【弁護士に聞く】不貞行為で請求できる慰謝料ってどのくらい?相場以下になってしまう理由とは
[投稿日] 2018年04月27日 [最終更新日] 2018年05月02日
不倫・不貞・浮気を得意としている弁護士
配偶者の不貞行為が発覚し、慰謝料を請求することになった時、気になるのは「慰謝料がどのくらいもらえるか」ということですよね。また逆に、いくらとられてしまうのかも、気になるところです。
実際に、不貞行為の慰謝料に相場はあるのでしょうか?
また相場を上回るか下回るかを左右するポイントはあるのでしょうか?
今回はこれらの疑問に関して、虎ノ門法律経済事務所の齋藤健博弁護士にお話を伺いました。

(虎ノ門法律経済事務所池袋支店 所属)
これまでさまざまな離婚・男女問題を扱っており、その中でも特に不貞行為に関する案件を得意としている。依頼者の話を丁寧に聞き、まずは「現状の整理」からサポートすることを重視している。
――不貞行為の慰謝料はどんな時にでも請求できるのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
やはり証拠がないと、裁判での請求は厳しくなってきます。不貞行為の現場を押さえた写真や動画といった不貞行為の証拠は、皆さん持っていないことが多いのです。
ただ、証拠がなくても、裁判などではなくて交渉で、かつ、相手方が明確に認めている場合は別ですね。
――写真や動画を用意するのはなんとなく難しそうな印象ですが、それらがない場合、慰謝料を請求することは難しいのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
いいえ。そういう場合でもLINEやメールのやり取りの証拠があれば、それらから「こういうことがあったのではないか」ということを立証していくこともできます。
当然、きわどい動画がたくさんあることはそう多くはありません。それでもあきらめずに、さまざまな対応をしていきます。
不倫の証拠について、詳しくはこちらをご覧ください。
――なるほど。他に請求できないケースはありますか?

齋藤 健博 弁護士
あとは相手方から反論をされてしまった時ですかね。
慰謝料とは「心を傷つけられた」ことに対する正当な対価、慰謝の表れですから、傷つく要素がなかったことを主張されると難しくなってくることがあります。
――具体的にはどのような主張なのですか?

齋藤 健博 弁護士
例えば、一番多いのが「もともとあなたたちの夫婦関係は破綻していましたよね?だから心を傷つけられてないですよね?」といういわゆる破綻の抗弁です。
不貞行為の相手が、夫婦関係が破綻している証拠を用意して、それによって「夫婦関係は破綻していた」と認められてしまうと、慰謝料を取ることは難しくなるか、大幅に減額する要素にはなります。
あとでお話しますが、離婚にまで至ってしまえば当然別です。心を傷つけられる程度が大きいと説明がつくので。
- 不貞行為の証拠がない場合は、不貞行為の慰謝料を請求できない。
- 不貞行為をした加害者側から、破綻の抗弁(もともと夫婦関係は破綻していた)と主張され、主張が認められた場合は慰謝料を請求できない。
――不貞行為の慰謝料に相場はあるのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
これは離婚するか否かで変わってきます。
離婚をする場合は多ければ300万円程度になりますが、離婚しない場合は100万円を切ることもあります。慰謝料とは心を傷つけられた対価ですので、離婚をする場合の方が高くなるのです。
――この相場とは、配偶者と不倫相手の双方に請求した場合なのでしょうか、それともどちらか片方に請求した場合なのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
実際にはどちらかのみ払うということもありますが、2人合計での相場です。
全体の被害金額を確定することになります。ただどちらがどれくらいというのを明言するのは少し難しいです。
不倫の慰謝料は不真正連帯債務というものになり、配偶者と不貞行為の相手は同じ義務を負うことになります。
ですから、まずは全体額を定めます。この時点では、どちらにも請求することができ、その後で求償割合を確認し、多く払いすぎた方もう一方の加害者に請求するという流れです。
例えば全体額が300万円だったとしましょう。
配偶者の方から誘ったというように、配偶者の方が責任が重く「配偶者:不貞行為の相手=8:2」の責任割合となったとします。
この場合は、300万円をこの割合で分けて配偶者の負担が240万円、配偶者の不貞行為の相手の負担が60万円となります。
――この金額をそれぞれに請求することになるのでしょうか?
それでもいいですが、慰謝料を求める側は、どちらにも満額を請求できます。
ですから、「不倫相手に全額の300万円を支払ってもらう」ということは可能ですが、不倫相手は配偶者に240万円を請求することができます。
これは求償権といって、被害を賠償しすぎた側が請求することがあるということです。
Point!- 不貞行為の慰謝料の相場は、離婚する場合は最大300万円離婚しない場合は100万円を下回ることもある。
- 慰謝料は不倫相手との不真正連帯債務。責任によって割合を分け、多く支払った側はもう一方に求償してもらえる。
その他、離婚に関する慰謝料について詳しくはこちらもご覧ください。
――慰謝料を相場以上に請求できるのは、どのような場合ですか?

齋藤 健博 弁護士
相手との交渉材料がある場合です。
例えば、配偶者の不貞行為の相手が家族に知られたくない場合などは、相場以上に合意できる場合が多いですね。
――具体的にどのようなことを交渉するのですか?

齋藤 健博 弁護士
例えば「慰謝料をこの金額払ってくれるのであれば、こちらとしてはもう接触しないです」という接触禁止を付けたり、「このことについてはどこにも言わない」という機密条項を付けたりという交渉が多いですかね。
あとは、気持ちの問題が当然ありますから、陳謝文言・謝罪文言をいれて、謝罪を明確にする解決もありますね。
――逆に慰謝料が相場を下回るケースはありますか?

齋藤 健博 弁護士
当事者同士で感情的にやり取りをし、こじらせてしまった場合ですかね。
当事者同士が「あなたが悪い」だとか、「大切にしていなかったくせに」というように揉めてしまって、「もう話もしたくない」と言われてしまうと厳しいです。
そのようにこじらせてしまった場合は、交渉段階で解決は難しくなるでしょう。そうすると、裁判、訴訟、になってしまいますので、そんなに多くもらうことはできないですね。
やはり一度冷静に話し合い、相手に反省してもらうことが大切になります。
――そのように当事者同士で揉めてしまった後で弁護士に相談に来る方というのはいらっしゃるのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
結構多いですね。
ただ、揉めてしまった後ですと、交渉という選択ができなくなってしまっていて、すでに裁判しか打つ手はなくなってしまいます。
そうなると先ほど申し上げた通り費用は掛かってきてしまいますし、相場を下回る場合も多いですね。
先ほど申し上げたように、証拠がどうしても必要になってくる。
- 接触禁止などの条件をつけた交渉を行なえる場合、相場以上に請求できることもある。
- 一方、弁護士に相談する前に当事者同士で揉めてしまった場合は裁判となり、相場を下回ってしまうことが多い。
――実際に請求するときに必要なものを教えてください。

齋藤 健博 弁護士
まずは証拠が必要になってきます。
写真や動画があればベストですが、LINEでの会話記録、他には宿泊先の領収書や、帰りが遅くなったころの日記などでも証拠になります。
写真からは、映っている内容をみるというよりは、いつどこでとられたものであるのか、などの情報が重要になってきます。
――他に気を付けることはありますか?

齋藤 健博 弁護士
先ほども申し上げた通り、当事者同士で話し合いをしないようにすることですね。
感情的なやり取りをしてしまうと、こちらが取れる手法もかなり限られてしまいますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
――最後に、不貞行為の慰謝料請求について悩んでいる方に一言お願いします。

齋藤 健博 弁護士
不貞行為の問題を多数扱っていると泣き寝入りしている人が多くみられるし、どう処理していいのかわからなくて、困っている人がたくさんいることをいつも感じています。
不貞行為と簡単にいっても、これは家族間の機微な感情を扱う、重大なことですよね。
当然お子さんがいれば、悪影響も甚だしい。
また、逆の立場から言えば、だからといって不当に多額な金額を支払う必要はありません。
例えば1000万円の請求をうけていても、それは、責任の範囲からは大きくずれています。
不貞行為をされた側も、してしまった側も、抱え込みすぎずに弁護士に相談されることをお勧めしています。
- 不貞行為の慰謝料を請求するときに大切なのは「証拠をそろえること」「当事者間でやり取りをしないこと」
不貞行為の証拠がない場合や、夫婦関係がすでに破綻していたと立証された場合には、そもそも請求することが難しくなります。
また、慰謝料の相場は、離婚する場合には最大300万円、離婚しない場合には100万円以下というのが一般的です。
ただし、交渉次第では相場を上回ったり、一方では当事者同士で揉めてしまって裁判しか打つ手がなくなってしまって相場を下回ったりすることもあります。
そのため、慰謝料請求するときに大切なことは証拠をそろえることと、当事者間でやり取りをしないことの2点。
とはいえ、男女問題はスピーディーな動き出しが大切となってきますので、まずは一度、一人で悩まずに弁護士に問い合わせてみるとよいでしょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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