚のみを求めるときは「1万3,000円」。
その他に慰謝料を求めるときは、その額から算出された印紙代を加算することになります。
請求額が160万円以下の場合は「1万3,000円」で、これを超える場合は、裁判所の手数料早見表の「訴えの提起」の列を参照してください。
例えば、慰謝料などで500万円の請求をしている場合には、印紙代は3万円となります。
また、財産分与も求める場合には900円、養育費の支払いを求める場合には900円と、それぞれ加算されます。
ただし、調停が不成立となって裁判をする場合、調停で支払った印紙代が控除されます。
つまり、離婚だけを求めた裁判の場合印紙代は1万3,000円でしたが、調停で納付した印紙代1,200円が控除されて1万1,800円となります。
家庭裁判所が発行する調停不成立証明書をもらい、不成立の日から2週間以内に離婚訴訟を提起することで控除が可能です。
次に、離婚裁判の切手代は、各家庭裁判所で異なりますので、管轄の家庭裁判所に問合せをしてください(東京家庭裁判所の場合は6,400円です)。
さらに、戸籍謄本を添付しますので、その取得費用として450円が必要です。
4-2 弁護士費用
離婚裁判で弁護士に相談をし、また依頼する場合には弁護士費用がかかります。
弁護士費用は「相談料」「着手金」「成功報酬」に分類されます。それらの費用は、弁護士によって異なっていますが、一般的な相場に基づく費用を説明します。
相談料は、30分5,000円、その後30分ごとに5,000円追加という弁護士が多いようです。
もっとも、今では初回の相談料は無料としている弁護士も数多くいますし、依頼を前提とする相談であれば無料とされているのが通常です。
着手金とは、裁判や交渉の結果に関わらず、必ず支払うことになる費用です。
離婚裁判を依頼する場合、証拠入手、訴状作成、準備書面作成、訴訟追行をすることから、着手金を支払うことになるのが一般的です。
ただし、着手金は無料で、次に説明をする成功報酬だけでよいとする弁護士もいます。(その分、成功報酬が高額になることもあります。)
着手金は、依頼内容によって異なります。
つまり、離婚だけの裁判か、財産分与請求もするのか、親権獲得・養育費の請求もするのか、慰謝料請求もするのかなどです。
離婚についての争い | 20万円~40万円 |
---|---|
親権獲得・養育費請求 | +5万円~10万円 |
財産分与や慰謝料の請求 | +請求額の1割程度または5万円~10万円 |
成功報酬は、依頼された事件の成功に対する対価です
【よくある成功報酬例】
離婚についての争い | 着手金と同程度 |
---|---|
親権獲得・養育費請求 | 獲得した養育費の1年分の1割程度 |
財産分与や慰謝料の請求 | 獲得した金額の1割程度 |
金額は決して安くありませんし、弁護士によって金額は異なります。
実際に相談してよく説明を受けて、納得したうえで依頼するようにしましょう。
では、離婚裁判はどんな流れで進むのでしょうか?時系列順に追っていきましょう。
5-1 離婚調停
これまで説明をしてきたように、いきなりの離婚裁判をすることはできず、まずは調停を経ることが原則です。
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、調停(夫婦関係調整の調停)申立書を提出します。
通常、申立書には「結婚から現在までの夫婦の結婚生活状況」や「どのような離婚原因があるのか」を記載することになります。
申立書には申立人の住所も記載しますが、申立書自体は相手方に送られません。
ですが住所を教えたくない場合は、家庭裁判所に住所を秘匿してもらいたいと依頼しておくようにしましょう。
申立書を受理した家庭裁判所は、申立人と第1回の調停期日の日時を調整して決定し、相手方に対して期日呼出状を送付します。
第1回の調停期日は、一般的には1か月から2か月ほど先の日程になります。
その後、何回か調停を重ねても調停が成立しなければ、調停不成立となります。
そうしたら、不成立証明書を入手しておきましょう。
5-2 訴状提出
離婚裁判の管轄は、調停をした裁判所と同様に、被告(訴えられたほう)の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
そこに、訴状を提出することによって離婚訴訟の提起となります。離婚訴訟の提起には訴状を提出するだけでよいのですが、迅速に裁判を進めるためには、入手してある証拠もすべて提出するようにしましょう。(この場合、証拠説明書も付けることになります。)
訴状等は、裁判所用と被告用の2部を提出します。
家庭裁判所の受付窓口で訴状を出します。
なお、訴状等は自分用の控えをとっておきましょう。特に証拠の原本は大事に保管しておいてください。
5-3 裁判所からの呼出
訴状はまず、形式的な不備がないのかの審査を受けます。
問題がなく正式に受理されたら、その数日後に裁判所から原告(訴えた側)に対して第1回口頭弁論期日日時の調整のための連絡がきます。
原告と裁判所で調整し、日時が決められます。
おおよそ訴状を提出した1か月から2か月先の日で、さらに第1回口頭弁論期日は10時と指定されることがほとんどです。
この日時が決まったのであれば、原告は、その日時に裁判所に出頭しますという意味の書面(期日受書)を裁判所に提出します(ファックスでも可)。
第1回口頭弁論期日が決まったら、裁判所から被告に対して、訴状、証拠などの一式書類と共に、「第1回口頭弁論期日呼出状兼答弁書催告状」という書類が送達されます。
一式書類を受け取った被告は、答弁書催告状に記載されている日までの間に、答弁書(訴状に対する認否や主張・反論)を提出することになります。
ただ、第1回口頭弁論の日時は、被告の予定とは無関係に決定されています。そのためその日時にどうしても裁判所に出頭できない被告もいます。
そこで、第1回口頭弁論期日に限って、答弁書を提出しておくことで欠席ができます。
この場合、裁判所と連絡をとって、第2回口頭弁論期日の候補日時をいくつか挙げておきましょう。
5-4 第1回目の口頭弁論
第1回口頭弁論期日においては、「訴状の陳述」、「答弁書の陳述」、既に出されている証拠があればその「証拠調べ」が行われます。
証拠調べは、原本のあるものは原本を持参し、裁判所と相手方に見せることになります。
第1回口頭弁論は、おおよそ10分ほどで終了します。
答弁や証拠に不明な点がある場合には、裁判所から「不明点を明らかにする準備書面の作成の指示」や「答弁書に対する原告の反論準備書面の作成の指示」が出て、提出期限及び次回期日(おおよそ1か月後)の告知がなされます。
5-5 第2回目以降の口頭弁論
第2回目以降の口頭弁論は、月1回程度の割合で開かれ、それぞれの「主張準備書面の提出」「反論準備書面の提出」「証拠の提出」というように進んでいきます。
それぞれの主張が出尽くし、これ以上の証拠もないという段階で口頭弁論は終了します。
ケースによって違いますが、離婚裁判ではだいたい3~4回ほどになることが多いようです。
5-6 証人尋問・本人尋問
主張や証拠が出尽くしたら、証拠調べとなります。
書面としての証拠はすでに調べているので、証人と本人の尋問となります。
特殊な場合を除き、午後の3時間ほどで証人、本人尋問を終了させます。
証人尋問は、次の順番で行われます。
- 証人を請求した側が主尋問
- 相手方側が反対尋問
- 再び主尋問
- 再び反対尋問
- 裁判所からの尋問
本人尋問は、通常は①原告本人尋問、②被告本人尋問の順で行われます。
原告本人には原告代理人弁護士が主尋問(弁護士がいない場合には裁判所が主尋問)、被告側の反対尋問となり、被告本人にはその逆となります。
5-7 裁判の終了・判決
原告・被告の本人尋問終了後の期日では、最終の主張書面を提出することになります。
これは、最後の主張であって、これまでの主張の整理、証拠調べを踏まえた争点での主張を行います。
この最終準備書面が陳述されたら、裁判所は判決期日を指定して、実質的な裁判は終了します。
なお、判決期日に、裁判所に出頭する必要はありません。(もちろん出頭してもかまいません。)
和解・認諾判決以外でも離婚裁判が終了することがあります。
それは、「和解離婚」と「認諾離婚」です。いずれも裁判手続きの中で行われます。
夫婦の双方が譲歩して、判決が出る前に和解で離婚を成立させるものです。
裁判所は、裁判の流れの中で和解案を提示し、原告・被告に和解を打診します。
例えば以下のようなタイミングです。
- 証人尋問・本人尋問に入る前
- 証人尋問後本人尋問前
- 証人尋問・本人尋問後
- 最終準備書面提出後判決前など
これを受け入れれば、和解離婚となります。
成立した場合には和解調書謄本を持参して、10日以内に離婚届を提出することになります。
(10日を過ぎても離婚は無効になりません。5万円以下の過料(罰金)制裁があるだけです。)
夫婦の一方が相手方の主張を全面的に受け入れることによって成立する離婚のことです。
和解離婚と異なるのは、「双方」の譲歩がないことです。
内容について争って裁判まで行きついているので、通常はあまり成立することはなく、離婚成立のみを訴えている場合に一方が受け入れることでこの認諾離婚になることがあります。
成立した場合には認諾調書謄本を持参して、10日以内に離婚届を提出することになります。
(和解離婚と同様に、10日を過ぎても離婚は無効になりません。5万円以下の過料(罰金)制裁があるだけです。)
5-8 判決後の流れ
判決に不服がない場合家庭裁判所が下した判決に双方共に不服がなければ、家庭裁判所での判決が確定します。
そこで、判決書謄本と判決確定証明書を添付して、判決確定の日から10日以内に離婚届を提出します。
(10日を過ぎても離婚は無効になりません。5万円以下の過料(罰金)制裁があるだけです。)
また、慰謝料、財産分与、養育費といった金銭的なものも含まれている判決の場合、判決内容にしたがって、その履行をしていくことになります。
もし、相手方が履行をしない場合には、判決に基づいて相手方の財産に強制執行をすることになります。
(この手続きを自分自身でやることは難しいので、弁護士に相談をすべきでしょう。)
家庭裁判所の下した判決に不服がある場合には、高等裁判所に控訴ができます。
控訴期間は判決から2週間です。
相手方が控訴をした場合、高等裁判所での口頭弁論終結までの間であれば、付帯控訴(自分としても、判決の不服な点について控訴すること)ができます。
なお、付帯控訴は、相手方が控訴を取り下げた場合には消滅します。
高等裁判所への控訴は、家庭裁判所の判決のどこに不服があり、どこに認定の間違いがあるのかを記載した控訴状を提出することで始まります。
その後に高等裁判所での控訴審が開かれるまでの手続きは、第一審の手続きと同様です。
よほどのことがない限り、控訴審は第1回口頭弁論期日の次が判決期日となります。
第6章 離婚裁判を有利に進めるコツ
裁判をしたら、判決に従わなければならないと思うと、緊張します……。
有利に進めるコツなどはあるのでしょうか?
「こうすれば大丈夫!」というものはありませんが、少しでも有利に進めるためのコツは2つあります。
6-1 証拠はしっかり集めておく
離婚を求めた離婚裁判で勝訴をするためには、法定離婚原因が存在することが必要となります。
これを裁判所に認定してもらうためにも、証拠をしっかりと集めておきましょう。
これは、勝訴だけでなく、早期の判決や有利な条件での和解にもつながります。
不貞行為の証拠であれば、ホテルに出入りする写真や性的関係をにおわせるメールのやりとり、二人で旅行をした予約の記録や領収書なども証拠になります。
また、DVでは病院の診断結果や、暴行後の写真などが証拠になります。
そのほか、証拠になるものを挙げていきます。
日記日記は重要な証拠となります。
特に、バインダー方式でない日記がよいでしょう(バインダーだと差し替えができるので信憑性が低くなる)。
日記は客観的ではないので証拠としての効力は小さく思えますが、詳細かつ具体的な日記であれば、それなりに信用性はあります。
相手方との関係だけでなく、その他の日常の出来事も詳細に記載していることにで、内容の信用性が高まります。
日常的につけていることが望ましいですが、特に離婚を考え始めたら日記をつけるようにするのもよいでしょう。
話し合いの録音さらに、夫婦で離婚の話し合いをするときの会話を秘密録音しておくこともいいでしょう。
不貞行為や暴力を認めて謝罪していれば、これも証拠になります。
また、二人の関係性などを印象付ける証拠にもなり得ます。
6-2 離婚問題を扱っている弁護士に依頼する離婚裁判は、本人が訴状を書いて訴訟提起をし、訴訟追行することもできます。
しかし、これにはかなりの困難が伴います。また、離婚裁判を有利に進めるためにも、離婚裁判となったら、離婚問題を扱っている弁護士に依頼すべきでしょう。
弁護士に依頼することによって、次のようなメリットがあります。
適切な主張・訴訟追行離婚裁判は、訴状を提出することから始まります。
しかし、どんなことを書くべきかの判断は一般の方ではわかりにくいものです。
弁護士に依頼すれば、これまでの結婚生活状況を聞き取って、裁判所を説得できる訴状を仕上げてくれます。
そして、主張書面については、その提出期限が裁判所から指定されることが多いのですが、一般の方が日常生活をこなしながら、適切な書面を期限までに作成することは容易なことではありません。
弁護士であれば、裁判所の意向にしたがった適切な書面を作成し、訴訟追行をしてくれます。
裁判期間の短縮離婚裁判に限らず、裁判をしていることは肉体的にも精神的にかなりの負担となりますから、早期に裁判を終了させることも重要です。
弁護士に依頼をすれば、弁護士による適切な主張、適切な証拠の提出によって、的外れな主張をすることによる裁判の長期化を避けることができます。
訴状を作成するのも容易ではないのですが、裁判は書面主義です。裁判を進めるための書面を作成することも容易ではありませんし、時間的にも精神的にも大きな負担がかかります。
しかし、弁護士に依頼をすれば、それらのすべての手間を省くことができます。
指定された期日までの裁判の書面作成や、適切な証拠の準備は、誰もが不慣れな作業なので、ストレスがたまります。
また、相手方の主張に対する反論書面を作成するためには、相手方の主張書面をていねいに読んでいかなければなりません。
しかし、離婚裁判においては、あなたを誹謗中傷するような書面もあります。これらを読むことだけでもストレスがたまります。
さらに、離婚裁判では、夫婦間の赤裸々な事実についても本人尋問で答えなければならず、プレッシャーも大きいものです。
相手方が虚偽の主張をしてきて、困惑するようなこともあります。
しかし、弁護士がついていれば事前に十分な準備をし、相手方の虚偽の主張にも反対尋問を適切に行ってくれますから、感じるストレスは大幅に減少します。
裁判離婚では、法定離婚原因の存在を客観的に裏付ける証拠が必要となります。
弁護士は、どのような証拠が必要で、どのような方法でこれを入手することができるかを熟知しています。客観的な適切な証拠の入手が、勝訴敗訴を分けるといっても過言ではありません。
自分自身で訴訟を行う場合、実際には法定離婚原因がありながら、ただ証拠で立証できなかっただけで敗訴となる可能性もあります。
しかし、弁護士に依頼をすればそのようなリスクを最小限にできます。
財産分与については、まず共有財産について適切な評価をしなければなりません。
預貯金や現金、さらに市場相場のある有価証券などについては、その評価額が客観的に明らかですが、不動産、車、市場相場のない有価証券については、その評価が困難です。
弁護士に依頼をすれば、適切な評価額を導き出すことができます。
そして、その評価額に基づいて、基本的には半々ですが、それでも、あなたから財産形成に至る過程を細かく聞き取って、あなたの財産形成に対する寄与度を算出してくれます。
原則半々の分与がそれ以上になるという可能性も十分にあります。
相手方行為の悪質性や、あなたや子供に与えた影響など様々な有利な状況を検討して、慰謝料を増額させることができる可能性があります。
親権の獲得・適切な養育費の獲得親権者の争いはシビアなものとなります。そのため、争いになる前から周到な準備が必要になってきます。
離婚前から弁護士に依頼をしておけば、「どのような行動をしていればよいのか」「どのようなことに留意をして生活をすべきなのか」などについて、親権を獲得するためのさまざまなアドバイスを受けられます。
そして、離婚裁判になったとしても、親権獲得のために最大限の活動をしてくれるでしょう。
さらに、親権獲得に伴って重要なのは、養育費の請求です。
少しでも多くの養育費を獲得するために、子供やあなたをめぐるいろいろな状況を説得的に主張していくことができます。
また、養育費の具体的な定めについても、将来に禍根を残さないようにしてもらえます。
弁護士が対応する領域は非常に広範囲なため、弁護士にも得意分野とそうでもない分野があります。
そのため、離婚裁判の相談をするのであれば、離婚問題を取り扱っている弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
直接打ち合わせをしたり相談をしたりする機会があることを考慮すると、自宅や職場からアクセスしやすい事務所に所属している弁護士のほうがよいでしょう。
離婚・男女問題を扱う弁護士を検索し、最寄りの地域から、合いそうな弁護士をピックアップして、まずは相談をしてみてください。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
問題は解決しましたか?
弁護士を検索して問い合わせる
弁護士Q&Aに質問を投稿する
調停・審判・裁判などを得意としている弁護士
トップへ
調停・審判・裁判など2018年04月02日
離婚するためには、いろいろな方法があります。 まず、 ・お互いが離婚に合意...
亀石 倫子 弁護士
法律事務所エクラうめだ調停・審判・裁判など2017年12月16日
協議離婚とは? 当事者双方の合意で成立する離婚です。結婚する際には、調停を...
宇都宮 隆展 弁護士
くにたち法律事務所調停・審判・裁判など2017年12月16日
離婚する場合に、弁護士は何をしてくれるの? この質問には、何度も答えて来ま...
齋藤 健博 弁護士
銀座さいとう法律事務所