【弁護士に聞く】妊娠中に離婚するときに気をつけるべきこと
[投稿日] 2018年06月06日 [最終更新日] 2018年06月08日
離婚・男女を得意としている弁護士
妊娠期間は、新しい家族を迎えるに当たって、夫婦間の絆がさらに深まるきっかけになる期間でもあります。しかし、妊娠期間中に離婚に至ってしまうケースもあります。
妊娠している女性は精神的に不安定な状態に陥りやすいもの。また、男性側も環境の変化に戸惑いがちです。ささいなことがきっかけでケンカになったり、夫が浮気をしてしまい、夫婦間に深い溝ができたりすることもあります。
ここでは、妊娠中に離婚するときに知っておきたい子どもの法的な立場と、離婚の際に必要な手続きについて、離婚問題や男女問題に詳しい小林芽未弁護士にお話を伺いながらご紹介していきます。

(S&M法律事務所法律事務所)
心理学を学んだ経験を活かして、相談者の話をじっくりと聞き、メンタルケアを意識したアドバイスを行う。子育てをする母、また女性視点での弁護活動が好評を得ている。
子どもの親権はどうなる?
――通常、子どもの親権は話し合いや裁判で決めることになりますが、まだ生まれていない子どもの親権は誰が持つことになるのでしょうか。

小林芽未 弁護士
まず、一般的な離婚で離婚届の提出から300日以内に子どもが生まれた場合、その子どもは元夫の子どもと推定されます。これを「推定される嫡出子」といいます。
そして親権ですが、産んだ母親が親権者となるのが民法上の原則です。
例外的に父親が親権を持つことも可能ですが、はじめから親権を父親が持つのではなく、「もともと母親にあった親権を父親に変更する」手続きになるため、家庭裁判所で許可を受けることが必要となります。
許可が出た後、市町村役場に「親権(管理権)届」を提出すれば父親が親権を持つことになります。
離婚と出産、再婚について、詳しくはこちらをご覧ください。
- 子の母親は、懐妊・分娩の事実から母親が誰なのかは明らか。妊娠中に離婚した場合は母親が親権を持つのが原則。
――子どもの戸籍はどうなるのでしょうか?

小林芽未 弁護士
親権が母親にあっても、子どもは父親の戸籍に入っています。
そのため、戸籍を母親と同じにする場合は戸籍に関する手続きを行う必要があります。
まず、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申し立て」の手続きを行うことで、子どもの苗字を母親と同一にできます。
ただ、これは苗字を変更するだけの手続きなので、戸籍はまだ父親のところに残されたままです。
許可が下りた後に市町村役場に「入籍届」を提出しましょう。
子どもの氏と戸籍について、詳しくはこちらをご覧ください。
- 母親が離婚届を提出するだけでは子どもの戸籍は父親の戸籍に残されたまま。そのため、子どもの戸籍を母親のもとに移す「入籍届」の手続きが必要。
- 「子の氏の変更許可申し立て」を行い、子どもの姓の変更手続きを経てから「入籍届」の提出をしなければならない。
養育費を受け取るには
――妊娠中に離婚する場合、まだ生まれていない子どもの養育費を元夫に請求できるのでしょうか。

小林芽未 弁護士
出産前に離婚したとしても、離婚前に妊娠している以上、元夫には生まれてくる子どもに対する扶養義務(養育費支払義務)が生じます。
つまり、子どものための養育費を受け取ることができます。
――離婚後に養育費の未払いが問題になるケースもありますが、継続してしっかりと養育費を受け取るにはどのような手続きが必要になるのでしょうか?

小林芽未 弁護士
妊娠中・出産前の離婚に配偶者が合意しても、養育費をもらえずに悩んでいる母親は非常にたくさんいます。
そのような問題にならないためにも、離婚時に公正証書を作成しましょう。
強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておけば、養育費の支払いが滞ったときに、裁判をしなくても、差し押さえなどで強制的に支払わせることができます。
公正証書の作成方法は公正役場でも教えてもらえますが、弁護士に相談すれば、不利にならないかどうかを考慮して作成できます。気軽に相談してほしいと思います。
養育費について、詳しくはこちらをご覧ください。
- 妊娠中の子どもに対しても、元夫には養育費の支払い義務がある。
- 確実に養育費を支払ってもらうために、公正証書を作成すると良い。
――父親は生まれてくる子どもの顔を見られないまま別れることになりますが、その場合でも父親と子どもの面会はした方がいいのでしょうか?

小林芽未 弁護士
養育費のところでも申し上げた通り、元夫には生まれてくる子どもに対する扶養義務があります。
もし元夫が希望しているのなら面会に関する取り決めをした方がいいでしょう。
面会交流について、詳しくはこちらをご覧ください。
- 生まれてくる子どもが元夫の子である以上、子どもとの面会は原則として認められる。
――妊娠中に離婚を希望する女性が弁護士に相談するとどのようなメリットがありますか?

小林芽未 弁護士
離婚後のことを考えると、一番大切になってくるのはやはりお金だと思います。
母親は妊娠に伴って仕事を休まなければいけなくなることもありますし、出産費用や子育てのお金もかかりますよね。
弁護士が介入すれば、お金に関しても相手と直接交渉し、できるだけ有利な条件で受け取れるように努力するはずです。
弁護士に相談することの一番のメリットはやはりそこではないでしょうか。
弁護士が代理人となって相手と交渉できるので、ストレスの軽減にもなり、出産や育児に専念できるというのも大きなメリットでしょう。
- 弁護士に相談することで、有利な条件で離婚できる可能性が高まる。
- 弁護士に相談すれば、相手との交渉事や煩雑な離婚手続きを弁護士に任せて、女性は生まれてくる子どもに集中できる。
妊娠中の離婚は、精神面や体力面、また金銭面を考えると、できるだけ避けたいものです。
ですが、それでも離婚を決意しなければならない事情がある場合は、離婚後の生活費、仕事、子どもの預け先などを考えた上で離婚の準備を始めることをおすすめします。
また、これからの生活やお母さんの身体のためにも、いちどは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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