事実婚(内縁)の子供は、戸籍や苗字はどうなる?認知は?
[投稿日] 2017年06月01日 [最終更新日] 2018年02月14日
男女が法律上の夫婦となるには、婚姻届を提出する必要があります(民法739条1項)。
しかし、生活の実態としては夫婦であっても、意図的に婚姻届を出さないという選択をするカップルもいます。また、男女どちらかが既婚者であるなど、事情があって婚姻届を出せない場合もあります。このような状態は、事実婚とか内縁関係と呼ばれています。
では、事実婚(内縁)の夫婦に子どもが生まれた場合、法律上の夫婦の場合とどのような違いがあるのでしょうか。
事実婚・法律婚と親子の関係ここでの親子関係は、生物学的な親子関係ではなく、法律上の親子関係のことです。事実婚と法律婚とでは、父母と生まれた子どもとの親子関係について、次の2点の大きな違いがあります。
嫡出子か非嫡出子か
法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どもを嫡出子、そうでない子どもを非嫡出子といいます。
法律婚の夫婦に生まれた子どもは嫡出子となりますが、事実婚の夫婦に生まれた子どもは非嫡出子となります。嫡出子であるか否かによって、父子関係の成立のための認知の要否や、子どもの戸籍と苗字がどうなるかが異なります。以下、詳しく見てみましょう。
認知の要否
法律上の親子関係について、民法には“嫡出推定”という規定があります。
(嫡出の推定)
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
法律上の夫婦に子どもが生まれた場合、ほとんどはこの嫡出推定の規定によって、特別の手続きを経ることなく、その夫婦の子どもとなります。
これに対して、事実婚の夫婦に子どもが生まれた場合、母親と父親とで法律上の親子関係を生じさせる方法が異なります。
まず、母親と子どもとの親子関係は、分娩の事実によって当然に証明されます。そのため、特段の手続きは必要なく、生まれた子どもは法律上も母の子ども(非嫡出子)となります。
一方、父親との親子関係を生じさせるには、“認知”によらなければなりません。父親が認知をすれば、生まれた子どもは法律上もその父の子ども(非嫡出子)となります。
(認知)子どもの戸籍はどうなる ?
第七百七十九条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。
法律上の夫婦の場合、子ども(嫡出子)の出生届を出すと、その子は夫婦の戸籍に記載されます。続柄欄には、出生の順に「長男(長女)」「二男(二女)」と記載されます。
これに対して、事実婚(内縁)の夫婦の場合、子ども(非嫡出子)の出生届を出すと、母親を筆頭者とする新しい戸籍が作られ、その子どもは母の戸籍に入ります。父親が認知をしていない場合は、「戸籍に記載されている者」欄の父親の欄は空欄のままです。父親が認知した場合は、父の氏名が記載されます。
なお、かつては嫡出でない子の出生届が出された場合、続柄欄には「長男(長女)」「二男(二女)」等ではなく、「男」「女」と記載されていました。しかし、この点については平成16年に変更があり、現在は母親が出生した嫡出でない子の順に「長男(長女)」「二男(二女)」と記載されるようになりましたので、続柄欄の記載という点では、嫡出子と非嫡出子の違いはなくなっています。(また、既に戸籍に記載されている嫡出でない子についても、本人や母親等の申し出により、記載の訂正が可能です。)
子どもの苗字はどうなる?法律上の夫婦から生まれた子ども(嫡出子)は、父母の苗字を名乗ります(民法790条1項)。
これに対して、事実婚の夫婦から生まれた子ども(非嫡出子)は、母の苗字を名乗ります(民法790条2項)。
民法では、「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」と定められています(民法818条1項)。
法律上の夫婦の場合、子ども(嫡出子)の親権は、父母が共同で行使します(民法818条3項)。
これに対して、事実婚の夫婦の場合、子ども(非嫡出子)の親権は父母のどちらかの単独親権となり、原則として母が行使します。ただし、父が認知した場合は、父母の協議によって父を親権者と定めた場合に限り、父が親権を行使します(民法819条4項)。嫡出子の場合と異なり、父母が共同で親権を行使することはありません。
相続権はどうなる?親が死亡した場合、子どもはその相続人となります(民法887条1項)。これは、法律上の夫婦の子であっても、事実婚の夫婦の子であっても変わりません。ただし、事実婚の夫婦の子の場合、父親が認知をしていない場合は、法律上の親子ではないため、父親が死亡してもその子に相続権は認められません。
なお、被相続人に、嫡出子と非嫡出子がいた場合、かつては非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1でした。しかし、平成25年9月4日の最高裁判所判決で、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書の前半部分が、法の下の平等を定める憲法14条1項に違反し、違憲であるとの判決が出されました。
この違憲判決を受けて、平成25年12月5日、民法の一部を改正する法律が成立し、嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました(同月11日公布・施行)。ただし、改正後の民法900条の規定は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用されます。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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