【弁護士に聞く】不倫相手から「不倫をばらす」と脅迫されたときの対処方法
[投稿日] 2018年06月25日 [最終更新日] 2019年10月29日
不倫・不貞・浮気を得意としている弁護士
金川 晋也 弁護士 東京都
秋葉原KM法律事務所不倫は、とにかく秘密裡に行われるもの。ところが痴情のもつれが生じると、そうもいかないことがあります。
痴話げんかの挙句に「全部しゃべってやる!」といった脅しを受けるケースも少なくありませんが、家庭や職場に知られずに解決する方法はないのでしょうか?あるとしたら、何が必要なのでしょうか?
今回はこれらの疑問に関して、男女間のトラブルに詳しい、若井綜合法律事務所の若井亮弁護士にお話を伺いました。

(若井綜合法律事務所)
離婚や不貞をはじめとした男女間のトラブルについて、数多く解決した経験を持つ。事務所所在地である新宿区という地域柄もあり、解決した男女間の紛争は幅広い。
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弁護士を探す(無料)――不倫相手に「家族や会社にばらす」と脅されたときの、法的な対策を教えてください。

若井 弁護士
弁護士が介入すれば、その脅しが法の規定する脅迫行為にあたることを相手方に通達してやめさせることは可能です。
物理的に100%ブロックできるわけではありませんが。
その後、双方の主張を聞き取った上で、法的な解決策を提案することもできます。
――会社や家族にばれずに解決できますか?

若井 弁護士
絶対に知られないようにする方法は、残念ながらありません。
相手方が感情的になっている場合は、突発的な行為に出る恐れはありますね。
また、同じ職場で働いているなら、「職場の風紀を乱す行為なので、上司や人事に相談します」といった大義名分を持ち出して会社に相談される可能性はあります。
それでも早めに弁護士に依頼したほうが、秘密を守りやすいでしょう。
男女トラブルに精通した弁護士なら、家族や職場にしゃべらないようにと上手に交渉するすべを知っていますから。
――弁護士に不倫相手との交渉を依頼することも可能でしょうか?

若井 弁護士
できますね。
弁護士はいったん代理人として介入したら、脅してきた相手との連絡はすべて引き受けます。
依頼人に直接連絡しないようにと伝えることも可能です。
相手が「誰かにばらす」と脅してくるのであれば、それは脅迫行為に該当することを説明して、相手が暴走しないように働きかけることも可能です。
このような男女間のトラブルの場合、当事者同士が接点を持つと冷静な話し合いができないことがほとんどです。
その点、早めに弁護士に依頼していただけばその後の交渉を一任できますし、時間的にも精神的にも一気に楽になるはずです。
――警察に相談した場合、対応してもらえるものでしょうか?

若井 弁護士
脅しの程度によりますが、警察はなかなか介入しませんね。
「“殺す”など、不穏当な発言をしている」「家に連日押しかけて、ドアを叩いてうるさくしている」「刃物でも持ち出している」といった言動がみられるなら、脅迫罪に該当するため介入の可能性が上がります。
そうでないなら「何かあったら来てください」といわれる程度でしょう。相手方に電話で、警告の連絡を入れてくれることならあるかもしれませんが。
――脅してきた証拠を残しておくべきでしょうか?

若井 弁護士
証拠はあるほうが望ましいです。
音声や映像、あるいはeメールやLINEの履歴といった客観的な証拠があれば、弁護士にとっても警察にとっても具体的な措置をとりやすくなりますね。
他人の証言のような、記憶違い等が起こりやすいものでは証拠として弱いです。
――暴行を受けたらどうすればいいですか?

若井 弁護士
その場合は客観的な証拠を確保することをおすすめします。
映像や音声でもかまいませんが、けがをしたなら病院で診断書を書いてもらうとよいでしょう。
そのような物証があれば刑事事件になり得ますし、警察も介入できます。
また警察に相談しているという事実も、ひとつの証拠となります。
なお、暴行を受けた事実を速やかに弁護士に伝えて、どのような対応をしていくか相談することも大切です。
交渉の材料として使うことも可能ですし、損害賠償請求の可能性もありますから。
――脅されたことで、逆にこちらから賠償の要求は可能ですか?

若井 弁護士
不可能ではありません。
ただ、脅してきた相手方をむやみに刺激することになりかねません。弁護士としてはあまりおすすめできないですね。
- 確実に秘密を隠す方法はない。しかし早いうちに弁護士に依頼することでばれずに済むチャンスを持てる。弁護士には、相手方との交渉も全面的に任せられる。
- 脅されたときは、映像・音声・メール・LINEといった客観的な証拠を保全するべき。そのほうが弁護士や警察は動きやすい。暴行を受けたときは診断書が証拠として有力。
- 仕返し目的で、脅しを受けたことを理由に法的な賠償請求をすることは好ましくない。逆効果になる恐れが強い。
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弁護士を探す(無料)――お金で解決する、という方法もありえますか?

若井 弁護士
あくまでもケースバイケースなのですが、解決できたケースは現実に多くあります。
相手方の溜飲を下げる効果はありますし、もう二度と脅さないようにと約束させることができます。
ポイントは、あくまでも弁護士を通じて持ち掛けることでしょう。
不倫をした当事者がいきなりお金で何とかしようとすると、相手方をさらに怒らせてしまう恐れがありますし。
――お金を要求されたら、払う義務はありますか?

若井 弁護士
法律上、払う義務はありません。
もし相手方の請求に何か正当な理由でもあるなら、妥当な範囲で応じることになりますが。
たとえば、「お金を出さないと言いふらしてやる」と主張しているなら、それは不当な要求に該当しますから、弁護士は拒否します。
ちなみに、実は男性側が金銭を要求してくるケースは多いです。
男女交際では多くの場合、男性側が費用を出すことが多いですよね。
そのため、「これまで払ったお金を返せ」と要求する男性が出てくるのです。
このケースでも女性側に支払う義務はないですが、双方の合意を引き出すために金銭を用いることがあります。
少し補足しますと、お金を「貸していた」のであれば「返済する」義務はあります。しかし、お金を「あげた」「おごった」のであれば、それは「贈与した」ものと法律上は解釈されます。したがって法律上は、相手方に返済の請求はできません。それでも落としどころを見つけるために、お金を通した解決が現実の社会では行われているのです。
――手切れ金・口止め料・慰謝料の違いは何でしょうか?

若井 弁護士
法的な区別はありません。
実は「手切れ金」という言葉には、法的に無効となる表現が含まれています。
そのため弁護士は「解決金」「和解金」といった表現を用いる傾向が強いですね。
――お金を払うと決めたら、ただ渡すだけで大丈夫でしょうか?

若井 弁護士
一般の方が、ただお金を工面して渡すだけでは不用心です。
トラブルが再発しないような措置をとったほうがよいでしょう。合意書を作成するべきですね。
――合意書には、どんな内容が必要ですか?

若井 弁護士
まず、お金を渡した事実を記載しましょう。
そのほか、関係を断つこと(清算条項)を盛り込みましょう。
また、二度と第三者に口外しないこと(口外禁止事項)、家族に接触しないこと(接触禁止事項)等を誓約させる項目を設けましょう。
法的に正しい合意書を一般の方が準備するのは困難ですから、弁護士に依頼したほうが無難ですね。
脅しを受けた時点で依頼していれば、合意書の手続きもそのまま一任できます。
――お金での解決に応じてくれない場合は、どうすればいいですか?

若井 弁護士
そのようなケースもありますが、時間をかけて解消を目指すことになりますね。
ちなみに、家族や勤務先に知られることを恐れているうちは相手方のほうが有利ですが、逆に言えば自分から不倫の事実を周囲に認めてしまうと、立場が逆転する傾向があります。
つまり、もう脅されても失うものがなくなりますから。
いずれにしても焦ってはいけませんし、あきらめてもいけません。
秘密を守り通しながら戦うか、秘密をあえて自ら打ち明けた上で相手と対峙するか、どちらかを選んで対策を練ることになるでしょう。
どちらにせよ単独で対処するのは難しいですから、経験を積んだ弁護士と相談することが大切です。
なお相手方がエスカレートしてきたら、おそらく警察の出番となるでしょう。
- ただ不倫をしただけなら、基本的に金銭を払う義務は法律上存在しない。「貸していた金がまだ残っている」といった、正当な理由があれば例外となる。
- 義務がない場合でも、解決金と引き換えに二度と脅さないという合意を引き出すことは可能である。ただ拒否されることもあり、その場合は弁護士と相談の上でじっくり取り組んでいくことになる。
- 解決金を払うときは、必ず「合意書」を作成するべき。合意書には金を払った事実を筆頭に、清算条項・口外禁止事項・接触禁止事項を盛り込むことが不可欠である。
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弁護士を探す(無料)――家族がお金を要求されたらどうすればいいでしょうか?

若井 弁護士
家族が代わりにお金を支払う必要は全然ありません。
この場合も、家族が脅迫された事実を裏付ける証拠を準備しましょう。
それを持参して警察に行ってもいいですし、すでに弁護士に依頼しているならその弁護士に相談しましょう。
――脅された家族が不倫相手に対抗しようとしたときはどうしたらいいでしょうか?

若井 弁護士
放置しておくのはいけませんね。
ただ、やめるようにいっても家族が納得しないこともあるでしょう。
「どうして脅迫者の味方をするのか?」と、家族から疑問に思われる恐れがあります。
特に、不倫した事実を最後まで隠し通したいなら要注意です。
その場合は、相手方の弁護士や警察に連絡して、間に入ってもらうのが無難でしょう。
――離婚する羽目になったら、その原因となった不倫相手に賠償請求は可能ですか?

若井 弁護士
法的な請求として成立しにくいです。弁護士の立場からは、到底おすすめできません。
不倫をした当事者ではなく、当事者の配偶者が請求するのなら、まだ可能性がありますが。
――会社を辞めろと要求してきたら拒否できますか?

若井 弁護士
不倫をしただけでは、退職する義務はありません。
拒絶してかまいません。
ただ注意していただきたいのは、相手方が職場に押しかけてくるケースですね。
とにかく大事なことは、その要求が法的な見地から見て不当であることを、早急に脅してきた本人に伝えることです。
ただ当事者同士では話し合いがうまくいかない恐れが強いです。そこは弁護士に任せるのがいちばんですね。
――退職する羽目になったら、その原因となった不倫相手に賠償請求は可能ですか?

若井 弁護士
不可能ではありません。
しかしかなり難しいですし、相手方の出方にもよります。
残念ながら、期待したような結果にならないことが多いでしょう。
- 家族が金を要求されたり脅されたりしたら、弁護士や警察の助けを借りて対処することが大事。金銭を払う必要はない。家族がやり返そうとしたら放置してはいけない。
- 秘密をばらされた結果、離婚を余儀なくされてもそれを理由に賠償請求することは簡単ではない。
- 不倫を理由に退職する必要はない。脅されても拒否してかまわないが、自分で連絡せず弁護士に頼むべき。万一辞めることになった場合は、それを理由に賠償請求することは簡単ではない。
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弁護士を探す(無料)――相手が妊娠した場合、慰謝料を渡す必要はありますか?

若井 弁護士
ないですね。
男女双方の合意に基づいた性行為である限り、その結果として妊娠した場合に費用を負担する義務は発生しないのです。
――妊娠が発覚したとき、どんな解決策がありますか?

若井 弁護士
双方が合意するなら、中絶という選択肢はじゅうぶんに考えられます。
その場合に、費用を負担する義務はありません。
ただ女性にとっては心身に負担がかかりますし、しばらく働けなくなることも多いですから、男性側がそれなりのお金を払うケースが多いですね。
――中絶を拒否されたら、どうすればいいでしょうか?

若井 弁護士
強制的に中絶させることはできません。
つまり相手方がどうしても産もうとするなら、法的に止めることはできないのです。
――子供が産まれたら、認知や養育費の義務はありますか?

若井 弁護士
産まれたら、その後は認知・養育・相続といった問題が次々に発生しますね。
認知について、拒否はできますが、現在はDNA鑑定ができます。親子であることが証明されると、言い逃れできないことがほとんどです。
鑑定そのものを拒否し続けることは可能ですが、それも簡単ではありません。
女性側や誕生した子供側から認知を求められる可能性は、生きている間ずっと残りますし死後も一定期間続きます。
逃げられなくなって認知したら、その子が成人するまで養育費を払い続ける義務が生じます。
- 妊娠したと知らされても、それだけで金銭を支払う義務はない。中絶する場合でもその原則は変わらない。ただし中絶は女性にとって大きな重荷となるため、男性側が金銭を提供することは多い。
- 女性側が中絶に応じないというケースも少なくない。その場合、男性側が強引に中絶させる方法はない。
- 子供が誕生したら、認知を余儀なくされる可能性はかなり高い。認知をすると、成人までその子のために養育費を払う義務が発生する。
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弁護士を探す(無料)――脅されて弁護士に相談に行ったら、いくらかかりますか?

若井 弁護士
弁護士によって変わります。
無料でご相談可能な事務所もあれば、1時間単位で数千円~1万円くらいの有料となっている事務所もあります。
――弁護士費用は全部でどれくらいかかりますか?

若井 弁護士
弁護士の報酬は相談料のほかに、着手金・成功報酬があるのが普通です。
着手金は一般的に前金で一括払いですね。着手金は分割でのお支払いもよく行われています。
成功報酬については、不倫の脅迫のご相談ですと「成功」の定義があいまいなため、金額がまちまちになってしまうきらいがあります。
相手方からすでに金額を請求されているなら、その額の10~15%程度を成功報酬とする計算方法もあるでしょう。
そうではなく、ただ「追い払ってほしい」といった依頼であれば、着手金だけになることもあるでしょう。いずれにしても、ケースバイケースですね。
弊所では脅しや不当な要求を受けてお困りの方でしたら、30万円程度でお受けすることが多いですね。
――どんな事務所に行くといいでしょうか?

若井 弁護士
離婚問題であれば、専門的に取り組んでいる法律事務所がたくさんあるのですが、不倫にまつわるトラブルとなると、少ないのが現状です。この手の事案をやりたがる弁護士は、残念ながら多いとはいえません。
事例などをもとに、探してみるとよいでしょう。
――弁護士ではなく行政書士に依頼するという手段もあるのでしょうか。

若井 弁護士
行政書士に依頼すると、脅迫の相手方に送付する警告文書や警察に提出する被害届のような書類の作成を代行してくれます。
ただ行政書士は相手方との交渉はできません。弁護士であれば書類の作成や手続きも、依頼者の代理人としての交渉もすべてお引き受けできます。
行政書士に依頼して、書類だけで相手方が引き下がることもあるでしょう。しかしこじれてしまうと、弁護士の助けが必要になる恐れがありますね。「最初から弁護士に頼んだほうがよかった」となるケースもあるかもしれませんね。
- 脅しを受けたらすぐに弁護士に相談に行くべき。相談だけなら無料で応じてくれる弁護士もいる。総合的な弁護士費用は、ケースバイケースで変わるため早めに確認すること。
- 不倫が原因で発生した紛争の解決を得意とする弁護士に頼んだほうが得策。そのような実績を掲げている弁護士を探したほうがよい。
- 公的な書類の作成だけであれば行政書士に頼んでもよい。しかし、相手方との交渉を任せることはできないため、それを望むなら弁護士に最初から頼んだほうが正解。
弁護士に電話で相談・問合せ(無料)も可能です
弁護士を探す(無料)不倫がばれると、失うものは大きいものです。そのため不貞関係の末期になると「秘密をばらす」と脅されるケースは少なくないでしょう。
それだけでお金を払う義務はありませんが、解決金を通した和解を目指すことはじゅうぶんに可能です。
重要なことは、その際に必ず法的に有効な合意書を作成して、二度と脅されないようにすること。素人には難しいですが弁護士に頼めば申し分ない書面を取得できます。脅された時点で即座に弁護士に相談していれば、相手との交渉も全部お願いできます。そのほうが秘密を守れる可能性も上がるため、合理的とも言えます。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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若井 亮 弁護士 (若井綜合法律事務所)
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