婚約不履行の慰謝料はどのくらい? 相場のまとめ
[投稿日] 2017年08月01日 [最終更新日] 2017年08月01日
婚約・婚約破棄を得意としている弁護士
吉田 圭二 弁護士 東京都
小杉・吉田法律事務所齋藤 健博 弁護士 東京都
銀座さいとう法律事務所婚約者がいる人は、やがて来る結婚生活への期待も高まり、いろいろな準備も始めているでしょう。友達や親族に幸せな報告もしているかもしれません。
それだけに、相手が突然婚約をなかったことにしたいと言ってきたら、精神的なダメージは計り知れません。
このような場合、相手に慰謝料は請求できるのでしょうか。ここでは、婚約不履行の慰謝料が請求できるケースと、慰謝料の相場について解説します。
婚約の破棄(不履行)があれば、損害賠償を請求できるまずは、婚約を一方的に取り消された場合、相手に対して何を請求できるのかを見ておきましょう。
一方当事者による婚約の解消の意思表示を、「婚約の破棄」といいます。結婚を強制することはできませんが、婚約の破棄が正当な理由によらない場合は、他方の当事者は婚約解消によって生じた精神的・財産的損害の賠償を請求することが出来ます。
したがって、相手の身勝手な理由により婚約破棄をされた方は、金銭等の賠償を請求することが出来ます。
正当な理由なく婚約の破棄(不履行)をされた場合、損害賠償が可能になるということですね。内訳としては、精神的な苦痛に対する慰謝料と、新居の購入や引き出物の準備が無意味になったことに対する賠償があります。
精神的な苦痛は具体的な被害額に換算できませんから、相場が重要になります。
婚約の破棄が発生するには、前提として婚約が成立していなければなりません。根拠なく「自分たちは婚約している」と思っていたのであれば、相手が結婚の意思を否定しても、婚約を破棄されたことにはならないのです。婚約はどの時点で成立するのでしょうか。
婚約は、何の方式も必要としない「不要式行為」であるとされています(最判昭和38年9月5日)。したがって、婚約をするにあたり何か特別なことをする必要はありません。婚約には通常、結納や婚約指輪の交換が伴いますが、これは婚約成立を証明する事実にはなるものの、婚姻の成立の要件ではないとされています(大判大9年5月28日)。
したがって、当事者の気持ちが婚約するということで合致した場合には、婚約が成立するというのが原則となります。
当事者同士の合意があれば、婚約は成立するということですね。
結納や婚約指輪の交換も「婚約を証明する事実」にはなります。すでに結納や指輪の交換、親族や友人へのあいさつをすませていた場合は、より確かに婚約の成立を証明できるでしょう。
婚約の破棄は、正当な理由があれば認められます。どのような理由であれば、正当と判断されるのでしょうか。
この「正当な理由」についてですが、裁判所が否定したものとして、部落差別を理由とした婚約破棄、宗教の違いを理由とした婚約破棄、などが挙げられます。したがって、他に好きな人が出来たという理由は到底「正当な理由」とは認められず、賠償を請求することができるでしょう。
他方、「正当な理由」として認められるものとしては、婚約者の不貞行為、婚約者からの暴力や侮辱、日常生活が困難になる程の経済状況の大きな変化などが考えられますが、認められる範囲はなかなか狭いものとなっています。
正当な理由として認められるのは、極めて深刻なケースに限られることがわかります。
婚約者以外と肉体関係を持っていた、婚約者に暴力を振るった、返済不可能なほどの借金を背負ったなど、結婚生活を破綻させるのに十分な理由が必要となるのです。こういった事情がなければ、慰謝料を取れる可能性は高いといえるでしょう。
それでは、婚約破棄の慰謝料の相場はどの程度なのでしょうか。
まず、婚約破棄により精神的なショックを受けたとして、慰謝料を請求できます。具体的な金額は、交際期間や婚約期間、婚約破棄の理由や時期、相手方の支払能力などにより異なりますが、一般的な相場は50万円~300万円程度のようです。
また、慰謝料以外の実質的な損害として、婚約破棄により通常生じるであろう損害も賠償請求できます(民法416条、相当因果関係)。
たとえば、婚礼家具代、新居準備費用、式や披露宴のキャンセル費用、引き出物費用、仲人に対する謝礼、新婚旅行費用などがあれば、それも合わせて請求できるのです。
慰謝料として50万~300万円、さらに結婚の準備にかかった費用を請求できるということですね。少なくとも経済的なダメージは補填でき、そこへ慰謝料を上乗せできるわけです。慰謝料を確実に取りたければ、自分に不貞行為などの問題がなかったこと、相手に経済的な余裕があること、婚約破棄の理由が悪質であることなどを毅然と主張しましょう。
まとめ:慰謝料を勝ち取り、けじめをつけて再出発しよう婚約までたどり着いた相手に裏切られることは、その後の人生に影響を及ぼしかねません。Legalusの婚約・婚約破棄に関する法律Q&Aにも、数多くの相談が寄せられています。
精神的なダメージを回復して前へ進むためには、慰謝料という形でけじめをつけさせることが重要です。相手も反論してくる可能性がありますから、自分の身を守る準備はしなければなりません。助けがほしい時は、離婚・男女問題に強い弁護士の力を借りてみましょう。人生の再出発のために、納得の行く形での解決を目指してください。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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