【弁護士に聞く】不貞行為の時効が3年って本当?過ぎたときに取るべき手段とは
[投稿日] 2018年05月02日 [最終更新日] 2019年10月29日
不倫・不貞・浮気を得意としている弁護士
那賀島 八起 弁護士 埼玉県
蓮田総合法律事務所種村 求 弁護士 神奈川県
川崎パシフィック法律事務所テレビでも耳にすることが多い浮気問題、いわゆる不貞行為。この不貞行為について調べていくと、「時効は3年」という言葉を見かけることが多くあります。
しかし、その根拠はどこにあるのでしょう?また、もし時効を過ぎてしまった場合、対処する方法はないのでしょうか?
今回はこれらの疑問に関して、虎ノ門法律経済事務所の齋藤健博弁護士にお話を伺いました。

(虎ノ門法律経済事務所池袋支店 所属)
これまでさまざまな離婚・男女問題を扱っており、その中でも特に不貞行為に関する案件を得意としている。依頼者の話を丁寧に聞き、まずは「現状の整理」からサポートすることを重視している。
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弁護士を探す(無料)――早速ですが、不貞行為に時効はありますか?

齋藤 健博 弁護士
――時効になるとどうなるのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
先ほどの民法724条は損害賠償の話なので、損害賠償つまり「慰謝料」の請求が制限されてしまいます。
法律は「自分が権利侵害をうけてから、その慰謝料請求権を行使しない場合には、保護してあげないよ」といっています。
これは「権利の上に眠るものは保護に値せず」という格言で説明されることがあります。
――「不貞行為があったことを知った時から3年」とのことですが、この「知る」というのは、具体的に何を知ったときからなのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
これは「不貞の事実」と「加害者」、両方を知ってからと理解することができます。
しかし、証拠次第で別の考えをとることができます。
というのは、不貞の事実が開始された時点はどこなのか、厳密な特定は難しい。
あとで説明しますが、不貞の事実を承認していれば、それが時効の中断事由のひとつである「承認」というものにあたると理解できます。
そうすると、今度は時効をそこから10年に延長して考えることもできます。
このように、考え方によって時効のタイミングを再考することは可能ですね。
――では不倫をしていることを知っていても、加害者が誰なのかを知らなければ、3年のカウントダウンは始まらないということでしょうか。

齋藤 健博 弁護士
そうですね。
この民法724条は「権利行使ができたのにしなかった」という状態をダメだと言っているのです。
これはどういうことかというと「不法行為による請求ができる条件が整っていたのに、ほっといて3年経ってしまったらダメ」との理解です。
しかし加害者がわからずとも、20年経ったら請求できなくなります。
不貞の事実を知ったら、すぐに動いた方がよいことは間違いないですね。
さきほど説明した、権利の上に眠るものは保護に値しない、とはこのことです。
- 不貞行為の時効は「不貞行為があったことを知った時から3年、もしくは不貞行為から20年」(民法724条)
- 時効が過ぎると慰謝料の請求ができなくなる。
- 「知った時」というのは、不貞の事実、不貞の相手両方を知った時。相手がだれかわからない場合は請求できない。
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弁護士を探す(無料)時効を過ぎてしまったらもう請求はできないの?
――時効をすぎてしまったら、もう請求はできないのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
いいえ。実は、どうにかなるケースもあります。
先ほども説明しかけたのですが、例えば、途中で債務の承認をした証拠がある場合についてはなんとかなります。
――債務の承認は、どういうことでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
例えば不貞をした本人たちが「慰謝料払います」だとか「不倫をしてすみませんでした」と言った場合のことですね。これを債務の承認とみなすのです。
――他にも何かありますか?

齋藤 健博 弁護士
時効である「知った時から3年」が迫ってきた時には、民法153条(催告)にある通り、内容証明郵便にて請求することで、催告をした証拠が残り、時効を半年間伸ばすという方法を取ることもできます。
そうすると、新たに訴訟等の請求をするまで、6か月は伸ばせます。
しかし、これはぎりぎりラインという感じですね。
- 時効を過ぎてしまっていても、不貞をした本人たちが途中で謝罪していた場合、債務の承認とみなし請求することができる。
- 時効が迫ってきている場合には、催告することで半年間時効を延ばすこともできる。
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弁護士を探す(無料)――例えば、相手の不貞を知っていたものの、その時点では謝罪を受けたので、許したものの、その後やはり「請求したい」と思い直した時に「知った時から3年」がすでに経過してしまっていたら……。
そういう場合は、もう手遅れなのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
たしかにそうなってしまうと、かなり難しいですね。請求できないこともあります。
そのため、後日泣き寝入りしないために、不貞行為を知ったら、証拠となる念書を書いておくことをおすすめしていますね。
念書は、「私は、○○とこうこうこういう不貞行為をしました」という程度の内容で結構です。
ただしハンコを押してもらってください。事実を承認したことになります。
――3年過ぎてしまったら、打つ手はないのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
基本的には厳しいです。
ただ、可能性はないわけではありません。
例えば、先ほど申し上げたようにLINEやメールで「すみませんでした」と謝罪しているものはないか調べていただきます。
もし証拠があれば、民法の基本的な理解に従い、10年延長できるという可能性もありますね。

齋藤 健博 弁護士
あと考えられる方法としては、いつからいつまで交際していたかという期間の証拠が何かあれば、それにより「知った時から3年」のスタート時点をずらすという方法もあります。
例えば、不貞行為があったことを知った後も交際が続いていたことが示せるメールや写真があれば、その時を「知ったとき」とすることが考えられます。
例えば、2人仲良く映っている写真が2枚あったとします。2枚の間に1年間空いていれば、この1年間は親密な関係があったと言えますね。
- 不貞の事実を知ったら、許したとしても、その後のために念書を取っておくことがおすすめ。
- 時効を過ぎてから気が変わって請求したくなった場合、
①メールなどの証拠により時効を10年延長できる場合もある。
②交際期間が証明できる場合は「知った時から3年」の起算点をずらして考えられることがある。
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弁護士を探す(無料)やはり気になる、離婚と不貞行為の関係
――離婚した時点では不貞の事実は知らなかったものの、離婚後に元配偶者の不貞が発覚した場合は慰謝料を請求できるのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
はい。可能です。
――例えば離婚調停も終えて、親権や養育費もすべて確定した後だとしても可能なのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
もちろんできます。
不貞行為はあくまで慰謝料請求、つまり“心を傷つけられたこと”に対する請求となります。
そのため、離婚での請求とはまた別の根拠、別の角度からの請求となります。
――ちなみに不貞行為での慰謝料請求の場合、請求をする相手はどなたになるのでしょうか?

齋藤 健博 弁護士
そもそも不貞行為は、民法719条(共同不法行為者の責任)の考え方で、元配偶者と不貞相手の双方に請求できます。
ただし、不貞関係をやめさせて婚姻関係を継続したい場合は、家計が一緒である配偶者に請求をしても意味がありません。
そのため相手方のみに請求することが多いです。
不倫相手が妊娠したケースを想定すると、より深刻な問題になります。
今度は財布が一緒の夫婦から養育費の支払いが発生していくわけです。
そうすると、現実にどこで着地するかはとても問題になりますよね。
しかし離婚後となると、元配偶者とは家計が別になっているため、双方に請求するケースもあります。
誰に請求するかというのは、ご本人の希望によりますね。
――最後に、離婚の時効について悩んでいる方に一言お願いします。

齋藤 健博 弁護士
不貞行為を知ってから3年経つと、厳しい場合もあります。
しかし、弁護士の持って行き方次第で、有利な方向に考えたり、どうにかなるような方向に持っていったりできる方法はいくらでも考えられます。
一人で悩んでいても解決しにくいのがこの分野ではないかなと正直思っています。
ですから、まずは勇気を出して、お気軽にご相談いただければと思います。
- 離婚原因として3年以上前に知った不貞行為は、起算点を関係が消滅するまでの期間にずらすことで請求することができる。
- 離婚後に元配偶者の不貞が発覚した場合でも、慰謝料の請求は可能。
- 慰謝料の請求相手は、配偶者、不貞行為の相手どちらにも請求できる。ただし婚姻関係を継続する場合は、家計が一緒であることから不貞行為の相手にのみ請求する場合が多い。
「不貞行為の時効は3年」というのは確かに事実でした。
ですが、場合によってはなんとかできることもあるようです。
とはいえ、難しいケースも多いようなので、配偶者の不貞行為を知った時は念書を書いてもらうなどしたほうがよいでしょう。
まずは請求の有無に限らず弁護士のところに相談にいくことが大切なようです。
とにかく、時効が過ぎてしまったからとあきらめず、まずは一度、弁護士に問い合わせてみるとよいでしょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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