離婚調停が不成立となったらどうする?取るべき手段と注意点
[投稿日] 2018年01月12日 [最終更新日] 2018年07月10日
調停・審判・裁判などを得意としている弁護士
離婚に向けて夫婦間で話し合っても決着がつかない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
ですがこの調停も、成立するとは限りません。不成立となることもあり得るのです。
ええー……。調停って、裁判所でやるんですよね?
慣れない裁判所に行ってせっかく調停をしたのに不成立になったらどうしたらいいんでしょうか…‥?
そうですね。そんな風に不安に感じる方は少なくないでしょう。
では、調停はどんな風に成立・不成立となり、不成立となった場合にはどうすればよいのかなどを説明していきましょう。
目次 |
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まずは、離婚調停の基本をおさらいしましょう。
1-1 離婚調停とは
離婚調停は、裁判官を含む調停委員3名が、夫婦双方の言い分を聞いて、その夫婦にとって最も良いと考えられる調停案を提示してくれる制度です。
ただし、調停案には強制力がないので受け入れないという選択も可能で、その場合には決定内容に強制力がある裁判に進むことになります。
離婚自体は夫婦の間だけで決められます。
しかしお互いの要求が相反して交渉が進まない場合に、家庭裁判所に申し立てて離婚調停を行うことになります。
なお、基本的に離婚調停を経なければ、離婚裁判を行うことはできません。
離婚調停に関する詳しい情報はこちらをご覧ください。
離婚調停とは?申し立て方法から費用まで
1-2 成立するとは限らない
しかし調停は、あくまでも「話し合い」の延長です。
夫婦双方が納得し合意しなければ成立しません。
調停委員といえども、納得しない当事者に調停案を押し付けることはできないのです。
その結果、調停を何回も経たとしても、結局夫婦のどちらかまたは両方が調停案を受け入れなければ、調停は不成立となって終了します。
調停はどんなときに不成立になるのでしょうか?
実は、不成立になるケースはいくつかあります。
2-1 調停不成立の判断による終了
調停委員が「このまま調停を続行したとしても、調停が成立する見込みがない」と判断した場合、調停が終了となります。
こうなると調停不成立となります。
こうした判断になるのは、例えば次のような、お互いの意見が真っ向から対立している場合です。
- 一方が離婚を強く希望しているが、他方が離婚にまったく応じない
- どちらが親権者になるか全く折り合いがつかない
- 財産分与の方法や慰謝料の金額に対して、どちらも譲れない
なお、仮に夫婦側が調停の続行を希望していたとしても、調停委員の判断で終了することになります。
ではこの場合、どれくらいの期間で調停不成立になるのでしょうか?
これは、何回調停を経たかによって異なります。
調停はたいてい1か月おき程度に開催されます。
多くの場合は、6回(半年)ほどを区切りとして、調停を続行するか不成立とするのかの見込みを立てているようです。
しかし、話し合いの内容によっては2回程度(2か月程度)の調停で不成立となることもあります。
また「調停を不成立で終了させて裁判で決着をつけたい」と考える人もいると思います。
このような場合には調停委員に説明をして、調停不成立の意思を伝えるべきでしょう。
調停委員もその意思を尊重し、相手方の考えも聞いた上で検討して、不成立としてくれることもよくあります。
2-2 調停の取り下げ
離婚調停の申し立てをした人は、いつでも、また相手の同意を得ることなく、離婚調停を取り下げられます。
調停委員か裁判所書記官に伝えれば所定の用紙を準備してくれるので、こちらに記入して提出しましょう。
一般的には、取り下げをすることによって調停自体が「最初からなかったもの」として扱われます。
離婚調停とは別の場所で話し合って、夫婦が円満に戻った場合などに取り下げが行われます。
また他にも、調停成立の見込みがない場合や相手方の欠席が続く場合にも、取り下げが行われることがあります。
ところで、離婚裁判をするためには調停を経る必要があります。
では、取り下げをしてしまうと、離婚訴訟を提起できなくなるのでしょうか?
基本的には、勝手に取り下げた場合は離婚訴訟を提起できません。
しかし、「相手方の欠席が続いたために取り下げた」「調停を重ねたものの成立する見込みがないので取り下げた」場合には、取り下げ後に離婚訴訟を提起することができる可能性があります。
2-3 当然終了
夫婦のいずれか一方が死亡して婚姻関係が消滅してしまった場合などには、調停を続ける目的自体が消滅します。
そのため調停は当然に終了することになります。
2-4 調停なし
調停委員が「離婚調停の申し立てが不当な目的に基づくものであり、継続は適当でない」と判断した場合には、調停を終了させられます。
ただ、こういったケースは滅多にありません。
例えば、「いちど離婚調停が不成立になったにも関わらず、すぐに再度調停の申立をした」場合や「申し立てを行った本人が調停に出席しない」というような不誠実な申し立てなどです。
いずれにせよ、極めて例外的な場合になされます。
他の司法判断である審判や裁判の場合は、裁判所の判断に対して不服を申し立てることができます。
審判については、その判断内容に不服があれば異議申立をすることができ、異議が出された場合、その審判は効力を失います。
また、裁判(判決)に不服があれば、高等裁判所に控訴をし、さらに高等裁判所での判決に不服があれば、最高裁判所に上告をすることができます。
では、自分は調停を続けたかったのに、調停委員が不成立としてしまった場合、不成立終了という判断に対して、不服を申し立てることができるのでしょうか?
結論をいえば、できません。
そもそも不服申立というのは、「司法の判断内容に不服がある」場合に、救済の可能性を残すために認められている制度です。
しかし調停不成立は、離婚をめぐる問題点について、何か具体的な判断を示したものではありません。
その意味では、不服申立の対象が存在しないので、不服申立制度はないのです。
なお、調停案に対して不服申し立てはできませんが、「受け入れない」という選択が可能です。
第4章 離婚調停が不成立となった後に取り得る手段では、調停が不成立になったら、どうしたらよいのでしょうか?
本人がどうしたいかにもよりますが、以下のような選択肢があります。
4-1 審判を受けて離婚する
調停が成立しない場合であっても、家庭裁判所が審判を下すことがあります。
ただし、必ず審判が下されるわけではなく、むしろ審判になることはあまりありません。
なお、この審判に異議がある場合は、2週間以内に不服申し立てをすることができます。
そうなると、審判はその効力を失います。
審判自体は、調停案とかけ離れた内容になることはほとんどないので、不服申し立てをするケースも少なくありません。
それでも、夫婦双方に異議がなければ、審判を受けて離婚をすることができます。
4-2 訴状を提出して裁判を起こす
調停や審判が成立せず、それでも離婚を望む側は、家庭裁判所に対して訴状を提出することで離婚裁判とすることができます。
訴状を提出すると、そこからおおよそ1か月から2か月後に第1回の口頭弁論期日が開かれます。
その後は、約1か月ごとに裁判が開かれて双方の主張反論がなされ、それぞれの主張を裏付ける証拠の提出もなされます。
主張と証拠が出揃ったならば、証人尋問と当事者本人尋問が実施されて、最終の主張書面を出して、結審して判決となります。
また、裁判の途中では適宜、裁判所から和解勧告がなされ、具体的な和解案も提示されます。この和解案は、判決となった場合とさほど違わない内容となるのが通常ですから、和解勧告があったならば、どこまで譲歩をすることができるのか真摯に検討すべきでしょう。
家庭裁判所の判決があり、これに不服があれば高等裁判所に控訴をし、さらに不服があれば、最高裁判所に上告することができます。
4-3 再び協議する・やり直せるか考える
調停が不成立となった場合でも、離婚裁判に進むかどうかは当事者の自由です。
しかし、裁判となると調停よりもっと大きな労力が必要となります。
そこで、すぐに離婚裁判とするのではなく、離婚調停で示された調停案や調停委員の意見を参考にして、当事者間でもう一度話し合いをしてみることも一つの方法です。
いったん冷却期間をおいてから話し合いを再開することは、冷静な話し合いのためにはとても有益なことです。
なお冷却期間をおくためには、別居をしながら協議をする方法と、同居しながら夫婦関係を見直す方法とがあります。それぞれの場合を見てみましょう。
別居して、お互い冷静になって、改めて協議することになります。
それぞれが調停案や調停委員の意見を再検討することが大切です。
例えば生活態度を変えるように求められていたような場合には、その努力をするべきです。
その上で、適宜夫婦で協議をしていくとよいでしょう。
お互いが態度を改めることで離婚を回避できることもありますし、冷静になって双方が譲歩して、協議離婚できたということも少なくありません。
なお、夫婦は生活費をそれぞれの収入に応じて分担しなければなりません。
これを婚姻費用の分担といいます。
夫婦が別居をしたとしても、離婚をしていない以上、この婚姻費用の分担をしなければなりません。
裁判所の出している算定表の内容をもとに夫婦で婚姻費用額、支払い方法などについて合意をしておくとよいでしょう。
未成年の子供がいる場合は、どちらのもとで生活させるかについてよく考えましょう。
親権を取りたいのであれば、子供と同居をするべきです。
もしその後にやはり離婚となった場合、子供を置いて別居すると、親権を獲得することが非常に困難になるからです。
しかし、転居や転校となると子供への負担も大きく、勝手に連れ去ったりしたら、問題になる可能性もあります。
子供のことを考えつつ、慎重に進めるようにしましょう。
夫婦が同居をしているということは、夫婦関係を修復させる可能性が高いことを意味しています。
同じ屋根の下で暮らしているのですから、少ないとしても会話があるはずです。
ですから、それぞれの至らなかった点に思いをはせて、改めるべきところは改めるようにして、修復に向けて努力をすべきでしょう。
夫婦の離婚の危機については、夫婦の一方だけに原因があるということはあまりありません。夫婦それぞれに何らかの原因があることがほとんどです。
このことを自覚して、相手方だけを責めるのではなく自分自身の行動も省みることが必要です。
もっとも別居するための費用がないなどの理由で、やむを得ず同居をしているというケースもあります。
この場合であっても、調停案や調停委員の意見をよく検討して、改めるべきところは改めることが重要です。
調停が不成立になったら、やっぱり裁判に進めたいです。
何か注意することはありますか?
はい。準備すべきことや、注意するべきことがいくつかあります。
5-1 必要な書類
実際に裁判に進むとなったら、どんな書類をそろえる必要があるのでしょうか? 以下に見てみましょう。
なお、訴状等必要書類の提出先は、夫婦のどちらかの住所地を管轄する家庭裁判所です。
一般的には、離婚調停を行った家庭裁判所に訴訟提起をすることが多いようです。
離婚裁判に関する詳しい情報はこちらの記事をご覧ください。
離婚裁判はするべき?メリットや期間、費用、流れまで徹底解説!
離婚裁判は、結婚生活の内容や離婚するべき原因、調停の経緯などを記載した訴状を提出することで始まります。
裁判所用(これを正本といいます)、相手方用(これを副本といいます)、自分自身の控え用の3部を作成して、正本と副本を裁判所に提出します。
夫婦の戸籍謄本とその写しを添付して裁判所に提出します。
証拠書類法定離婚原因の存在を裏付ける証拠(不貞行為があったのであれば、ホテルへの出入りの写真など)、財産分与のための共有財産の存在を裏付ける証拠(例えば、不動産登記簿謄本、貯金通帳の写し、源泉徴収票、不動産の場合は時価の鑑定書など)をやはり①正本、②副本、③自分用を作成して正本と副本を裁判所に提出します。
養育費の請求を伴う場合にも源泉徴収票や確定申告書が必要です。
年金分割の按分割合に関する処分の申立をする場合には、年金分割のための情報通知書とその写しが必要となります。
年金事務所で交付を受けることができます。
調停を経ないと裁判に進むことができないため、調停を経たことを示す書類が必要になります。
印紙・郵便切手印紙代は、取り扱う金額や内容によって異なります。家庭裁判所に問い合せるとよいでしょう。
また、相手方に書類を送達するための郵便切手も必要になるので、これも家庭裁判所に問い合わせしてください。
5-2 いつまでに訴状を提出するべき?
訴状を提出すべき期限は特にありません。
ただし、離婚調停が不成立になってから2週間以内に訴状を提出すると、裁判に必要な印紙代から調停にかかった印紙代を控除できます。
裁判に本来必要な印紙代から、すでに調停で支払った印紙代を差し引いた金額の印紙代のみでよくなるというわけです。
そのため、「裁判に進むしかない」と思っているのであれば、2週間以内に訴状を提出したほうがよいでしょう。
5-3 法定離婚原因が必要となる
離婚裁判で勝訴して離婚判決をもらうためには、相手方に法定離婚原因があることが必要です。
この法定離婚原因があることは、離婚を求める側(原告)が証拠を出したうえで、その存在を立証しなければなりません。
これができないと、そもそも離婚ができないということになります。
なお法定離婚原因とは、法律で定められた、離婚するための理由です。(詳しくは記事「『法定離婚原因』って何?離婚裁判を起こすときに必須な条件とは」をご覧ください。)
具体的にどんなものがあるのかを簡単に見ておきましょう。
配偶者以外の異性と性的関係をもつこと、つまり不倫です。
【悪意の遺棄】離婚となってもかまわないという意思で、夫婦間の同居・協力・扶助義務に正当な理由なく違反する行為をすることをいいます。
例えば、相手方を置き去りにして家を出るとか、相手方を家から追い出すことです。
最後の音信があった時から3年以上相手方の生死が不明の場合です。
【強度で回復見込みのない精神病】精神病によって夫婦共同生活ができないときに離婚を認めるものです。
なお、アルコール中毒や神経衰弱症、アルツハイマー病はここでいう精神病には該当しません。
また、判例は、病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途にその方途の見込みのついた上でなければならないとしています。
上記4つ以外で婚姻関係が破綻した場合に離婚を認めるものです。
婚姻破綻の認定は、当事者の性格、職歴、資産収入、行状心得、別居期間などすべての事情を考慮して判断されます。
具体的な事例としては、暴行・虐待、犯罪行為、配偶者の親族との不和、性格の不一致、性生活の異常、過度の宗教活動などがあります。
5-4 期間と費用がかかることを理解する
訴状を提出してから、早くても半年、通常でも1年ほどの期間がかかります。長引けば、さらにかかることになります。
高等裁判所への控訴があれば、さらに3か月ほどの期間がかかります。
まず、実費として印紙代や郵便切手の代金、裁判所までの交通費がかかります。
さらに裁判となると弁護士に依頼するのが現実的ですが、その場合は弁護士費用がかかります。
5-5 肉体的負担・精神的負担は少なくない
自分自身で裁判を進めていくとなれば、「訴状作成」から「主張反論書面の作成」「証拠の収集」などに加えて、おおよそ月1回ほどのペースで開催される「裁判に出頭」が必要になります。
これは、本人にとって、かなりの肉体的・精神的負担となります。
弁護士に依頼すれば、これらの直接的な手間や負担は大幅に減ります。
しかし、書面の作成に当たっては当時のことを改めて考えなければなりませんし、相手からの反論に目を通さなければなりません。
そうした精神的負担はどうしてもかかってくることになります。
5-6 裁判は公開で行われる
さらに調停と違って、離婚という極めてプライベートな事柄であっても、裁判は公開で行われます。
つまり、見ず知らずの第三者が傍聴することができるのです。
本人尋問が行われるとなると、第三者の面前で、夫婦のプライバシーに関するすべてを証言しなければならなくなる、ということです。
5-7 離婚裁判は弁護士に依頼すべきか
裁判は、手続きが非常に煩雑になってくるので、慣れないとかなりの手間となります。
しかも、裁判で勝訴をするためには、適切な証拠の収集が必要になります。裁判の進め方がまずくて敗訴…となったら、時間と手間をかけて裁判をした意味がなくなってしまいます。
そのようなリスクを回避するためにも弁護士に依頼すべきでしょう。
また、煩雑な手続きのほとんどを弁護士に任せられることは、大きなメリットです。
肉体的・精神的苦痛を少しでも緩和しようと考えるのであれば、離婚裁判は弁護士に依頼するべきだといえます。
調停や裁判をよりスムーズに進めるために、弁護士に相談・依頼をすることをお勧めします。
最終的に依頼をしないとしても、相談するだけで情報を整理できたり、適切なアドバイスをもらえたりします。
弁護士にも、得意な分野とそうでもない分野があるので、離婚問題を取り扱っている弁護士から探すのがおすすめです。
調停や裁判は裁判所で行うので、緊張しない方はいないかもしれません。
ですが、今後の人生をスッキリした気持ちで過ごすために必要な手続きになることでしょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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