離婚届を代筆して提出したらどうなる?│相手が同意してくれない場合の対処方法
[投稿日] 2017年06月29日 [最終更新日] 2019年10月29日
そもそも離婚はどうやって成立するのでしょうか?
民法763条は、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。」と定めています。協議離婚をするには次の2点が必要です。
- 夫婦の双方に離婚の意思(法律上の婚姻関係を解消する意思)があること
- 市区町村の役場への離婚届の提出
離婚届の用紙には、夫・妻それぞれが署名・押印する欄があります。この署名・押印は、普通は夫または妻が自分で行います。しかし、署名したくない、あるいは署名したくてもできないという場合があります。こんな場合に、相手の代わりに自分または第三者が、代筆することはできるのでしょうか。ケース別に考えてみましょう。
弁護士に電話で相談・問合せ(無料)も可能です
弁護士を探す(無料)「離婚はしてもいいけど、離婚届の記入が面倒だから、代わりに書いてほしい」、または「離婚はしてもいいけど、手が不自由で文字が書けないから、代わりに書いてほしい」などと言われて代筆した場合、その離婚届は有効でしょうか?
この場合、相手には離婚の意思があります。その上で、自分で署名ができないのであれば、離婚届の代筆をすることはできるので、有効です。
戸籍法施行規則 第六十二条
1 届出人、申請人その他の者が、署名し、印をおすべき場合に、印を有しないときは、署名するだけで足りる。署名することができないときは、氏名を代書させ、印をおすだけで足りる。署名することができず、且つ、印を有しないときは、氏名を代書させ、ぼ印するだけで足りる。
2 前項の場合には、書面にその事由を記載しなければならない。
ただし、代筆の同意の有無を巡って、後々トラブルに発展するおそれがあります。
トラブルを避けるためには、代筆に同意したことを書面に残すなど、何らかの証拠を残しておくことが有効です。
しかし、物理的に署名が可能なのであれば、なるべく自分で署名してもらうに越したことはありません。
弁護士に電話で相談・問合せ(無料)も可能です
弁護士を探す(無料)「離婚には応じないから、署名はしない」という場合、相手には離婚の意思がありません。したがって、勝手に離婚届を出してそれが受理されたとしても、離婚は無効です。
また、「離婚はしてもいいけど、署名は自分でやる」と言っていたのに代筆して提出してしまった場合、離婚の意思はあっても、代筆の同意がない以上、代筆による離婚届を提出しても、やはり離婚は無効です。
ただし、相手が事後的に離婚に同意すれば、離婚は成立します。これを追認といいます。
相手の同意なしで代筆した場合、離婚が無効となるだけでなく、刑事上の責任も負う場合があります。離婚届に相手の氏名で署名・押印した場合、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)に該当します。また、偽造した離婚届を役所に提出した場合は、偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項)に該当します。さらに、市役所に虚偽の届出をして、戸籍に不実の事実を記載させた行為については、公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項)に該当します。
弁護士に電話で相談・問合せ(無料)も可能です
弁護士を探す(無料)同意なしで代筆が許されないとすると、相手が離婚届を書いてくれないかぎり、離婚できないのでしょうか。
民法770条1項は、法律上の離婚原因として次の5つを定めています。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由(DVなど)
裁判で、これらの離婚原因があると認められれば、離婚を認める判決が言い渡され、相手が同意していなくても離婚することができます。
ただし、離婚の裁判を起こす前には、原則先に離婚調停を申立てる必要があります(調停前置主義。家事事件手続法257条)。早く離婚したい人にとっては、初めから裁判をしたいところですが、家庭の問題はまず当事者間での話し合いによる解決を試みるのがよいと考えられているため、調停を先行させることになっているのです。
裁判所が間に入る調停であれば、相手が考え直す可能性もなくはありません。調停で離婚の合意ができた場合には、離婚する旨の調停調書が作成されます。
裁判や調停で離婚が認められた場合でも、判決正本や調停調書を添えて、市区町村役場に届出をする必要はあります。ただし、協議離婚とは異なり、申立人が届出人となるので、相手に署名をしてもらう必要はありません。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
問題は解決しましたか?
弁護士を検索して問い合わせる
弁護士Q&Aに質問を投稿する
離婚届を得意としている弁護士
藤田 聖典 弁護士 岐阜県
多治見さかえ法律事務所伊佐山 芳郎 弁護士 東京都
伊佐山総合法律事務所トップへ
離婚届2017年12月15日
絶対に離婚したい!絶対にしたくない! 今回は離婚したい!場合にはどうするの...
齋藤 健博 弁護士
銀座さいとう法律事務所