籍に入っていなくても相続できるか?内縁の妻の相続事情まとめ
[投稿日] 2017年09月14日 [最終更新日] 2017年09月14日
さまざまな事情によって籍を入れていない、いわゆる「内縁の妻」。当然、制度上で認められた妻に比べると権利に制約があると考えられますが、相続についてはどのようになっているでしょうか。
いざ自分が死んだら、内縁の妻の扱いはどうなるのか気になるという人もいらっしゃると思います。
そこで今回は、内縁の妻に関わる相続事情についてまとめてみました。
一般的に用いられている「内縁の妻」という言葉ですが、法的な定義は存在するのでしょうか。
内縁は法律による具体的な定義はありませんが、判例では「婚姻に準ずる関係」とされています。事実上は夫婦として暮らすことから“事実婚”とも呼ばれます。
婚姻届けを提出する、いわゆる法律婚とは区別して使われています。日本の法律では、結婚するためには婚姻の届け出(民法第739条)と結婚する意思(婚姻意思)が必要であると定められています。
つまりお互いが、社会通念上の夫婦関係を設定する意志を持ち、婚姻の届け出を行うことで、夫婦であると法的に認められるということです。
パートナー同士が結婚する意思を持っているという点では法律婚も事実婚も変わりませんが、大きな違いは、婚姻届けを提出しているかどうか、ということです。
法律で定められた正式な結婚のためには、婚姻届と結婚の意思が必要です。そのうち婚姻届がなく、結婚の意思だけが存在するのが「内縁」ということになります。
内縁を定義した法律はありませんが、過去の判例上では「婚姻に準ずる関係」となっています。
婚姻届を提出していなくても、当人同士には結婚しているという主観的な認識があるのが内縁関係。
しかし、法律婚ではないということで、相続の上では大きな制約が存在します。
内縁関係にある場合は、事実上の夫婦であるとされていますので、法律上の夫婦に準じた扱いが認められています。
生存中の内縁関係の解消の場合、財産分与が認められることがありますし、慰謝料を請求することができるときもあります。
ただし、法律上の夫婦ではないので戸籍や姓は別となり、相続権は発生しません。
財産分与や慰謝料については、法的な夫婦と同じような権利・義務がみとめられているのに対し、戸籍や姓が異なるという理由で相続権はありません。
したがって、内縁の妻は内縁の夫の財産を相続することができません。
法律から考えてしまうと、内縁の妻は法定相続人にはなれません。しかし、遺言で相続人として指定したり、内縁の妻が「特別縁故者」として名乗り出たりすることで、相続できる可能性もあります。
内縁の妻を遺言で相続人に指定する定められた形式の遺言を残し、その中で内縁の妻を相続人として指定していれば、内縁の妻は財産を相続することができます。
遺言で指定される相続人は、民法上の法定相続人である必要はありません。
たとえば、被相続人が、内縁の妻に遺産を渡す内容の遺言をしている場合には、内縁の妻が相続人となりますし、お世話になった他人に遺産を渡す内容の遺言をしている場合には、その指定された第三者が相続人となります。遺言によって、法定相続人を相続人と定めることも可能です。
(中略)
内縁の妻や長男の嫁には相続権がありませんので、遺言を残していなければ、まったく遺産を受け取ることができません。当然、遺産分割協議に参加することもできません。
被相続人名義の家に内縁の妻が住んでいることも多いですが、放置していると、被相続人の子どもなどの相続人が家を相続して、内縁の妻を追い出してしまうおそれもあります。そのようなことになったら、内縁の妻はたちまち生活に困ってしまいます。そこで、このようなことのないように、内縁の妻に自宅を相続させる内容の遺言を定めておくのです。
したがって、夫婦とも元気なうちに財産の相続について話し合い、弁護士などに相談したうえで法的に正しい形式の遺言を残すのがベストな方法となります。
内縁の妻が特別縁故者として名乗り出る遺言がなければ、法定相続人が財産を相続するため、内縁の妻の出る幕はなくなってしまいます。
しかし、法定相続人がそもそもいなかったり、法定相続人全員が相続を放棄したりすると、内縁の妻が「特別縁故者」として遺産の一部を受け取ることができます。
特別縁故者とは、被相続人と特別な関係にあった人のことで、たとえば被相続人と一緒に住んでいた人や、被相続人の療養看護をしていた人などです。
特別縁故者が見つかったら、遺産のうち必要な分を特別縁故者に分配します。
「法定相続人が一人もいない」という条件付きではありますが、内縁の妻が遺産を受け取る道も残されているわけですね。
ただし、故人の意思を反映するためには、やはり遺言を残すことが採るべき手段となります。
相続の問題を理解するためには込み入った法的知識が必要ですので、自分で判断せず専門家にアドバイスを求めるのが無難です。Legalusでは、相続問題や離婚・男女問題についてのQ&Aが数多く載せられていますから、参考にするとよいでしょう。
自分たちのケースではどうなるのか知りたい場合は、直接弁護士に連絡を取るとよいでしょう。Legalusでは内縁関係の問題に強い弁護士や、相続に強い弁護士を検索することができます。不安な気持ちを抱え込むことなく、ぜひ一度相談してみてください。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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