世界の離婚(21) ~各国の離婚制度と国際離婚への影響~
[投稿日] 2013年08月02日 [最終更新日] 2016年10月28日
前回まで各国の婚姻制度についてみてきましたが、これらの国の人々と日本人が離婚する場合、どのような影響が生じるのでしょうか。
この件について定める「法の適用に関する通則法」によると、離婚について適用される法律は以下のようになります(27条、25条)。
- 夫婦が日本に居住しているのであれば、日本法が適用される
- 夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときも、日本法が適用される
- 夫婦が海外に居住しているのであれば、その国の法律が適用される
まとめると、以下のようになります(便宜上、夫の国籍を日本としていますが、妻の国籍が日本で、夫の国籍が外国であっても同様です)。
夫の国籍 | 夫の居住地 | 妻の国籍 | 妻の居住地 | 適用される法律 |
---|---|---|---|---|
日本 | 日本 | A国 | 日本 | 日本 |
日本 | 日本 | A国 | A国 | 日本 |
日本 | A国 | A国 | A国 | A国 |
日本 | B国 | A国 | B国 | B国 |
なお、米国のように、地域(州など)によって適用される法律が異なる場合には、その国の規則に従い指定される法律が適用されますが、そのような規則がない場合には、当事者に最も密接な関係がある地域の法律が適用されます(38条3項)。
また、インドのように、人種、宗教などの相違によって、適用される法律が異なる場合には、その国の規則に従い指定される法律が適用されますが、そのような規則がない場合には、当事者に最も密接な関係がある法律が適用されます(40条1項)。
日本法に基づいて離婚手続ができる場合には、日本人同士の離婚手続と変わりません。まず調停が行われ、不調となった場合には離婚裁判となります。
もっとも、日本において離婚が認められたからといって、当然に相手国でも離婚が認められるわけではありません。相手国の法律にどのように定められているかによって異なるので、確認する必要があります。
一方、外国の法律に基づいて離婚手続を行う場合も、その国の法律で離婚が認められたからといって、当然に日本でも離婚が認められるわけではありません。この場合には、その国で離婚が認められたことを証明する書類(判決文や離婚証明書等)と、その日本語訳を持参し、在外日本公館(大使館・領事館)や市町村役場で手続を行います。
次に、子の親権について、どの国の法律が適用されるかについては、法の適用に関する通則法32条により、子の本国法(国籍を有している国の法律)または、子の常居所地法(居住している国の法律)が適用されることになります。
これにより、日本法が適用される場合には、日本人同士の離婚手続と変わりません。ただし、元配偶者の外国人は「日本人の配偶者等」の在留資格での在留期間の更新ができなくなるため、帰国せざるを得なくなるケースもあります。その場合、面会交流や養育費の請求等に支障が出る可能性があります。
外国法が適用される場合には、その国において親権がどのように定められているかによって変わります。共同親権が定められている国の場合(米国など)、離婚後においても、婚姻中と同様、子どもの身の回りの世話や財産管理について、父母が話し合って決めることになります。日本人親の在留資格についても、考慮が必要になるケースがあります。
国によっては、他方の親権者の同意なく子どもを国外に連れ出すと、「子の奪取」罪が成立することもあるため、注意が必要です。
次回は、ハーグ条約について説明します。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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