婚約者と別れるにはどうすればいい? 婚約解消・破棄の方法まとめ
[投稿日] 2017年07月13日 [最終更新日] 2017年07月13日
婚約・婚約破棄を得意としている弁護士
野々垣 吉曜 弁護士 京都府
桜月法律事務所齋藤 健博 弁護士 東京都
銀座さいとう法律事務所吉田 圭二 弁護士 東京都
小杉・吉田法律事務所結婚を決意し婚約をしたにも関わらず、何らかの理由で相手と別れたくなってしまった──。
こんな状況に陥ることも、残念ながらありえます。可能であれば婚約を解消したいところですが、そもそも婚約とはどんな状態なのでしょうか。また、婚約を解消すると慰謝料は請求されてしまうのでしょうか。
ここでは、婚約の解消・破棄に関する疑問にお答えします。
婚約は、男女の合意のみによって成立する最初に、婚約の定義を確認しておきましょう。
「婚約」については、法律に特別な規定はありません。「男女間での将来結婚しようとする合意」であり、「誠心誠意を以って将来に夫婦たるべき予期の下に」なされる必要がある、と定義した判例があります。
この判例は、誠心誠意判決と呼ばれています(大判昭和6年2月20日)。判例は、男女間の将来的な婚姻についての契約、と位置づけているといえます。未成年であっても意思能力があれば婚約することができます。
(中略)
婚約をすると、将来婚姻を成立させるよう、互いに誠実に努力する義務を負います。これが婚約の効力です。
もっとも、一方の婚約者がこの義務を果たさないからといって、相手方にこの義務の履行を強制することは出来ません。この理由については、強制的に結婚させても、結婚本来の目的を果たすことは出来ないからとされています。
婚約に関する規定は法律にはなく、男女が本気で結婚しようと合意すれば、婚約は成立したとみなされるわけですね。そして、結婚に向けてお互いに努力しなければならないのです。でも、「口約束だけではなく、結納や婚約指輪の交換をしなければ婚約にならないのでは?」と考える人もいることでしょう。これらはどういう扱いになるのでしょうか。
婚約は、何の方式も必要としない「不要式行為」であるとされています(最判昭和38年9月5日)。したがって、婚約をするにあたり何か特別なことをする必要はありません。婚約には通常、結納や婚約指輪の交換が伴いますが、これは婚約成立を証明する事実にはなるものの、婚姻の成立の要件ではないとされています(大判大9年5月28日)。
したがって、当事者の気持ちが婚約するということで合致した場合には、婚約が成立するというのが原則となります。
結納や婚約指輪の交換をしていなくても、両者の合意があれば婚約は成立するということですね。書面も作らない口約束でさえも、非常に重い意味を持っていることがわかります。
では、男女が同棲していた場合はどうなるのでしょう。
婚約は、当事者である男女の合意だけで成立し、特別な儀式や書類は必要ありません。
(中略)
とはいえ、あくまでも将来夫婦になろうという男女間の合意が必要なので、男女が同棲しただけでは婚約が成立したことにはなりません。
やはり、重要なのは合意であって、同棲していたという事実は婚約に結びつかないということですね。婚約をしたいのであれば、はっきりと相手に伝える必要があるというわけです。
婚約は一方的な解消も可能だが理由によってはペナルティもそれでは、婚約を解消するにはどうすればいいのでしょうか。成立時と同様に両者の合意が必要なのか、それとも一方的に解消できるのかを見てみましょう。
婚約は、当事者の合意、一方当事者の解消の意思表示によって解消することが出来ます。つまり、婚約者同士で話し合いを行って解消をすることも出来ますし、一方的に意思表示をして解消することもできるということです。
前にも述べたとおり、婚約は双方が義務を負う契約の性質をもちますので、婚約の解消をするということは、義務違反としての様々なペナルティを負う場合もあります。それらに備えて準備をしておく必要があります。
意外かもしれませんが、婚約は一方的に解消することも可能なのです。これは、両者の合意が必要な離婚との大きな違いです。ただし、慰謝料などのペナルティを負う場合があります。できる限り両者で話し合い、穏便に解消するべきでしょう。
正当な理由になるのは「相手の大きな非」か「自分の困窮」たとえ自分の都合で婚約を解消するのだとしても、できればペナルティは負いたくないものです。どうすればいいのでしょうか。
一方当事者による婚約の解消の意思表示を、「婚約の破棄」といいます。結婚を強制することはできませんが、婚約の破棄が正当な理由によらない場合は、他方の当事者は婚約解消によって生じた精神的・財産的損害の賠償を請求することが出来ます。
したがって、相手の身勝手な理由により婚約破棄をされた方は、金銭等の賠償を請求することが出来ます。もっとも、婚約破棄に「正当な理由」がある場合には賠償を請求することは出来ません。
つまり、「正当な理由」さえあれば、ペナルティを負わずに「婚約を破棄」できるわけです。では、何が正当な理由とみなされるのでしょうか。
この「正当な理由」についてですが、裁判所が否定したものとして、部落差別を理由とした婚約破棄、宗教の違いを理由とした婚約破棄、などが挙げられます。したがって、他に好きな人が出来たという理由は到底「正当な理由」とは認められず、賠償を請求することができるでしょう。
他方、「正当な理由」として認められるものとしては、婚約者の不貞行為、婚約者からの暴力や侮辱、日常生活が困難になる程の経済状況の大きな変化などが考えられますが、認められる範囲はなかなか狭いものとなっています。
「婚約者が他の人と交際していた」「婚約者から暴力を受けた」「職を失った上に莫大な借金を背負ってしまった」など、妥当性があると考えられる理由があれば、ペナルティを負わずに婚約を破棄できる可能性があるということですね。
逆にいえば、婚約者に大きな非があるか、結婚生活が不可能になるほどの事態が起きなければ、ペナルティなしに婚約破棄はできないのです。
正当な理由はないけれど、どうしても婚約を破棄したいというのであれば、それも1つの選択でしょう。自分の非を承知で婚約を破棄するとして、慰謝料の金額はどの程度になるのでしょうか。
婚約の不当破棄による精神的損害に対する賠償(慰謝料)の算定は、ケース毎に大きく変わり、数十万円から数百万円の幅があります。
(中略)
見合い後2週間で結納を交わして婚約し、3ヵ月後に結婚式を行うことを約束して、女性に嫁入り道具を指示して準備させたにもかかわらず、女性の容姿等に抱いていた不満から結婚式の約1週間前に理由を告げることなく仲人を通じて電話1本で婚約を破棄したケースでは、その態度等から400万円の慰謝料請求に対して400万円の支払いを認めています。
なお、このケースでは、男性の母親の態度も問題とされ、第三者である母親も共同不法行為者として訴えられ、裁判所は責任を認めています(徳島地判昭和57年6月21日)。
(中略)
婚約相手が被差別部落出身であることを理由に家族に反対されて婚約破棄となったケースでは、差別で被った精神的苦痛が痛烈であっただろうと察せられることや、このことがもととなり婚約破棄された側が退職を余儀なくされたことなどを考慮して、1000万円の慰謝料請求に対して500万円の支払いを認めています(大阪地判昭和58年3月28日)。
このケースについても、反対した両親が共同不法行為者として訴えられ、裁判所は責任を認めています。
相場にはかなりの幅があり、あまりに悪質なケースや差別が絡むケースでは、400万~500万円の慰謝料を払わなければならないこともありえるわけです。婚約破棄をする場合は、相手を傷つけないよう十分に配慮し、できるだけ早い段階で告げることが望ましいといえます。
まとめ:婚約破棄はリスクを孕む。迂闊な婚約をしないことが重要たとえ正当な理由があったとしても、一度決めた婚約を破棄することは、トラブルを招く可能性があります。法律は人間の感情までは縛れないからです。Legalusの婚約・婚約破棄に関する法律Q&Aにも、多くの人が相談に訪れています。
婚約破棄でトラブルを起こさないためには、迂闊な婚約をしないようにすることも大切です。
どうしても婚約破棄をしなければならない状況に陥ったら、穏便な解決を目指すために、離婚・男女問題に強い弁護士に相談してみるのもいいでしょう。
お互いの将来のためにも、誠意を持って話し合いをしてください。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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