再婚したら養育費の減額ができる?金額の考え方のすべて
[投稿日] 2017年07月10日 [最終更新日] 2017年07月10日
養育費を得意としている弁護士
離婚の際にはいろいろ取り決めをします。
その中でも、子どものいる夫婦にとって特に重要なのは、子どもの親権と養育費です。
養育費とは、経済的・社会的にまだ自立していない子供が自立できるまでに必要な費用です。具体的には、衣食住など生活に必要な費用、教育費(幼稚園から大学までの学費など)、医療費などが含まれます。
離婚の際は、子どもの親権者を父母どちらかに決める必要があります(民法819条2項)。親権者となった親が子どもを引き取って養育し、親権をもたない親は養育費を支払う、というパターンが一般的です。
ところで、離婚後に再婚した場合、養育費の支払いはどうなるのでしょうか。親権をもつ方(養育費を受け取る方)、親権をもたない方(養育費を支払う方)それぞれについて、再婚した場合の養育費の支払いに関する問題を見てみましょう。
親権をもつ方(養育費を受け取る方)の再婚再婚は、当事者である男女の問題です。子どものいる人が再婚したとしても、親子関係には影響がありません。
つまり、子どもの親権をもつ方が再婚したとしても、子どもの養育義務は子どもの父母にあり、再婚相手に子どもの養育義務が生じるわけではありません。
そのため、親権をもつ方(養育費を受け取る方)が再婚したからといって、養育費が減額されるわけではありません。
しかし、再婚相手が子どもと養子縁組をした場合は、再婚相手と子どもとの間にも、法律上の親子関係が生じます(民法809条)。この場合、再婚相手も子どもの養育義務を負うので、養育費が減額される可能性があります。どの程度減額されるかは、親権をもたない方(養育費を支払う方)と、再婚相手との収入の差によります。
さらに、再婚相手と子どもが養子縁組をしていない場合でも、再婚相手に子どもの養育費を負担する意思があり、経済的余力もある場合は、養育費を決めた際には予期できなかった事情の変更があるとして、養育費の減額が認められる余地はあります。
親権をもつ方(養育費を受け取る側)の再婚と同様、親権をもたない方(養育費を支払う側)が再婚しても、親子関係には影響がありません。
つまり、再婚後も、それまでと同じように養育費を支払わなければなりません。
しかし、再婚相手との間に子どもができたなど、再婚によって扶養する人数が増える場合があります。そうなると、収入が増えない限り、養育費の支払いが厳しくなることが予想されます。この場合、事情の変更により、養育費の減額が認められる可能性があります。
具体的な金額については、再婚後の事情をもとに、あらためて養育費を算定し直す必要があります。
実務上は、養育費の金額を迅速に算定するために、裁判所の算定表が用いられます。算定表は、子どもの人数と年齢ごとに複数パターン用意されています。縦軸が養育費を支払う側の年収、横軸が養育費を受け取る側の年収で、双方の年収が交差するマス目の金額が養育費の目安となります。
例として、次のケースを考えてみましょう。
- 子どもが1人(5歳)いる夫婦が離婚した。
- 親権者は母、父は養育費を支払うことで合意した。
- 父が再婚し、子どもが1人生まれた。
- 父の年収は600万円、子どもの親権者である母はパート勤務で年収300万円。
- 父の再婚相手は会社員で、自分の生活を賄える程度の収入があるので、夫が扶養する必要はない。
14歳以下の子どもが1人なので、「養育費 子1人(子/0~14歳)」の表を用います。
縦軸の父の年収600万円と、横軸の母の年収300万円が交差する部分のマス目の金額は、「4~6万円」です。
14歳以下の子どもが2人なので、「養育費 子2人(第1子・第2子/0~14歳)」の表を用います。
縦軸の父の年収600万円と、横軸の母の年収300万円が交差する部分のマス目の金額は、「6~8万円」です。
この金額を、2人の子どもで分け合いますので、1人当たりの養育費は「2~3万円」となり、離婚の際の養育費よりも金額が少なくなります。
以上のように、再婚を理由として、養育費を減額できる可能性はあります。
もっとも、再婚すれば当然に養育費が減額されるわけではありません。勝手に支払いを止めたり、金額を減らしたりすると、強制執行を受ける可能性もあるので注意が必要です。
養育費を減額するには、まず、親権をもたない方(養育費を支払う側)が、親権をもつ方(受け取る側)に対して、事情を説明して養育費の減額を申し入れ、同意を得なければなりません。
当事者同士の話し合いで解決しない場合は、養育費の額の変更を求める調停を家庭裁判所に申し立てることができます。調停でも話がまとまらず、不調になった場合は、審判が開始され、裁判官が一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
離婚を経験した人の中には、「結婚はもうこりごり」と思う人も多いかもしれません。
しかし、統計上は、婚姻数全体の26%が、父母どちらかが再婚です(参考:平成29年「我が国の人口動態」30頁)。離婚の増加とともに、再婚も決して珍しいことではなくなってきているといえそうです。
養育費を取り決める際には、将来の再婚の可能性も視野に入れて、金額や条件をよく考える必要がありそうです。
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更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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