【弁護士に聞く】パートナーの不倫に気づいたら、弁護士に相談するべき?
[投稿日] 2018年05月22日 [最終更新日] 2018年06月08日
不倫・不貞・浮気を得意としている弁護士
金川 晋也 弁護士 東京都
秋葉原KM法律事務所那賀島 八起 弁護士 埼玉県
蓮田総合法律事務所あるとき、ふとパートナーの不倫に気づいてしまった……。 そんなときは、パートナーや不倫相手に対してどのような行動をとるべきでしょうか?
さまざまな解決方法が考えられますが、一つ挙げられるのが「弁護士への相談」です。
弁護士に相談する場合、どのような状態で相談すればより良い解決に導けるのでしょうか? 慰謝料などを個人で請求していくことも可能なのでしょうか?
今回は、パートナーの不倫に気づいたときの対処について、夫婦関係のトラブルに詳しい林奈緒子弁護士に伺いました。

(林奈緒子法律事務所)
相談者に寄り添う姿勢で、独立前から多くの離婚問題を取り扱ってきた。【親しみやすさと丁寧さ】をモットーとした、女性目線での対応が好評を得ている。
目次 |
---|
弁護士にパートナーの不倫を相談するタイミング
──パートナーの不倫に気づいてしまった場合、まず注意したいのはどのようなことでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
まず相手を問い詰めてしまう前に、弁護士に相談に来てほしいですね。
そのような状況では、ついカッとなってパートナーや不貞相手に感情をぶつけたり問い詰めたりしたくなってしまうかもしれません。
ですが実際にそうしてしまうと、「結局、不倫を否定されちゃいました。お金も全くもらえませんでした」というような状態になってしまいます。
そうなってからの相談だと、取れる手段が少なくなってしまうのです。
その前に1回来ていただきたいというのが、弁護士としての本音ですね。
- どのような対処方法があるのか
- 問い詰める前にやるべきことはあるのか
- お金を請求するとしたら誰に請求するのか
- どのような金額を請求するのか
- いつのタイミングで請求するのか
というような、問題を法律的に意味のある形でお話しすることができます。
──相談するのは、どのようなタイミングがいいのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
メールやLINEやラブホテルのポイントカードといった証拠のようなものを見つけた段階ですね。
裁判で通用するようなレベルの証拠を集めるのは大変です。
そこまででなくてよいので、不貞をしているとわかるものが手に入ったタイミングでいらっしゃってほしいです。
「パートナーが実際相手とやりとりしたLINEやメールを見てしまった」「ラブホテルのポイントカードを見つけた」「探偵をつけて証拠を持っている」というような状態でしたら、法律に則った適正な形で相手と交渉していくこともできると思います。
──逆に、この形で相談されても対応が難しいというのはどのような状況でしょうか?

林 奈緒子 弁護士
案件としてお受けするには不十分だと思う状況というのは、いわゆる疑惑の段階ですね。
「なんだか最近帰るのが遅い気がする」「スマートフォンばかり見ている」という理由で「怪しい」と感じているような段階では、まだ難しいです。
そのような場合には、「パートナーさんが相手とやりとりしているような何かを、持ってらっしゃいませんか」というようなことをお伺いしていきます。
決定的な証拠とまではいかなくても、その「怪しい」という時間にパートナーが一体何をしているかがわかるような何かがあるといいですね。
──不貞相手やパートナーをあらかじめ問い詰めてしまった状況では、実際の解決が難しくなってしまうのですか?

林 奈緒子 弁護士
そうですね。
それ以上の証拠が出てこなくなってしまうことが多いです。
そこから先どうやって証拠を集めるかというところで大変になってしまいます。
相手も「知られた」と思ってしまうと、証拠になるものを隠すようになってしまいますし。
たとえ問い詰めてしまった後でも、すでにある程度証拠が固まっていれば後からリカバリーが利くかもしれません。
- 相手を直接問い詰める前に、まず一回に弁護士に相談を。
- 「怪しい」だけでは、不十分。証拠のようなものが見つかったら弁護士に。
──探偵を自分でつけて証拠をつかむ人や、LINEやメールのやりとりで不貞を確信する人もいるのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
はい。探偵を使う方もわりといらっしゃいます。
自身で見つけたケースでは、同居している環境でパートナーのLINEやメールが見えてしまったというような形でしょうか。
メールやLINE、電車のICカード履歴などをもって相談にいらっしゃる方も、わりといらっしゃいます。
メールやLINEについては何かしらそれらしい内容がみつかる可能性が高いという印象です。
──LINEの内容は、単に仲が良いというだけではダメでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
そうですね。LINEやメールでも、仲良くて親しくしているという程度では難しいですね。
「どこかで待ち合わせして頻繁に出かけている」「体の関係を持ったとみられるやり取りがある」「泊まりに行ったことがわかるような内容がある」こんな内容があると確かですね。
特にLINEには、直接でなくとも不倫関係を匂わせるやりとりが見られることが多い印象です。
たとえば、「昨日は気持ちよかった」「最近奥さんはどうなの」というフレーズなどですね。
──どの程度の決定的な証拠が、必要なのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
「何か怪しい気がする」という程度の疑惑では難しいですね。
ですが個人間での交渉と言う段階でしたら、メールやLINEなど、何かしらの形で不貞関係の事実が推認できる証拠があれば交渉は可能です。
任意交渉でしたら実際に証拠を見せなくても相手が認めてくることもあります。
そのあたりはさじ加減もあるので、一度見せていただきたいですね。
ただ、裁判まで行くとなると、もっと確定的な証拠が必要になります。
──裁判をする場合は、どのような証拠が必要なのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
裁判までするケースというのは、決して多くはありません。
ですが、裁判となると肉体関係があったことを立証できる証拠が必要です。
探偵に依頼するなどして、ラブホテルやマンションの出入りを撮った写真が複数回分撮れるといいですね。
──入ったところと出たところの両方が必要なのですか?

林 奈緒子 弁護士
はい。
言い訳や修正ができるものは、証拠としては不十分です。
ラブホテルやマンションですと、いつ入ったのかが明確で2、3時間後などに出てきたという写真があるといいです。
ビジネスホテルの出入りの写真、自宅への出入りの写真は、1回分だけですと「仕事をしていた」など言われてしまう可能性があります。
電車のICカード履歴で複数回自宅まで行っていることが分かるなど、ほかの証拠があるといいですね。
できたら、複数回分の写真を用意して、ある程度の期間そのような関係だったということを立証できるとよいですね。
──不貞相手の方を訴えたい場合は、どのような証拠があるといいでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
その場合、「パートナーが既婚者であること」を不貞相手が知っていたかどうかが重要です。
これは、メールやLINEのようなものから見つけていくことも多いですね。
交渉の段階で、相手が「既婚者だと知っていた」と認めていれば問題ないのですけれども、それを否定してくるのはよくある話です。
「既婚者とは知りませんでした」「既に離婚状態であると思っていた」「夫婦関係が破綻していると思っていた」というような反論がありますね。
それに反論、対抗できる証拠があるかどうかというのが、裁判では大切になってくると思います。
- 任意交渉は、厳密な証拠までなくても可能。
- 裁判には、ラブホテルの出入りの写真など言い訳できない証拠を。
- 不貞相手を訴える場合は、パートナーが既婚者であることを知っていたかどうかが重要。
離婚や慰謝料など最終的なゴールは?
──不倫をされたことで相談に来る方は、最終的にはどのような解決や結末を求めているのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
基本的には、離婚するかどうかで求めるものが大きく違います。
離婚するという方の場合は、慰謝料をどれだけ取れるかというお話になってくると思います。
またお金のほかにも不倫相手との「連絡禁止」「接触禁止」の2つは欲しいとおっしゃる方も多いです。
むしろお金は取れなくてもいいから、それが欲しいと言う方も結構いらっしゃいます。
交渉しても頑強にお金を払わない不倫相手は、やっぱりいらっしゃいます。
その場合、お金はいいから「接触禁止」「連絡禁止」「連絡先の削除」まではしてほしいという形になることもあります。
──このような交渉の際、相手の反応はどのようなものが多いのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
反応は様々で、色々な方がいらっしゃいますね。
全く反応がないという方が一定数いらっしゃいます。
あとは、不貞を認めて金額の提示をしてくるという方も、ある程度いますね。
それから、反応はあって連絡は来るのですが、「夫婦関係が破綻していると聞いていた」「既婚者であることを知らなかった」と言って支払いを拒絶する人などがいらっしゃいます。
感情も絡みますし、それぞれ状況は複雑です。ですから、状況にあわせてケースバイケースで対応を決めていく形ですね。
- 解決のゴールは、離婚するかどうかで大きく変わる。
- 離婚する場合は、より高額な慰謝料を受け取ることをゴールとするケースが多い。
- 離婚しない場合は、慰謝料よりも接触禁止や連絡禁止などを求める場合も。
- 交渉の形はさまざま。ケースバイケースで進めていく。
──慰謝料の請求を、自分で行う方もいるのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
結構いらっしゃると思います。
ただ、自分で請求しようとしてみて駄目だったために相談にいらっしゃるということは、よくあります。
ご自身では難しかった場合でも、弁護士が交渉をすれば可能なことも多いです。
しかし、裁判までとなるとすでに証拠がとれなくなっていて、立証は難しいという場合もありますね。
──慰謝料の金額は、どんなに高額にしてもいいのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
請求する側もされる側も、法外な金額になっていないか注意が必要です。
かなり法外な価格を請求されている人もいます。
金額が高すぎる場合の請求は、場合によっては脅迫になってしまいますので、気をつけないといけません。
──気をつけた方がいい行動は、ほかにもありますか?

林 奈緒子 弁護士
興奮のあまり職場に電話をかけてしまったりする人もいますが、やめたほうがよいですね。
場合によってはプライバシーの侵害、名誉棄損になってしまう行為です。
法外な金額を請求してしまうだけでなく、あまりご自身で感情のままに動かれるといろいろと問題になってきてしまうので、やはりきちんと適正な手続きに則って請求することをお勧めします。
- 自分自身で交渉して行き詰まり、最終的に弁護士に相談する人も。
- 法外な慰謝料ではないかなど、請求された側も一度弁護に相談を。
- 慰謝料の請求が、脅迫や名誉毀損になってしまうこともあるので注意。
──弁護士に相談する前に、自分で決めておいた方がいいことはあるのでしょうか?

林 奈緒子 弁護士
相談前には、決められてなくても大丈夫です。
相談や交渉が進むにつれて後々変わる可能性もあるので。
ただ、将来的にであれ、「離婚するかどうか」というのは、最初の請求額を決める頃までには考えてみた方がいいですね。
離婚する場合としない場合では金額が倍以上違ってきます。
──相手も支払えないような高額な慰謝料を請求したいというような方には、どのように対応されるのでしょうか。

林 奈緒子 弁護士
相場より高くても「1回言ってみたい」という気持ちをお持ちの方はいらっしゃるので、その気持ちは尊重するようにしています。
相場が全てではないので、ある程度相場より上乗せした金額を請求することは問題ありません。
ただ、さきほど言ったように、極端に多い金額は脅迫ととられかねないので難しいですね。
──実際、不貞相手やパートナーにはどのように話を進めるのでしょうか。

林 奈緒子 弁護士
まず慰謝料などを誰に請求するかを決めていただきます。パートナーなのか、不貞相手の方なのかを決める形ですね。
ただ、誰がどのように話していくかというのは、ケースバイケースです。
ある程度の証拠を揃えて弁護士から請求をするということが基本です。
そのほかは、こちらからバックサポートさせていただく形で相談者ご本人がパートナーに直接話していく場合と、それでは抵抗があるなどの場合に弁護士から不貞についてお聞きするという場合などがありますね。
絶対にこうと決まった方法はありません。
状況に応じて変えていかなければいけないので、やはりとにかく早い段階で弁護士に相談されるのが一番よいと思います。
- 慰謝料の請求額を最初に決める頃までに、離婚についても決めておく。
- 交渉は、弁護士がバックサポートして夫婦同士で進めることもある。
- 弁護士が代理で話して、不貞についてたずねていくような場合も。
- 決まった方法はなく、状況や意向に応じて考えていく。
パートナーの不倫というショッキングな事実を知ったら、つい感情的になってしまうのも無理のないことです。でも、その感情を相手にぶつける行為が、場合によっては自分に不利な状況を招いてしまうことにもなります。
まず証拠のようなものをみつけたら、それをもって弁護士に相談すること。それによって、解決に向かう道が開けていきます。有利に進める方法もわかり、パートナーや不貞相手に対する自分自身の選択やゴールも見えてきそうです。専門家のサポートを受けることで、個人で進めるのとは違った心強さも得られるでしょう。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
問題は解決しましたか?
弁護士を検索して問い合わせる
弁護士Q&Aに質問を投稿する
トップへ
林 奈緒子 弁護士 (林奈緒子法律事務所)
女性の目線で親身かつ丁寧にお話を伺い、最善の解決策を提示いたします。