【弁護士に聞く】後から無効を主張されない離婚協議書の書き方は?弁護士のチェックポイントはここ
[投稿日] 2019年02月05日 [最終更新日] 2019年02月05日
離婚協議書を得意としている弁護士
離婚の際には様々な取り決めをしなければなりませんが、口頭で合意しただけでは心もとない…そんなとき、合意内容を書面化しておけば安心です。
とはいえ、どのように記載すればよいのか分からず、頭を抱えてしまうこともあるでしょう。
そこで、離婚協議書の作成の仕方について、なごみ法律事務所の本田幸則弁護士にお話を伺いました。

(なごみ法律事務所)
離婚や相続など、家庭に関する法律問題を多く手がける。事務所名の「なごみ」には、対立を調和させ、より良い結果を導くという意味を込めており、依頼者にとってベストな解決を目指している。
――そもそも、離婚協議書とは何でしょうか?

本田 弁護士
離婚にあたって、夫婦の財産関係、子どもに関する事項について、合意内容を明確にするための書面です。
一般的に、慰謝料の規定や、その金額や支払い時期、子どもの親権をどちらが持つか、養育費をどうするか、子どもとの面会をどうするかといった事項を記載します。
――子どもとの面会に関する事項まで、離婚協議書に記載するのですね。

本田 弁護士
そうですね。
子どもとの面会でトラブルになることは、意外と多いので、離婚協議書に記載することが多いですね。
――離婚するには、必ず離婚協議書を作成しなければならないのでしょうか。

本田 弁護士
必ず作成しなければならないわけではありません。
実際、作成しない人も多いです。
ただし、子どもがいる場合は、作成しておく方がよいでしょう。
――子どもがいる場合に、特に注意して離婚協議書に記載すべき点は何ですか。

本田 弁護士
やはり、養育費ですね。
特に、いつまで、つまり子どもが何歳になるまで、養育費を支払うかは重要です。
「成人するまで」と取り決めてあるものを見かけることが多いですが、法改正で成人年齢が20歳から18歳に変更された場合、具体的に何歳まで支払うのか問題になります。
まだ法律の施行がされていないので、裁判例はないのですが、合意時に20歳と思っていたなら、20歳まで支払うことになると考えられます。
――子どもがいる場合以外でも、離婚協議書を作成すべき場合はありますか。

本田 弁護士
慰謝料を分割払いにする場合です。
養育費もそうですが、離婚後も関係が長期にわたって継続する場合は、離婚協議書を作成しておくべきといえます。
――離婚協議書に記載すべき内容には、どのようなものがありますか。

本田 弁護士
先ほど触れたものもありますが、離婚の合意、慰謝料の金額や支払い時期、子どもの親権をどちらが持つか、養育費、財産分与などです。
最近だと、年金分割に関する事項を入れることもあります。
それから、後になって争いを蒸し返されないように、「これで全部解決した」という清算条項も入れておくべきでしょう。
- 離婚協議書とは、離婚に当たって、合意内容を明確にするための書面
- 子どもがいる場合など、離婚後も関係が長期にわたって継続する場合は、離婚協議書を作成しておくべき
――離婚協議書には決まった形式があるのでしょうか。

本田 弁護士
特に決まった書式はありません。
当事者同士が合意さえしていれば、どんな形式でも大丈夫です。
――この記載がなければ離婚協議書は無効、という事項はありますか。例えば、日付のない自筆証書遺言は無効ですが、離婚協議書にもこれと同じようなものはありますか。

本田 弁護士
日付はあったほうが良いですが、ないから離婚協議書が無効になるわけではありません。署名や印鑑も同じです。
重要なのは、当事者の合意があったという事実で、離婚協議書はその合意の存在を推定させる証拠でしかないからです。
――離婚協議書自体は有効でも、こういう記載内容は無効、というものはありますか。

本田 弁護士
よくあるのが、離婚後の相手の行動を制限する内容の記載です。
浮気が原因の離婚の場合に、離婚後浮気相手と会わない、再婚しないという記載を入れたがる人もいるのですが、離婚後は他人なので、行動を制約することはできません。
他には、内容があまりにも抽象的で、どんな風にも解釈できる記載だと、実質的に記載する意味がなく、無効になると考えられます。
もちろん、反社会的な取り決めも無効です。
- 離婚協議書には決まった形式はない
- 離婚協議書は、合意内容を証明する証拠になる
- 離婚後に、相手の行動を制約する内容の記載は無効
――離婚協議書を作成するにあたって、後から無効を主張されないために、注意すべきポイントは何でしょうか。

本田 弁護士
大前提として、脅迫と言われないような状況で作成することですね。
例えば、夫の親族が勢ぞろいなのに対して妻が1人など、多数対1人ではなく、1人対1人か1人対2人が望ましいと考えられます。
弁護士に離婚協議書の作成を依頼すれば、脅迫と言われる可能性は低くなります。
――形式面では何かありますか。

本田 弁護士
離婚協議書に日付・署名・押印は入れておいた方がよいでしょう。
先ほどお話しましたように、それらがなくても離婚協議書が無効になるわけではありませんが、有効性について争いになることがあります。
そして、離婚協議書は必ず2通作成し、夫と妻がそれぞれ1通ずつ保管してください。
改ざんを防止するためです。
割り印はあってもなくてもかまいません。
――離婚協議書の作成を弁護士に依頼するメリットは何でしょうか。

本田 弁護士
まずは、脅迫と言われる可能性が非常に低いことです。
それと、法律的に有効な書面を作成できることです。
記載しても法律的に意味がない事柄もありますが、弁護士に依頼すればそのような心配はなくなります。
――他にはどのようなことがありますか。

本田 弁護士
自分の権利をもれなく主張できる点です。権利があるのに請求できていないケースは、意外とあります。
例えば、年金分割ができると知らなかった場合などです。
請求期限が決まっていて、後から請求できない場合や、離婚協議書に清算条項があって、いったん合意した内容を覆すことができない場合もあるので、離婚協議書にサインする前に、一度は弁護士に相談されることをおすすめします。
――離婚協議書を公正証書にする方法もありますが、公正証書の方が良いのはどんな場合ですか。

本田 弁護士
養育費や慰謝料の分割払いなど、離婚後に金銭の支払いが長期間継続する場合です。
私的な離婚協議書と公正証書との違いは、強制執行が可能かどうかという点です。
強制執行というのは、給料を差し押さえたりする手続きですが、公正証書にしておけば、支払いが滞った場合に、スムーズに強制執行に着手できます。
――公正証書の作成手順を教えてください。

本田 弁護士
まず、当事者間で合意内容を大筋で確認し、公証役場に予約を入れます。
予約した日時の前に、あらかじめ合意内容を伝えておきます。
公証人が一緒に文章を考えてくれることもありますが、大枠は自分たちで決めておかなければなりません。
その後、公証人から、内容の確認の連絡が来て、問題なければ、予約した日に公証役場で双方が内容を確認し、署名押印して完成です。
予約を入れてから、証書が完成するまで、だいたい2週間程度かかります。
――公正証書の作成費用は、どのくらいかかるのですか。

本田 弁護士
費用は、公証役場のホームページを見れば、おおよその金額は分かりますが、詳細は公証役場に問い合わせた方がよいでしょう。
財産分与や慰謝料、養育費の金額などで費用が変わります。
正確な金額は公証役場に確認しないと分かりませんが、不動産がある場合にはそれなりの金額になります。
――なるべく費用をかけないようにする方法はありますか。

本田 弁護士
もし、時間に余裕があるのであれば、調停を起こした方が費用は安くなります。
調停が成立すれば調停調書が作成されますが、それは公正証書と効力は同じです。
ただ、申立てから最初の調停期日まで1か月程度かかるので、急ぐ人には向いていないかもしれません。
- 弁護士に依頼すれば、法律的に有効な離婚協議書を作成することができる
- 請求漏れをなくすためにも、離婚協議書に署名する前に一度弁護士に相談を
- 費用はかかるが、公正証書を作成するという選択肢もある
合意内容を書面にしておけば、後に合意内容をめぐって争いになることを防止できます。しかし、記載内容に漏れや誤りがあると、それが新たな争いのもとになってしまい、書面を作成した意味がなくなってしまいます。
離婚相手と何度もやり取りすることは、心身ともに大きな負担となります。そうならないためには、弁護士に離婚協議書の作成も含めて、手続きを依頼するのも一つの方法です。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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