別れた彼に生活費と慰謝料を請求できる?

Legalus編集部さん 2015年07月23日

 3年前から同棲していた彼には過去2年分の国民年金・健康保険の未納分(68万円)と216万円の借金があり、それらの返済を優先する為、彼の生活費は私が負担していました(貯蓄を約50万円切り崩しました)。「もうお金は借りない、完済したら負担をかけていた分と合わせて生活費は入れる」と約束をし、半年前に返済が終了して以降、約束の通り生活費を入れてもらっていました。ところが、先日、また消費者金融から40万円の借金をしていることが発覚し、別れることにしました。

 この場合、私は彼に対して立替えた生活費の返還、慰謝料の請求ができるでしょうか?なお、籍は入れていませんでしたが、彼の郷里に行った際、親・親戚には「嫁さんだ」と紹介されました。


(30代:女性)

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Legalus編集部

    1.立替えた生活費の返還請求について



     「立替えた」というのは「貸した」という意味だと思われます。そこで、「立替えた」生活費の返還請求が認められるためには、あなたと彼の間に金銭消費貸借契約(民法587条)が成立している必要があります。金銭消費貸借契約が成立するためには、当事者間に「同種・同等・同量の物を返還する」という合意が存在していなければなりませんが、本件の場合、彼は「完済したら負担をかけていた分と合わせて生活費は入れる」と約束していますので、この約束があなたへの返還を意図したものなのかどうかが争点になると思われます。



     しかし、この約束の意図を相談文から読み取ることは容易ではありません。つまり、「負担をかけていた分と合わせて」という言葉を重視すれば、彼はあなたへの返還を意図していたと解釈することができそうですが、「生活費」という言葉を重視すれば、「生活費」とは二人の共同生活のために費消する金銭だと考えられますので、特にあなたへの返還を意図していたと解釈するのには無理があります。したがって、彼とあなたの間に金銭消費貸借契約が成立しているかは、より具体的な事情と判断者の捉え方によって結論が異なると思われます。

     金銭消費貸借契約の成立が否定された場合、あなたの立替えた生活費は彼にとって『不当利得(法律上の原因なく他人の財産または労務によって得た利益)』に該当する可能性が出てきます。そこで、あなたとすれば、彼による不当利得(民法703条)として、立替えた生活費の返還を求めることが考えられます。



     一方、不当利得の主張に対し、彼の側からは「内縁関係が成立していた」とする反論が出される可能性があります。あなたと彼が内縁関係にあったとした場合、あなた方の関係は婚姻関係に準じて取り扱われますので、あなた方が互いに協力・扶助し合って共同生活を営むことは法律上当然のこととなります(民法752条)。したがって、彼は法律上の原因に基づいて利益を得たこととなり、不当利得は不成立となるわけです。では、「内縁関係が成立していた」とする主張に対し、あなたはどのような反論を行うべきでしょうか?



     内縁関係の成立には、(1)夫婦としての共同生活の実体、および(2)婚姻をする意思が必要となります。

     あなたと彼とは3年間家計を同一に同棲し続け、彼の親・親戚からも夫婦として扱われていたわけですから、(1)夫婦としての共同生活の実体を否定することは困難でしょう。また、彼はあなたを「嫁さん」として親・親戚に紹介していますので、少なくとも、彼には(2)婚姻をする意思もあったと考えられます。ここで、あなたにも婚姻をする意思があったとすれば内縁関係が成立してしまいますので、あなたとすれば、ご自身には婚姻をする意思がなかった旨を主張し、内縁関係の成立を阻むべきでしょう。



     仮に内縁関係の成立が認められた場合、あなたから一方的に内縁関係を破棄することは「内縁関係の不当破棄」に該当し、慰謝料請求の対象とされるおそれがあります。しかし、彼の借金のせいで貯蓄を切り崩さなければ生活できなかったそれまでの経緯からすると、「もうお金は借りない」という約束を破り、半年間で40万円もの借金をした彼の行為は、あなたにとって「内縁関係を継続し難い事由」(民法770条1項5号参照)に該当すると考えられます。したがって、仮にそのような請求が彼からなされた場合、あなたとすれば「約束を破って借金をしたことは内縁関係を継続しがたい重大な事由にあたる」と主張するべきでしょう。



    2.慰謝料の請求について



     慰謝料とは、不法行為(民法709条)によって受けた精神的損害に対する賠償金のことを言います(同710条)。そこで、あなたが彼に慰謝料請求できるためには、彼があなたに対して不法行為を行ったと言える必要があります。

     しかし、相談文を読む限り、彼があなたに対して不法行為を行ったとする事実を読み取ることはできません〔彼が約束を破ったという事実はありますが、それが内縁関係破綻の原因を作ったと主張する場合は格別、内縁関係の成立を否定する立場からそのような主張をすることは理屈に合わないと思われます。仮に慰謝料が発生しているとしても、あなたから関係を解消する以上、あなたの受けた損害を立証することは困難だと思われますし、立証できたとしてもごく少額に止まると思われます。〕。したがって、彼に対して慰謝料請求することには無理があるのではないでしょうか。

2015年07月23日

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