【弁護士に聞く】離婚する前に決めるべきこと、準備は何かある?
[投稿日] 2018年07月09日 [最終更新日] 2018年07月09日
離婚は、離婚届を出せば成立します。しかし、離婚に関わる決め事や準備は書類だけでは完了しないようです。
離婚の前には、どんなことを決めるべきなのでしょうか?また、離婚するためにはどんな準備を行えばよいのでしょうか。
離婚問題を含む民事の問題に詳しい横浜西口法律事務所の飯島俊弁護士に教えていただきました。

(横浜西口法律事務所)
プロバスケットボール選手として活躍していた、日本一背の高い弁護士。
「身近で相談しやすい」をモットーに、離婚問題をはじめとした民事・家事全般を幅広く取り扱う、地元密着型弁護士。
離婚する前にしなければならないこと
――離婚しようと決めた時、最初に何をしたらいいですか。

飯島 弁護士
まずは、弁護士に相談して欲しいですね。
実際に、離婚自体を迷っていて、離婚したらどうなるのかという見込みを聞きに来る相談者様も多くいらっしゃいます。
離婚をしようと決める前、離婚を迷った時点で相談にお越しいただいたほうが、よいと思います。
――離婚届を出す前にやっておくことはありますか。

飯島 弁護士
離婚の条件など、最低限のことを決める必要があります。
慰謝料や財産分与のことは離婚後でも決めることができますが、少なくとも子供がいる場合は「お子さんの親権をどちらが持つか」を決めないと離婚届が提出できません。
ただ、できれば、離婚するかしないかを含めて、条件を決めてから先のことを考えた方がいいですね。
離婚届を出してしまうと離婚が成立してしまうので、交渉材料を一つ失ってしまうことになります。
例えばどちらかが離婚をしたくない場合などは、「離婚をしてあげるから」ということで、慰謝料などで有利な条件を引き出す交渉ができます。
――離婚が決まったら、親族や会社にはいつ報告すればよいでしょうか。

飯島 弁護士
離婚届を出して法的に離婚が成立したら、保険や年金などの手続きがあるので、会社には報告しなくてはならなくなります。
しかし、親族に対しては報告義務があるわけではないので、別にいつ報告してもかまいません。
離婚前に相談してもいいですし、話したくないなら黙っていてもいいのです。
――離婚の取り決めは、どのように記録すればいいでしょうか。

飯島 弁護士
自分たちで書面を作ってもかまいません。
自分たちが決めたことと日付を記載して、印鑑を押しておくだけでも大丈夫です。
しかし、慰謝料や養育費など、お金に関することを決めた場合は、公正証書を作っておくべきです。
自分たちで約束して作った書面も有効ですが、支払いが滞ってしまった場合、差し押さえなどの強制執行をするためには、裁判が必要になってしまいます。
認諾文言付きの公正証書を作っておくと、裁判の手間が省け、公正証書に基づいてすぐに差し押さえができます。
特にお金をもらう側は、公正証書を作るべきです。
- 離婚を決める前に、離婚後どうなるかを確認する。離婚自体が交渉材料になる場合もあるので、まずは弁護士に相談する。
- 金銭に関わる取り決めをした場合は、公正証書を作っておいた方が良い。
――離婚する前に別居したほうがよいのでしょうか。

飯島 弁護士
早めの別居をおすすめします。
話し合いや調停を行うと、離婚するまでにかなりの時間がかかります。
その間、ずっと相手と顔を合わせるのは苦痛ですよね。
調停では、お互いが顔を合わせないようにして調停委員と話をします。
顔を合わせないように調停をしているのに、家に帰って配偶者がいたのでは、意味がなくなってしまいますよね。
それに、これまで担当した方を見ていても、別居した後の方が、皆さんスッキリした顔をされています。
経済的な理由などで住む場所の確保が難しい場合もありますが、精神的にも早めに別居した方がいいでしょう。
――配偶者の扶養に入っている場合、離婚後の生活が不安になることが多いようです。離婚前にできることはありますか。

飯島 弁護士
まず、婚姻関係にある間は、生活保護という公的な援助は受けられません。
就職が可能な場合には、すぐに就職して収入を得た方がいいですね。
親族の援助が可能なら、それに頼るという方法もあります。
別居すると、離婚までは婚姻費用という生活費用を配偶者に請求できます。
これは別居した時点からもらえるお金なので、婚姻費用をもらえる手筈を整えてから別居した方がいいですね。
──相手は支払ってくれるものでしょうか。

飯島 弁護士
生活に必要なお金なので、婚姻費用だけを先に調停で決める、ということもできます。
なお、婚姻費用の金額は配偶者にどれだけ支払う能力があるかによっても話が変わってきます。
サラリーマンの場合は収入がはっきりしているので金額も出しやすいのですが、自営業などの場合は収入がはっきりしなかったりして、請求がしにくいことがあります。
いずれにしても、事前に弁護士に相談してもらえれば、婚姻費用をもらうための道筋を立てやすくなります。
――離婚後も配偶者名義の家に住み続けることはできますか。

飯島 弁護士
難しいですね。
例えばローンが夫名義だった場合、妻に夫と同じくらいの収入があれば、ローンを借り換えて家の名義ごと妻に変えて住む、ということは可能です。
しかし、こういったケースであっても、家がローンよりもプラスの査定だった場合は夫に差額を返還するなど、何かと面倒なことが多いのです。
また、離婚した場合、これまでの生活よりも、生活水準が下がるのはほぼ確実です。
その場合、離婚前に住んでいた家に住み続ける生活では、維持ができなくなる可能性が高いですよね。
家自体も、家族全員で住むための家を購入しているので、人が減っても住み続けるのは損な選択です。
身の丈にあった生活をするためにも、家に執着をせず、引っ越しも検討したほうがよいでしょう。
- 離婚には時間がかかる場合が多いので、早めの別居を検討する。
- 離婚するまでは、配偶者から婚姻費用がもらえる。早めに弁護士に相談して、別居前に手続きをしておくとよい。
- 離婚前の家に執着せず、新しい家族の形にあった家を探すのがおすすめ。
離婚前にできる財産分与の準備
――離婚する前に財産分与を行う場合、どうしたらいいでしょうか。

飯島 弁護士
基本的には弁護士に相談した方がいいですね。
自分たちで決めると、何をどう分けたらいいかがはっきりしないこともあります。
例えば退職金ひとつとっても、今の会社で働き続けた場合に出るものなので、分与の対象にした方がいいのかどうかなど、複雑です。
先ほど話題に出た家の分与も、ローンが残っている場合はどうやって分けるのかなど、なかなか難しい話になります。
依頼をするかどうかは別にしても、やはり早めに弁護士に相談していただいたほうがよいでしょう。
――それぞれの名義の財産はどうなりますか。

飯島 弁護士
独身時代に築いた財産については、個人の資産になります。
ですが、結婚後に増えた分は、共有の財産になりやすいです。
例えば、夫が独身時代300万円貯金していて、結婚後に増減して現在400万円あったとします。
この場合、300万円は夫個人の財産となり、残りの100万円が共有財産となります。
個人資産がどれだけあるのかを証明するには、結婚前にどれだけ財産を持っていたかを明らかにする必要があります。
銀行は10年経過すると履歴を廃棄してしまうので、古い通帳も捨てないで保管しておくことをおすすめします。
――離婚後も生活費を請求することはできますか。

飯島 弁護士
離婚した後は、婚姻費用はもらえません。
しかし事案によっては、当面の生活費を財産分与の中に盛り込む場合もあります。
例えば夫にある程度財産があって妻が専業主婦だったという場合などには、プラスされることが多いですね。
- 財産分与は複雑なので、弁護士に相談した方が良い。
- 独身時代の財産は個人財産になる。証明するためにも、古い通帳も捨てずに保管しておく。
- 離婚後の生活費はもらえないが、財産分与にプラスしてもらえることもある。
――親権を得たい場合、有利にする方法はありますか。

飯島 弁護士
子供の年齢にもよります。
お子さんが小さいと、やはり母親側がどうしても有利ですね。
子供の親権は、経済状況よりも、「これまで子供が置かれていた環境を変えない」ことに重点が置かれます。
専業主婦の妻が面倒を見ていたのなら収入がなくても母親が有利になりますし、妻がネグレクト気味で夫が面倒を見ていたのなら、父親が親権を得る可能性もあります。
離婚を前提に別居している場合、子供と一緒に暮らしていた側が親権を得やすいですね。
例えば妻が出て行ってしまって、夫が長期間子供を監護していたのなら、その実績が高く評価されて夫が親権を取れる可能性が上がります。
親権が欲しいのなら、子供と長く接しているという実績が大切です。
――子供との面会交流権はどのように決まりますか。

飯島 弁護士
面会交流権は子供の親であれば持てる基本的な権利なので、よほどの理由がなければ認められます。
ただ、面会交流は強制的に行えるものではありません。
子供が拒否した場合はもちろん、親権を持つ側の親が拒否した場合でも面会できなくなる可能性があります。
子供との面会権は、親権を持つ側に強い決定権があるというわけです。
――離婚後、子供の苗字はどうなりますか?

飯島 弁護士
よくある「夫が戸籍の筆頭者で、妻が親権を持つ」というケースで話をします。
子供が離婚後も夫の苗字を名乗るなら、何も手続きをする必要はありません。
離婚をした場合、妻が夫の戸籍を出て、新しく戸籍を作ることになります。
何も手続きをしなければ子供は父親の戸籍に入ったままなので、苗字は変わらないのです。
子供が妻の苗字を名乗りたいなら、妻が夫の戸籍を出て昔の氏に戻った後で、子供の苗字変更の手続き行う必要があります。
詳しい手続きの方法は、弁護士に相談をするか、戸籍を担当している最寄りの役所に相談しても教えてもらえると思います。
- 親権は子供の監護実績によって決まる。
- 面会交流権は親なら基本的に持てる権利だが、親権者に強い決定権がある。
- 離婚後、子供が戸籍の筆頭者の苗字を名乗るなら手続きは不要。苗字を変えるなら、変更の手続きが必要。
実際に離婚をするとなると、行うべきこと、決めるべきことは数多くあります。
特に財産や親権のことは複雑なので、早急に弁護士に相談をすることが重要です。
依頼をするかどうかは別にしても、離婚を検討しているなら専門家に話をしてみましょう。
今後どうするべきなのか整理して、道筋が見えて来るかもしれません。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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