離婚にともなう様々な手続きで苦労する前に。離婚の注意事項まとめ
[投稿日] 2017年09月27日 [最終更新日] 2017年09月27日
離婚届を得意としている弁護士
離婚にともなう手続きには、金銭的なものや子供に関するものなど様々なものがあり、とても大変です。戸籍や氏の変更は必要か、子供の養育費はどうするか、財産分与の話し合いはいつするかなど、離婚届を書く以外にも様々なことを決めなければなりません。
そこで、今回は離婚前にきちんと検討しておかなければいけない注意事項についてまとめてみます。
離婚の方法には、当事者間で取り決めを行う協議離婚の他にも調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。ひとつずつ見ていきましょう。
(1)協議離婚
協議離婚とは、夫婦で話し合いをして、お互いに合意することで成立する離婚のことです。
離婚の合意・離婚届の提出・子供がいる場合には親権者を決定することで成立し、原則として調停員や弁護士、裁判所などの第三者が関与しません。
(2)調停離婚
調停離婚とは、当事者間の話し合いによる協議離婚では離婚成立しない場合に、家庭裁判所に調停を申し立て、行われる離婚のことです。
調停は家庭裁判所で行われますが、あくまでも当事者に調停委員を含めた話合いの形式で行われ、離婚条件・財産分与・養育費・慰謝料等に関する取り決めがされます。その際作成される調停調書は、確定判決に近い公的な効力をもつことになります。
(3)審判離婚
審判離婚は、離婚調停が成立しない場合に裁判官が職権で行う離婚の審判のことです。
これは、繰り返し離婚調停が行われたにもかかわらず離婚が不成立の場合に、離婚を成立させた方が当事者にとって良いと裁判官が判断した場合に行われます。ただし、あくまでも当事者間の争いが重要ではない部分にあり、離婚調停が成立しない場合に限られます。なぜなら審判離婚は、当事者の意に反して裁判官が強制的に離婚を成立させるものであるため、重要な内容に争いが残る場合は認めるべきでない方法だからです。
なお、審判で離婚となっても、当事者は審判の告知日から2週間以内に異議申し立てをすることができ、異議申し立てがなされると審判の効力は失われます。
(4)裁判離婚
裁判離婚とは、協議離婚が不成立の場合や調停離婚が不成立となった場合に、夫婦の一方が家庭裁判所に離婚の訴えを提起し、判決によって成立する離婚のことです。
離婚調停と異なり、離婚裁判では双方の主張・立証が行われます。最後に判決で、離婚請求が認められるか、財産分与・養育費・慰謝料・親権者等に関する判断が下されます。
ここで離婚判決が下されると、強制的に離婚が成立します。
離婚裁判の途中に裁判官が和解勧告をする場合もありますが、この和解勧告に応じるかどうかは当事者が自由に決定することができます。
なお、家事事件手続法という法律によって、離婚においては調停前置主義が採られています。つまり、裁判離婚を行うよりも先に離婚調停を行う必要があり、調停不成立になった後でなければ裁判離婚を行うことはできません。
基本的に第三者が介入しない協議離婚と比べ、調停離婚、審判離婚、裁判離婚は調停員、裁判官などが介入し、家庭裁判所で行われます。調停離婚、審判離婚、裁判離婚で決められた内容は、裁判所の裁判官や調停委員の立会いの下、調停調書・審判書・判決書として記録されます。公的な効力をもつ文書を作成しておくことで、後々相手が取り決めに従わないなどのトラブルが起こった時に対処することも可能です。
離婚前に検討しておきたい注意事項~戸籍・氏など離婚の話し合いをする際には、戸籍や氏をどうするか決めておかなければなりません。
特に、仕事や子供の学校などの理由で、離婚した後もしばらくは姓を変えたくないという方もいるかもしれません。離婚をすると戸籍と氏は自動的に結婚前に戻ってしまうのでしょうか。
結婚したときに姓(名字)を変えた母親は、離婚をすると法律上当然に結婚前の姓に戻ります(民法767条1項、771条)。離婚後も夫の姓を名乗るために、離婚の日から3ヶ月以内に婚氏続称の手続きをすると、母親は独立の戸籍を新設します。ただし、何の手続きもしない限り、子供は今までどおり父親の戸籍に入ったままです。両親が離婚をしても、子供の姓は変わらず、戸籍も結婚中の戸籍に残るのです。母親の姓と子供の姓は、戸籍が別である以上、同じAでも法律上は別の姓と扱われます。
このように、離婚をすると、母親は自動的に結婚前の姓に戻ってしまいます。
結婚していた時の姓をそのまま継続して名乗るためには、新しく戸籍を新設する必要があります。
それでは、離婚後しばらくは夫の姓を名乗っていたが、旧姓に戻りたい場合はどうすればよいのでしょうか。
婚姻によって氏を変更した者が離婚すると、婚姻前の氏(旧姓)に戻るのが原則で(民法767条1項)、「離婚の日から三箇月以内」に婚氏続称届を提出することで婚氏へ戻ることができるとされています(同条2項)。
これまであなたはこうして婚氏続称されていたわけですが、お子さんの学校卒業を機会に旧姓に戻すためには、ご指摘のとおり家庭裁判所の許可審判が必要となります。
そして許可されるためには「やむを得ない事由」が必要である旨定められています(戸籍法107条1項)。氏の変更によりまったくの別人になりかわる場合もあり、社会の混乱を生じないようにするため、要件が厳しくなっているわけです。
ただ、あなたのように婚姻前の旧姓に戻る場合は、比較的緩やかに氏の変更を許可してもらえます。以前使用していた実績があり、社会的混乱を招くおそれが少ないからです。
申立てはお住まいの管轄の家庭裁判所の窓口に出向き「氏の変更許可審判申立て」をしたいと説明されたら、申立書の書式と必要書類について説明があります。
「やむを得ない事由」がある場合、家庭裁判所で審判申し立てをする小手で、旧姓に戻ることも可能です。子供の学校の関係で、夫の旧姓を名乗っていた場合は、手続きを踏むことで旧姓に戻ることもできるので安心ですね。
子供の親権・氏について戸籍や氏の変更と重なる部分もありますが、今度は子供の親権や氏に関する変更についても考えてみましょう。
子の親権は、離婚届に記入する必要があります。
なお調停離婚の場合、親権者を合意で定めず別途審判で定める方法(親権者指定分離方式)もあります。
また、子は、親権者の戸籍に入るとは限らないので、子を戸籍に入れるには、入籍届を出す必要があります。
例えば「子が親権者の戸籍に入らない場合」というのは、名字を変えたくないなどの理由から、子供が父親の戸籍に残る場合などが考えられます。この場合、親権者は母親ですが、戸籍上は父の戸籍に入っているので、母親とは別々の戸籍に入っていることになります。母親と同じ戸籍に入るためには、家庭裁判所に「子の氏の変更」を申し立て、戸籍法の定めるところにより届け出る必要があります
離婚前に検討しておきたい注意事項~金銭など 年金分割離婚をした際には、様々な金銭面での手続きを行う必要もあります。
年金の手続きもその一つです。
調停離婚において年金分割の条項を定めていたとしても、実際に年金事務所での分割手続をする必要があります。これは離婚成立日から2年以内に行う必要があります。調停離婚の場合、調停が成立した日が離婚成立日となるため、離婚調停が成立した日から2年以内に行う必要があります。
期限が限られているため、離婚調停が成立した後できるだけ早く行うことをおすすめします。
なお配偶者の扶養に入っており、国民年金の3号被保険者として自ら年金保険料を納めていなかった場合には、国民年金1号被保険者への変更手続きも必要となります。
年金分割は、離婚をした場合に、一定の条件に該当すれば、婚姻期間中に収めていた年金を当事者間で分割することができる制度です。制度の利用には実際に年金事務所でご本人が手続きをする必要があるので注意しましょう。
養育費お子さんがいる場合には養育費についても話し合わなければいけません。養育費はいくらもらえるのか、相場がわかれば話し合いも行いやすいですね。
養育費は、離婚後子どもを引き取る親に対して、もう片方の親が月々いくらという形で支払うのが通常です。具体的な金額は、養育費を支払う側、受け取る側の経済力や生活水準を考慮して、話し合いで決めるのが通常ですが、話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所の調停や審判、裁判によって決められることになります。
養育費の相場といわれているのは、家庭裁判所が作成した「養育費算定表」によって計算された金額です。この表は、裁判所のウェブサイトで閲覧することができます。
算定表は子どもの人数(1人~3人)と年齢(0~14歳と15~19歳の二区分)に応じて9パターン用意されており、養育費を支払う側と受け取る側の年収に応じて算定されます。年収は、自営と給与所得者とでさらに区分けされています。
例えば、夫(給与所得者)の年収が500万円、妻(給与所得者)の年収が200万円、子どもは1人で年齢は3歳というケースで、夫が養育費を負担する場合、裁判所の算定表(表1 養育費・子1人表(子0~14歳))によると、夫が負担する養育費は月2~4万円となります。
養育費の相場を調べるには、家庭裁判所が作成した「養育費算定表」が便利です。
この養育費算定表は、主に東京・大阪家庭裁判所で幅広く活用されているものですので、事前に相場を把握しておきたい時に使えますね。
民法第768条では、離婚をする際に、相手に対して財産の分与を請求することができると定められています。ですが、金銭面に関する問題はこじれてしまうケースも少なくありません。
財産分与の話し合いがまとまらない場合、離婚はできないのでしょうか。
離婚には、協議離婚(民法763条)、調停離婚(家事審判法18条)、審判離婚(家事審判法24条)、裁判離婚(民法770条1項)があります。
協議離婚が成立するための要件は、離婚の合意と離婚届の提出(戸籍法76条)であり、財産分与に関する協議が合意に至ることを要件としていません。
したがって、財産分与に関する協議が合意に至らなくても、AはBと離婚することができます。
なお、財産分与の協議は離婚後いつでもすることができます(民法768条1項)。しかし、家庭裁判所に対して処分を求めることは、離婚のときから2年間しかできません。
このように、財産分与の話し合いは離婚した後でも行うことができます。
それでも財産分与の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に対して財産分与の請求を行うこともできます。ですが、離婚をした後で、相手が財産を隠したり誤魔化したりする可能性もあります。
そのため、離婚の前に相手の財産の全体像を把握しておくこといいでしょう。
ここまで離婚の際に気を付けたい注意事項について見てきました。子供のことやお金のことなど、決めなければいけないことは多岐にわたりますが、お互いの主張を譲れないことがあるかもしれません。離婚についての話し合いは、当事者だけではどうしても感情論が先に立ってしまい、なかなかまとまらないケースもあります。
Legalusでは、離婚問題に強い弁護士を検索することが可能です。できるだけ離婚手続きをスムーズに行うために弁護士に任せるだけではなく、事前に自分でも検討できることは十分に考えておきましょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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