協議離婚の証人ってどんなことをするの?何か責任を負うの?
[投稿日] 2018年01月25日 [最終更新日] 2018年01月25日
離婚届を得意としている弁護士
種村 求 弁護士 神奈川県
川崎パシフィック法律事務所離婚届を役所に提出するとき、証人の署名捺印が必要だと聞いたのですが、本当ですか?!
はい。協議離婚の場合は、2人の証人が必要になります。
誰かに頼まなきゃなんですよね……。
サインすると何か責任を負ったりするんでしょうか?
離婚を考えている人や、逆にサインを頼まれた人は、「証人ってどんなものなの?」という疑問を持っているかもしれませんね。
「どんな人に依頼するべきなのか」「サインをしたら何か責任が生じてしまうのか」「気軽にサインしてよいものなのか」など、頼む側も頼まれる側も、気になるところですよね。
ここでは、離婚届の証人とはどういうものなのか、お伝えします。
まずは、「証人が必要」とはどういうことか、かんたんにご説明します。
夫婦の話し合いのみで成立する協議離婚の場合、離婚届には、証人2名が署名捺印をすることになります。
署名欄には、生年月日、住所、本籍地を記載することになっています。
これは民法と戸籍法に基づくものです。
離婚届には必ず2名の証人が必要で、これを欠いていれば離婚届は受理されません。
では、証人とはそもそも何なのでしょうか?
堅苦しい言葉ではありますが、実態としては「離婚についての単なる立会人」程度と考えておけばよいでしょう。
「立会人」といっても、離婚届の提出に立ち会うというわけではありません。
夫婦以外にも離婚の事実を確認した人物がいることの確認といった意味合いです。
離婚届の提出に立ち会う必要はありませんし、離婚に関する事情や内容を知っている必要はありません。
夫婦のうち一方から離婚の事実を聞いていれば、署名して問題ありません。
「証人としてサイン」と聞くと、借金などの連帯保証人などを想像して身構えてしまうかもしれません。
しかしそういったものとは異なり、将来的に何かあった場合に法的な責任を負わされることはありません。
夫婦の一方から離婚するからと頼まれただけであれば、何の法的責任も発生しません。
なお、裁判所を介して行われる調停離婚、審判離婚、裁判離婚の場合は、証人の署名捺印は不要です。
第2章 証人はどんなことをするの?では、証人は実際にどんなことをするのでしょうか?
証人がするのは、離婚届の所定の場所に、必要事項を記載するだけです。
記載する内容は次のとおりです。
- 署名
- 押印
- 生年月日
- 住所
- 本籍地
印鑑は認め印でも問題ありません。ただしシャチハタは使用できないので気を付けましょう。
第3章 なぜ証人が必要?そもそも、なんで証人が必要なのでしょうか?
離婚は夫婦の問題ですよね。
3-1 証人が必要な理由
理由の一つは「偽造の抑止」です。
一方が離婚届を捏造して届け出てしまうことを防ぐ効果を狙っています。
と言っても、証人に偽造かどうかを確認する義務はありませんし、偽造と知らなければ何の責任もありません。
しかし現実に記載の手間がかかることや相手方に迷惑がかかるかもしれないと考えるなどの心理的効果を狙ったものとなります。
もう一つの理由は、「離婚意思の再確認」です。
夫婦喧嘩の延長で、一時的な感情が先走って離婚届を書いてしまう、ということはよくあります。
しかし、証人2名にまで頼むとなると、夫婦間だけの問題ではなくなります。
他人に依頼するという段になって、改めて「自分はこれで離婚をするのだ」ということを認識することになります。
こうすることで、自分自身の離婚意思に揺るぎのないことを再確認してもらおうという目的があるのです。
3-2 証人が必要なのは協議離婚のみ
離婚の方法には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判での和解離婚・認諾離婚・判決離婚があります。
このうち証人が必要なのは協議離婚だけです。
上記の「3-1 証人が必要な理由」を考えれば、これは当然とも言えます。
協議離婚以外のこれらの離婚の場合は、すべて裁判所を介して行われます。
つまり、公権力が離婚に関与しているといってよいでしょう。
したがって、偽造の恐れはないですし、離婚意思もはっきりしているはずだからです。
もっとも、調停離婚と和解離婚では話し合いで内容を決められるため、実質的には協議離婚とすることもよくあります。(戸籍に調停離婚とか和解離婚との記載がなされることを避けるために行われます。)
この場合には、実質的には協議離婚となるため、離婚届に証人2名の署名が必要となります。
うーん…。でも、証人は誰に頼んだらいいんでしょうか?家族でもいいのですか?
はい。家族でも大丈夫です。詳しく説明しましょう。
4-1 証人になれる条件
証人となることのできる要件は次の3つだけです。
①離婚の当事者でないこと
要するに、離婚する夫婦本人ではだめということで、これは当然ですね。
②成人であること
20歳以上である必要があります。
③離婚の事実を知っている者であること
離婚のことを知らずに名前だけ書いてもらうべきではないということです。
■こんな場合でも大丈夫?【外国籍の人】
外国籍でも証人となることもできます。
この場合、押印は必ずしも必要ではなく、サインで足ります。
ただし念のため、在留カードや特別永住者証明書の写しを預かって持参した方がよいでしょう。
離婚する夫婦と何らかの関係が必要というわけではありません。
そのため、証人代行サービスのように赤の他人でもかまいません。
家族や親族でも大丈夫なので、親も可能ですし、夫婦の子どもであっても大丈夫です。
ただし、成人している必要があります。
証人は「2人」必要になりますが、その2人自体の関係が夫婦や家族であっても問題ありません。
2人の住所や本籍が一緒になってしまいますが、大丈夫です。
ただし印鑑については、2人の印影は別のものにしたほうが無難です。
法律的には別個の印鑑を使用しなければならないという制約はありませんし、実際に同一の印鑑で受理されたケースもあります。
ただし同一の印鑑であることを理由に受理されなかったケースもあるようなので、念のため印鑑はそれぞれ別のものにするように頼んでおくとよいでしょう。
4-2 みんな誰に頼んでいる?
多くの人は、自分の両親や兄弟に依頼をしているようです。
友人・知人には離婚という事実をあまり知られたくないからでしょう。
もっとも、離婚について相談に乗ってくれていた友人夫婦に頼むケースも多いようです。
やはり離婚の経緯、離婚成立を知っている人が頼みやすいということなのでしょう。
4-3 頼める人がいないときは?
離婚の事実を親族や知人友人に知らせたくなかったり、頼める人がいなかったりすることもあります。
そうした場合は、証人代行サービスを行っている業者を頼ってもよいでしょう。
業者には守秘義務が課されているため、個人情報が洩れる心配は少ないでしょう。
費用としては、証人1名について5,000円から7,000円程度となっています。
また、離婚協議に弁護士が関与した場合には、その弁護士に相談してみましょう。
その事務所の職員の2名が証人となってくれる場合もあります。
証人になっても、全く何も責任は負わないのですか?
はい。普通に知人から頼まれた場合であれば、責任が生じることはありません。
ただし、積極的に不法行為に加担した場合は別です。
先述のとおり、離婚の証人は、連帯保証人などと違って責任を負うことはありません。
しかし、離婚が成立していないとの事実を知っていながら、証人となった場合は別です。
例えば、夫婦の一方が相手の署名などを偽造して離婚届を作成したとします。
もしそれが偽造したものだと知りながら証人として署名捺印したとしたら、「偽造有印私文書行使罪」「電磁的記録公正証書原本不実記載罪」の共犯が成立します。
さらに、相手方に何らかの損害が発生した場合には、偽造した本人と共に証人も、損害賠償責任を負うことになります。
例えば、夫側からただ単純に「離婚するから、証人にサインしてほしい」と頼まれて、それを信じて証人となったものの、後日それが虚偽離婚だったとしましょう。
その場合は、証人は民事・刑事いずれでも責任を負うことはありません。
証人となる要件として、「離婚の事実を知っている者」というのがありました。
しかし、事情を詳しく知っている必要はありません。
「当事者から離婚をしたと告げられた」程度で大丈夫なのです。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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