【弁護士に聞く】不倫はどこから?浮気だと認定されないように気をつけるポイント
[投稿日] 2018年05月24日 [最終更新日] 2018年06月08日
不倫・不貞・浮気を得意としている弁護士
市村 和也 弁護士 大阪府
谷四いちむら法律事務所山本 友也 弁護士 神奈川県
やまもと総合法律事務所はっきりとした証拠はないけれど、なんとなくパートナーが浮気しているんじゃないかと疑った経験はありませんか?
相手を問い詰めた結果「連絡を取っているだけ」「ご飯を食べに行っただけ」と言われてしまったら、もうその言葉を信じるしかありません。とはいえ、自分以外の異性と必要以上に親しくしているのは気分のいいものではないですよね。
ところで、浮気ってそもそもどこから浮気になるのでしょうか。
そこで、浮気の境界線や定義について、離婚や男女問題に詳しいS&M法律事務所の小林芽未弁護士にお話を伺いました。

(S&M法律事務所法律事務所)
心理学を学んだ経験を活かして、相談者の話をじっくりと聞き、メンタルケアを意識したアドバイスを行う。子育てをする母、また女性視点での弁護活動が好評を得ている。
目次 |
---|
どこから浮気になるかは、その人の経験や環境、もともと持っていた感情も影響してくるため、人によって違ってくるようです。
では、よく浮気のボーダーラインと言われる場面にはどんなものがあるでしょうか?
①連絡をとったら
自分以外の異性と連絡を取っただけで浮気だと判断してしまうケース。仕事やプライベートなどで、待ち合わせ場所を決めたり、業務上必要な連絡を取らなければならなかったりする場合は、浮気と判断されることはないかもしれません。
しかし、ハートの絵文字がたくさんついたメッセージや「早く会いたい」等、好意を持っていると思われてしまうような内容のやりとりは浮気を疑われかねません。
②2人だけで会ったら
異性と2人きりで会った時点で浮気だと認定する方は、実際にいるようです。ですが、一緒に仕事をしている同僚や取引先の人と歩いているだけでは浮気と判断するのは難しいでしょう。
浮気を疑わなくても、「あの人とはどういう関係だろう」と軽い気持ちで疑問に思う方もいるかもしれません。
③手を繋いだら
明確な好意の表れですね。好きでもない異性と手を繋ぐなど、たいていの人はしないものです。この現場を見かけた(あるいは人から聞いた)なら、浮気を疑うのも無理はないと言えます。
④キスしたら
手を繋ぐとの同様で、好きな人でなければしない行為です。そして手を繋ぐよりも相手に対して深い愛情があり、双方ともに特別な感情があると判断されても仕方ないでしょう。
その場の雰囲気で、周りから煽られてなどの理由で特別な感情もなくキスをしたとしても、やはり配偶者にとっては「浮気も同然」ととらえられてしまうかもしれません。
⑤性交渉を持ったら
恋愛感情があってもなくても、自分以外の異性と肉体関係があったならそれは浮気と判断されてしまいます。性交渉があっても「浮気をしていない」という言い訳は通用しないのが現実でしょう。
法律上の浮気は「肉体関係があってから」
――法律には「どこからが浮気」という定めはありますか?

小林芽未 弁護士
日本の法律では、いわゆる浮気や不倫に近いものに「不貞行為」というものがあります。
不貞行為は夫や妻がいるのにもかかわらず、他の異性と性交渉することです。ですから、法律上問題となるのは性交渉があったかどうかです。
他の異性と2人で連絡を取ったり密会したりしても、性交渉がなければ不貞行為には認定されません。
――浮気をしてはいけないという法律はあるのでしょうか?

小林芽未 弁護士
他人の権利や利益を侵害することを法律では「不法行為」といいます。
民法709条では、不法行為によって権利や利益を侵害された場合、慰謝料を請求できると定められています。「浮気をしてはいけない」と定めている法律はないため、浮気もこの不法行為にあてはめて、浮気相手に対して損害賠償請求できることになります。
――性交渉があったと確認できなければ不貞行為は認められないのでしょうか。

小林芽未 弁護士
はい。ただ、不貞行為を確認できなくても慰謝料を払ってもらったという事案はあります。
配偶者がビデオチャットで浮気相手と性器を見せ合っていたという事案で、その時のデータを証拠として、不貞行為になるかどうかというものでした。
それでも肉体的な交わりがない以上、「不貞行為」にはなりません。
ですが相手の女性が慰謝料を数十万円ほど支払いました。
また、そういうことをやっている人は、やはりホテルに行って実際に行為に及んでいるだろうと推認できるかもしれませんね。
- 「浮気をしてはいけない」と明確に定めている法律はない。しかし、夫や妻以外の異性と性交渉があった場合は不貞行為とされ、慰謝料請求の対象となり、離婚事由にもなりうる。
- 不貞行為があった明確な証拠がなくても、あからさまに性的な関係があったと確認できた場合には慰謝料を請求できる可能性がある。
――性交渉を持ったときに不貞行為と認定されるとのことですが、次のようなケースでは不貞行為になるのでしょうか。
酔った勢いで1回だけ性交渉を持ってしまった

小林芽未 弁護士
たった1回でも、精神的に傷ついた事実があれば慰謝料を請求することはできます。
あまり高額にはならず、相場的には1回あたり20万円くらいからでしょうか。
ただ、1回だけで夫婦関係が破綻に至ったとは通常考えにくいので、離婚事由にはなりませんね。
違う相手と酔った勢いの1回限りの性交渉を繰り返している場合は、難しいところですが、夫婦生活を守っていく気がないとみなされてしまうので離婚事由として認められる可能性はあります。
既婚者であることを隠して不貞行為があった場合

小林芽未 弁護士
意図的に隠しており相手の女性に故意がなかったと認められる場合には、相手女性への慰謝料請求はできません。
または、「結婚はしているけど、家庭内別居状態で夫婦として体をなしてないから大丈夫」などの嘘をついていた場合、その嘘が過失なく信じられるような状態なら相手に対して慰謝料を請求するのは難しいかもしれません。
セックスレス状態で夫婦関係が冷え切っている

小林芽未 弁護士
一方が他の異性と性交渉に及んだこと自体は不貞行為になります。
しかし、慰謝料を請求できるかどうかは、その不貞行為によって夫婦関係が壊れたかどうかポイントになってきます。
もともと夫婦仲が悪くすでに夫婦関係が破綻していたのであれば、不貞行為による慰謝料の請求は難しいでしょう。
完全に別居している

小林芽未 弁護士
これもセックスレス状態と同様で、すでに夫婦仲が悪い状態からの不貞行為であれば慰謝料の請求はできないと思います。
- 1回だけの不貞行為は、慰謝料の請求はできても離婚事由にはならない。
- 慰謝料を請求できるのは「その不貞行為によって夫婦関係が破たんしてしまったかどうか」がポイント。不貞行為がきっかけで夫婦関係が壊れたのではなく、不貞行為がある前からすでに夫婦仲が壊れてしまっている場合は慰謝料の請求はできない。
浮気だと認定されないようにするためには
――浮気に関するトラブルで多く寄せられる相談にはどのようなものがありますか?

小林芽未 弁護士
さまざまですが、「知らない人とメールをしているようだ」という相談などですね。
例えば、携帯を隠す素振りがあって、怪しいと思って勝手に携帯を見たらハートマークや「会いたい」といった文言が並んでいたから、不貞行為をしているのではないかというような相談です。
――そのような相談に来る人は、やはり離婚も視野に入れているのでしょうか。

小林芽未 弁護士
そうとも限りません。
そうした相談に来る方は、まだ離婚までは視野に入れていない方がほとんどです。
ただやはり、「会いたい」「好きだよ」のメッセージだけでは不貞行為と認定するのは難しいかなと思います。やはり性交渉がなければ慰謝料の請求は難しいところです。
それでも「昨日のセックスはすごかったよ」であるとか、あからさまな文章なら有利な証拠にはなりえるかもしれません。
――慰謝料を請求するためにはどのような証拠が必要でしょうか?

小林芽未 弁護士
慰謝料を請求するのであれば、配偶者に不貞行為があったことを証明しなければなりません。
例えば、ホテルに入っていくところと出て行くところを確認できたのなら、ホテル内で行為に及んでいるだろうと推認されます。ホテルに入っていくところか出て行くところ、どちらかだけでも大丈夫です。
そうした証拠をしっかり確保するためには、探偵などを利用してもいいですね。
- メールのやり取りを見つけた段階で浮気を疑うケースがほとんど。でも、実際に不貞行為がなければ慰謝料の請求は難しい。
- 不貞行為があったという証拠を確保するなら、探偵に依頼して調査してもらうのがおすすめ。
浮気が発覚する場面とは
――浮気だと認定されないようにするためには、どうすればいいのでしょうか。

小林芽未 弁護士
結局、配偶者以外の人とは性交渉しないことです。
それでもしてしまって、発覚させたくないのであれば、これは法律上の問題ではありませんが、徹底してバラさないことですね。
例えば、旦那さんの浮気を疑っている奥さんが、何か怪しいなと思って携帯電話を見て発覚することもあります。
なので携帯電話を2台持って、浮気相手と連絡を取っている携帯電話は自宅に持ち込まないなど、徹底することです。
「そこまでして浮気したい?」とも思いますが。
――携帯電話で連絡を取っているところで不貞行為が見つかってしまうケースが比較的多いのですね。それ以外で浮気が発覚するケースとしてどのようなものがありますか?

小林芽未 弁護士
旦那さんが他の女性と2人で会っているところを見た、あるいは聞いたという他人からの情報で発覚することもあります。
ですがこの場合、会社の打ち合わせで会っていたと言われれば、不貞行為と認定できませんね。
――浮気を疑ったけど、実際は違ったということはあるのでしょうか?

小林芽未 弁護士
結局は誤解だったというケースは本当に多いです。
子どもが「パパと女の人が2人で会ってたよ」と母親に話して、奥様が激昂して相手を確認したら、ただの会社の同僚だったということもありました。
冷静に対処したいところですね。
- 性交渉をしなければ不貞行為ではないが、浮気が発覚したり、勘違いされたりするような行動をとらないことも大切。
――夫婦間で「どこからが浮気にあたるのか?」を話し合っておくことも大切なのでしょうか。

小林芽未 弁護士
そうですね。
最近、私のところには婚前契約書を作成したいという依頼も増えています。
そして、その契約書の中で「浮気」の境界線はどこかを定義づけておくんです。
例えば、「異性と2人きりで食事に行くのも許せない」という方もいれば、「自分に優しくしてくれれば何をしてもかまわない」という方もいらっしゃいます。
結婚前からお互いの浮気の境界線を明確にしておくと争いになりにくいですね。
- 結婚前に婚前契約書を作成するなどして、お互いの浮気の境界線を知っておこう。
- 浮気と認定されないためには、勘違いされないような行動をとらないことも大切。
法律上、“不貞行為”の境界線は「性交渉があってから」。とはいえ、人間の感情は「法律ではこうだから」というだけで簡単に納得できるものではありません。
例えば、浮気を疑って問い詰めたら「キスはしたけど性交渉はないから、不貞行為はしていない」と言われて、すぐに納得できるでしょうか。これがきっかけで夫婦関係が壊れるような状態にはならなかったとしても、配偶者としてはいい気持ちはしないはずですよね。
誤解を招くような行動を起こさないことももちろん大切ですが、自分が他の異性とどんなことをしたら配偶者は不快になるのか、パートナーにとっての「浮気の境界線はどこなのか」を話し合っておくことも大切ですね。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
問題は解決しましたか?
弁護士を検索して問い合わせる
弁護士Q&Aに質問を投稿する
不倫・不貞・浮気を得意としている弁護士
トップへ
小林 芽未 弁護士 (S&M法律事務所)
お客様の気持ちに配慮し「親身に」「真摯に」向き合います。