【弁護士に聞く】冤罪だ!でっちあげDVを主張されたらどうするべき?
[投稿日] 2018年06月04日 [最終更新日] 2019年10月29日
DVを得意としている弁護士
現在は離婚が珍しくない時代です。離婚の原因はさまざまですが、DVもそのひとつ。家庭裁判所に、DVの証拠が提出されることは珍しい話ではありません。
ところで「DVのでっちあげを受けて、離婚されてしまった人がいる」という話を聞いた覚えはないでしょうか。
身に覚えのないDVで離婚や慰謝料を迫られたとき、法的な対抗処置はないのでしょうか?離婚や男女問題に詳しい、若井綜合法律事務所の若井亮弁護士にお話を伺いました。

(若井綜合法律事務所)
離婚や不貞をはじめとした男女間のトラブルについて、数多く解決した経験を持つ。事務所所在地である新宿区という地域柄もあり、解決した男女間の紛争は幅広い。
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弁護士を探す(無料)――DVをでっちあげられて、離婚を要求される事件の背景を教えてください。

若井 弁護士
DVのでっちあげは確かに、少しずつ増えているように感じます。
その背景にあるのは、DVの認定数そのものが増加していることでしょうね。
「DV」という言葉は、最初は暴力を意味する言葉でした。
しかし近年は、モラハラにあたる嫌がらせも含むようになっています。
暴力を用いずに、言葉や態度で配偶者の人格を著しく傷つけた場合もDVとみなされるようになってきたわけですね。
また、配偶者の親族からの暴言が問題視された事例もあります。
それから、生活費を与えないといった経済的な締め付けもDVと扱われることがあります。
――録音や撮影という形でDVの証拠をつくられると、不利になりますか?

若井 弁護士
録音・録画という形式で証拠が保全されているなら、証拠として認められる可能性は確かに高くなりますね。
「配偶者をわざと怒らせて、言葉遣いが荒くなったところをこっそりと録音した」といった場合でも、証拠として採用される可能性はあります。
――DVが認定される基準を教えてください。

若井 弁護士
DVの認定には、いくつもの判断基準があります。
たとえばDVの頻度は重要ですね。
DVが発生したとして、「1回だけ」なのか? それとも何度も起こっているのか? その違いは大きいです。
ある程度、継続して行われているのかどうかをチェックされますね。
1回分しか証拠がないなら、「ただの夫婦喧嘩だろう」と判断される可能性があり得ます。
次に、DVの内容や程度も判断材料です。殴る蹴るを中心とした、とてつもない暴行だったら、わずか1回分しか証拠がなくても重視されます。
DVの証拠をでっちあげられた場合であれば、その証拠が作成された経緯が争いの焦点になる可能性があるでしょう。
そして、証拠の質もポイントですね。
暴力や暴言が録画・録音という形式で保存されていれば裁判所は無視できなくなりますから。
誰かの証言程度しかない場合なら、証拠としての価値は低いですし、裁判所が動く可能性も低いですね。
- 現在はDVの定義が徐々に広がっている。DVが取り上げられる事件は増えており、DVをでっちあげて離婚しようとする人も以前より増えている。
- 録音や録画のような証拠が提出されると、DVと認定される確率は高くなる。他人の証言程度ではその確率は低い。
- 証拠の質も重要だが、DVの継続性や内容も重視される。何度も行われている場合や暴力・暴言が激しい場合は、認定の確率は高くなる。
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弁護士を探す(無料)――警察や家裁、相手の弁護士等に、どんなスタンスで臨むべきですか?

若井 弁護士
「DVをやったという事実はなかったのだ」というスタンスで臨むことが大事ですね。
弱気になって相手方の言い分を認めたり妥協したりするのは禁物です。
また、裁判所や警察に対しても、あいまいな態度や一貫性のない態度を見せることはNGです。
相手方が実際にはなかったことを事実として主張しているのであれば、矛盾点を落ち着いて探して指摘する……といった戦術をとれる限りとっていただきたいものですね。
例えば、暴力があったと相手方が主張した日時の数時間後に、メールやLINEで「今日のご飯は何にする?」なんて、のんきなやり取りをしていることが判明したら、そんな事実があったとは考えにくいですよね。
そのようにして、少しずつ相手の主張を崩す証拠を積み上げていくことは大事です。
――自分側も早急に弁護士を立てる必要がありますか?

若井 弁護士
基本的に、DVを証明する立場にあるのは、相手方です。
相手方は何としても証明しようとしてくるでしょうが、そのペースに乗せられてはいけませんし、冷静に対処する必要があります。
そのためには結局、弁護士を立てるのがいちばんでしょう。弁護士が代理人になるほうが、感情的にならずに対処できます。
――警察は、どんなケースで介入してきますか?

若井 弁護士
警察は、暴力がふるわれたのであれば介入する可能性が高いといえます。
最近の警察は、暴力に対して厳格な態度で臨むので、逮捕も珍しいことではありません。
数ヶ月前の暴行を理由に逮捕に至ったケースもありますね。
逮捕された場合ですが、配偶者側から「もういいです」と連絡を受けたら釈放される可能性は高くなるでしょう。
逮捕の間は弁護士を通さない限り、外部との連絡はできません。
――配偶者と話し合う必要はありますか?

若井 弁護士
状況しだいでしょう。
たとえば、すでに別居しているのであれば、相手方の住居に出かけて話し合おうとしても、おそらくうまくいきません。
事態を悪化させてしまう恐れさえあります。
面と向かって話したい場合でも、いきなり会いに行くのは避けることをおすすめします。
相手方の弁護士を通したほうが無難でしょう。
しかし「まだ同居が続いている」「弁護士を立てていない」といった状況であれば、夫婦間で接点を持つのは簡単ですね。
その場合でも、コミュニケーションをとった履歴を残しておくほうがよいでしょう。
たとえばメールやLINE、あるいは置き手紙でもかまいませんが、「これこれこういう件で、話したい」と。もちろん表現には気を配りながら、連絡を試みたという証拠を残しましょう。
相手方の態度が軟化して話し合うことになったら、その会話はできれば録音したほうが正解ですね。
――復縁できる可能性はいかがですか?

若井 弁護士
「元のさやに戻りたい」といったアピールを相手方がしてきた場合や、話し合ったら理解し合えたという場合なら、復縁する可能性もあるでしょう。
とはいえ、現実に復縁に成功した事例はかなり少ないです。
特に、暴行等で警察が動く事案だった場合は、戻りにくくなる傾向にあります。
- DVをでっちあげられたときは、落ち着いて否定する態度をとり続けるべき。相手方にDVを証明する義務があるため、それを冷静に崩していくべき。
- 早めに弁護士を立てるに越したことはない。弁護士と話し合いながらどうするか決めること。弁護士は相手方や家裁・警察との折衝においてもサポートしてくれる。
- すでに別居しているなら、相手方といきなり会うのではなく、弁護士を通したほうが無難。まだ同居しているなら、話し合おうとするときは証拠を保全すること。
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弁護士を探す(無料)――離婚までの「婚姻費用」は払うべきでしょうか?

若井 弁護士
相手方が出て行ったら、離婚が成立するまでの間は支払う義務があります。
相手方より収入が多い場合は通常、拒否できません。
婚姻費用の支払いを交渉のカードにすることも考えられますが、これはひとりで判断するのは禁物です。弁護士とよく話して、アドバイスを受けたほうがよいでしょう。
――DVをやってもいないのに慰謝料を請求されたら、泣き寝入りするしかないですか?

若井 弁護士
相手方にDVが実際に行われたと証明する義務があるのですから、その証明を否定する戦いを、弁護士と組んで仕掛けていくことになりますね。
相手方の主張や、その主張を裏付ける証拠の内容しだいで、戦い方は変わります。
泣き寝入りする必要はありません。とにかく弁護士とよく話し合って戦い方を決めることが大切です。
――でっちあげDVでの離婚で財産分与を要求されたら、おとなしく応じるしかないでしょうか?

若井 弁護士
離婚時の財産分与は、離婚の理由の影響を受けてただちに変わるものではありません。
したがって、通常の離婚と同様に、法的に妥当と認められる範囲で分与する義務があります。
ただし逆に、相手方が法の限度を超えた要求をしてきたときは、応じなくてOKです。
――冤罪を理由に、こちら側から逆にお金を請求できる可能性はありますか?

若井 弁護士
「DVをでっちあげられたことで、どのようなダメージを受けたのか?」この点しだいでしょうね。
その結果、失職する羽目になった場合や精神的に多大な苦痛を受けた場合なら、賠償請求も成り立つでしょう。
しかし、希望した金額が手に入らない可能性が高いですし、裁判が長期化すると時間的・経済的な負担は並大抵のものではありません。
おすすめはできません。
――相手側が浮気・不倫をしていた場合は、お金を請求できるでしょうか?

若井 弁護士
相手方が他人と不貞関係を持っていたのであれば、相手方とその相手に賠償請求は可能です。
ただしこの場合は、その不貞関係を証明しなければなりません。
何か客観的な証拠を提出できるのであれば、請求手続きをする意味はあるでしょう。
夫婦が結局離婚に向かうのであれば、そのような選択肢も検討する価値があるでしょうね。
- 婚姻費用や財産分与については、法の定める範囲で要求に応じる必要がある。払い方については、弁護士にその都度確認したほうがよい。
- DVによる慰謝料を請求されたときは、相手方のDVの証明を阻止する戦いを検討すべき。逆に、でっちあげDVを口実とした賠償の請求をするのはかなり難しい。
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弁護士を探す(無料)――DVの申し立て以後、子供に会えなくなったらどうすればよいでしょうか?

若井 弁護士
会わせてくれないときは、最初に必要なことは夫婦間での協議(話し合い)です。
しかし、相手方が協議に応じてくれないことも多いと思われます。
そうなると、夫婦のどちらがわが子の監護権者になるのかを決める必要があります。
調停のような法手続きのときに、その件も持ち出すことになるでしょう。
調停の際に、DVをしていたという訴えが影響を及ぼす可能性は否定できません。
たとえば、DVの場面を子供が目撃しているような場合は、虐待だとみなされます。
児童相談所はこのようなケースでよく介入してくるのですが、そうなると厄介ですね。
DVがでっちあげなのであれば、やはりDVがなかったと主張しながら、監護権の指定を受けるための戦法を取っていく必要があるでしょう。
弁護士とよく協議する必要があります。
――離婚時に、親権は配偶者側に自動的に決められてしまうでしょうか?

若井 弁護士
DVの疑いが持ち上がっているからといって、自動的に親権を奪われることにはなりません。
つまり親権を持つことは不可能ではありません。
この場合も、DVがでっちあげでありそのような事実はなかったのだと主張しながら、親権を認められるための戦いをしていくことになります。
なお親権に関しては、それまでの監護実績が大きくものをいいますね。「子供の面倒を見てきたのは夫婦どちらなのか?」この点が重要視されます。
また、子供の年齢も影響します。
乳幼児の段階なら、母親が親権を持つことが多いです。
子供がある程度の年齢、10~15歳に達しているなら、子供自身の意思が尊重される傾向があります。
ただし、このように親権の決定については、さまざまな要素が絡み合いますから一概には言えません。
自分ひとりで判断するのではなく法律のプロである弁護士に相談したほうがよいでしょう。
――子供の養育費はどうなるでしょうか?

若井 弁護士
離婚したのであれば、子供が成人するまでは養育費を払う義務があります。
養育費とDVのでっち上げは関係ありません。
ほかならぬわが子のためですから、これはぜひお支払いいただきたく思いますね。
ただ、払ったお金が子供のために使われていることを確認できる仕組みを準備したほうが安全ですね。
- 子供に会わせてくれないなら、監護権者を決める手続きをすることで解決できるチャンスがある。あくまでも、DVの事実がなかったことをアピールするべき。
- 離婚が決まると子供の親権は、監護実績の多さや子供の年齢といったさまざまな事情をふるいにかけて決定される。親権を欲しいなら弁護士と相談して戦法を模索するべき。
- 子供の養育費は、DVの有無とは関係がない。離婚したら成人するまで欠かさず払う必要がある。
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弁護士を探す(無料)――相談に行っただけでお金はかかりますか?

若井 弁護士
事務所によります。
相談だけなら無料の事務所もありますし、料金が発生する事務所もあります。
弊所は、初回のご相談は無料でお受けしています。
――弁護士報酬は全部でいくらになりますか?

若井 弁護士
これも事務所によります。
一般的には「着手金」と「成功報酬」の請求となります。
着手金は前払いですが、成功報酬は終わってからの支払いとなります。
実のところ、でっちあげDVのような事案ですと、どのような法手続きをとるのか事前に見通しを立てにくい部分があります。
刑事事件等に発展することもありますので。
例えば交渉だけであれば、弊所では20~30万円くらいをいただいております。
――でっちあげDVの依頼は、どの弁護士にも可能でしょうか?

若井 弁護士
「でっちあげDVの解決」を、前面に出している法律事務所は、まだ少ないですね。
「離婚」であれば手掛ける弁護士は多いのですが、「DVをでっちあげられて困っています」といった悩みを受け付けてくれるとは限りません。
DVや男女のトラブルの解決事例が多い弁護士に依頼していただいたほうがよいでしょう。
- 相談だけなら無料でOKの弁護士もいる。正式な依頼をすると着手金を前払いし、すべてが終わってから成功報酬を支払うことが多い。
- でっちあげDVへの対応を依頼する場合、総合的な弁護士報酬を事前に予測することは難しい。
- でっちあげDVを解決した弁護士は多いとは言えない。しかし時間はかかっても、男女間の揉め事を解決した事例を持つ弁護士を探して依頼したほうがよい。
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弁護士を探す(無料)DVの定義が拡大されるにつれて、DVにもとづいた離婚が増えています。そんな中、DVをでっちあげて有利に離婚しようとする人も出てきました。
身に覚えのないDVを理由に離婚を迫られたら、弁護士を早く立てて冷静に否定しながら、戦法を探っていくべきです。相手方のDVの証明を落ち着いて突き崩していく必要があります。
離婚することになったら、財産分与や子供の養育費、そして子供の親権と決めることは数多く出てきます。この場合も不当な要求に応じる必要はありませんし、弁護士とよく協議して望ましい戦略を立てて、実行していきましょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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