離婚の理由となる不貞行為とは何か? 定義と該当基準のまとめ
[投稿日] 2017年07月27日 [最終更新日] 2017年07月27日
不倫・不貞・浮気を得意としている弁護士
夫婦の離婚原因として、浮気・不倫は上位に位置しています。
しかし、“浮気”をされたからといって必ず離婚できるわけではありません。
夫婦の合意があれば理由を問わず離婚は可能ですが、離婚訴訟を起こす場合は法的な根拠が必要になります。どのような形の浮気であれば、離婚の理由として使えるのでしょうか。法律と判例を確認していきましょう。
法律上、浮気と離婚の関係は以下のように定められています。
浮気と不貞行為、これらはいずれも「結婚しているまたは交際中であるにも関わらず、他の異性と好ましくない関係をもつ」いう意味合いをもつ言葉です。
両者の違いは、「民法上の離婚事由であるかないか」という点にあります。民法770条1項には、離婚事由がいくつか規定されていますが、その中の一つが「配偶者に不貞な行為があったとき」(同条項1号)です。
法律では、配偶者に「不貞行為」があった場合に、離婚することができると定められているわけですね。
では「不貞行為」とは何なのでしょうか。その答えは判例で示されています。
そして、「不貞な行為」とは、「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいいます(最高裁昭和41年11月15日判決)。配偶者とは、法律上の婚姻関係の相手です。
法律上の婚姻関係にある夫婦は、互いに配偶者以外の相手と性的関係をもたない義務をもつとされています。これを貞操義務といいます。この貞操義務に違反して、他の異性と肉体関係をもつことが不貞行為です。一方、浮気という言葉は、例えば「彼女が浮気した」というように、婚姻関係にない場合でも使います。また、「二人きりで食事に行った」「キスをした」など、浮気とされる行為も必ずしも肉体関係をもった場合に限られません。
つまり、浮気と不貞行為のボーダーラインは、(1)婚姻関係にあるか(2)肉体関係をもったかという点にあると考えられます。
性的関係を持った場合、つまり性交渉を行った場合に、「不貞行為」があったと認められるわけですね。
配偶者が浮気を認めたとしても、肉体関係があったことを証明できなければ、離婚の理由としては使えないのです。
離婚はそう簡単に決断できるものではありません。配偶者の不貞行為が発覚しても、関係を修復しようと努力する人はいることでしょう。しかし、それでも夫婦関係が破綻してしまうことはありえます。
この場合、過去の不貞行為を理由に離婚することはできるのでしょうか。
この点、妻が不貞行為をしたが、その後の話し合いで妻に反省の気持ちが認められたため、夫婦生活も復活し、半年ほど平穏な状態が続いたが、夫が猜疑心を募らせることが常となったため、妻も夫の態度に嫌気がさして家を出、ついに離婚請求するに至ったという事案で、「相手方配偶者が右不貞行為を宥恕したときは、その不貞行為を理由に有責性を主張することは宥恕と矛盾し、信義則上許されない」と判断した高裁判決があります(東京高裁平成4年12月24日判決)。
この判断に従えば、一旦ご主人の不貞行為を許し、通常の夫婦生活を送りながら、再び過去の不貞行為を理由に離婚請求することは認められない、ということになります。もちろん、2月の発覚以来、不貞行為を許すような言動を取らず、夫婦生活も復活していないような場合には、そもそも「宥恕して」いないのですから、この限りではありません。
宥恕(ゆうじょ)とは、寛大な心で罪を許すという意味です。
つまり、一度配偶者の不貞行為を許したのであれば、その不貞行為の事実は離婚の理由として使えなくなるのです。
不貞行為を許すかどうかは、将来のことを考えて慎重に決める必要があるということです。
別居中であれば、不貞行為にならない可能性もある関係が悪化した夫婦は別居を選択することがあります。愛情がなくなっていたとしても婚姻関係は継続しているわけですが、別居中に配偶者以外と肉体関係を持った場合、不貞行為になるのでしょうか。
妻が子供をつれて実家に帰ったとなると、既に実質婚姻破綻状態として、他の男性との交際が不貞行為とならない可能性があります。
一概には言えませんが、不貞行為との主張立証は容易ではないと予想されます。
状況にもよりますが、夫婦の関係が完全に破綻していれば、不貞行為にならない可能性もあるということですね。別居の期間や原因などを考慮し、総合的に判断されることになるでしょう。
慰謝料の相場は100万円~300万円。状況次第で1000万円超も最後に、不貞行為が原因で離婚した場合の慰謝料について見ておきましょう。性格の不一致などが原因の場合と違い、不貞行為があった側の責任は明白です。慰謝料の相場はどの程度なのでしょうか。
不貞行為による慰謝料の相場は約100万円から300万円です。
子供が成年に達していること、17年同居した後に9年以上別居していること、夫に婚姻共同生活を回復する意思がないこと、妻のした不貞行為が2年で終わっていることを鑑み、夫に対し200万円の慰謝料を認めた事例(東京高判平成3年7月26日判時1399号42頁)、高額の慰謝料が認められたケースとしては、有責者たる夫は別の女性と子を設け相当程度の生活をしているのに対し、実兄の家に一人でひっそりと生活してきた73歳の妻に対し1,500万円の慰謝料が認められた事例(東京高判平成元年11月22日判時1330号48頁)などがあります。
相場は100万円~300万円ほどですが、離婚後の生活の状況などによっては、1000万円を超えるケースもあることがわかります。慰謝料は精神的な苦痛を補填するものですから、不貞行為によってどれほどのダメージがあったのかを、客観的に評価する必要があるのです。
まとめ:泣き寝入りせず、弁護士に相談するなどして解決しよう不貞行為は、配偶者に対する大きな裏切りです。本音を言えば、他の異性とキスをしただけでも許せないという人は多いでしょう。しかし、肉体関係がなければ不貞行為にはなりませんから、離婚の理由には使えません。このような扱いに納得がいかず、Legalusの不倫・不貞・浮気に関する弁護士Q&Aに相談を寄せる人も大勢います。
1番よくないのは泣き寝入りすることです。あきらめる前に、離婚・男女問題に強い弁護士に相談するという方法もあります。正しい知識を身に着けて、配偶者と向き合いましょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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