離婚後の年金分割の仕組みを解説!老後に備える方法まとめ
[投稿日] 2017年07月04日 [最終更新日] 2017年07月04日
年金分割を得意としている弁護士
熟年離婚をした夫婦にとって、年金の扱いは重要な問題です。特に妻が専業主婦の場合は、国民年金しかもらえなくなるのでは?と不安にもなるでしょう。そんな時のために、ぜひ知っておいてほしいのが「年金分割」という制度です。
2007年にできた比較的新しい制度で、申請すれば離婚した妻にも年金が支払われるというものです。年金分割の仕組みや注意点について見ていきましょう。
最初に、年金分割制度の概要を確認しておきましょう。
年金分割とは、夫婦が婚姻期間中に支払った厚生年金・共済年金の年金保険料の納付実績を離婚の時に分割できる制度です。
サラリーマンの夫の給料から天引きされる厚生年金保険料には、専業主婦の妻の分の保険料も含まれています。老後まで夫婦が共に暮らせば、国民年金よりも受給額の多い厚生年金を2人で受給し、老後の生活費に充てることができました。
しかし離婚をすれば世帯が別となり、妻は新たな年金保険に加入しなければなりません。かつては、夫が支払った厚生年金保険料は、離婚後も夫だけの支払実績とされていました。妻は専業主婦として夫を支えても、離婚をすれば老後に受給できる年金が夫より少なくなり、その格差が問題となっていたのです。
こうした格差を改善するため、2007年に年金分割の制度が新たに作られました。
離婚の際に妻が年金分割の請求手続を行うことで、夫の名義で支払っていた保険料を妻に分けるような扱いができるようになりました。つまり妻の老後の年金の上乗せが可能になったのです。
「年金保険料の納付実績を離婚の時に分割」というと少し複雑に感じますが、年金の金額は納付した保険料をもとに算出されますから、年金を分割する制度と考えても問題ありません。かつては離婚すると夫だけが年金を受け取れていましたが、それでは長年家庭を支えてきた妻に対しあまりにも不平等だというので、年金分割制度ができたわけです。
年金分割は、夫が経営者や個人事業主の場合は行えない年金分割は、すべての夫婦が対象になるわけではありません。誰が対象になるのかを確認してみましょう。
年金分割が可能なのは、夫婦の一方が厚生年金または共済年金に入っていた場合のみです。
夫が国民年金にしか入っていなかった場合は対象外なので、夫がずっと会社の経営者や個人事業主だったような場合は、年金分割ができません。
あくまでも厚生年金や共済年金を分割する制度なので、夫が経営者や個人事業主の場合はそもそも関係がないということですね。この立場の人が離婚する場合は、別の対策を考える必要があるでしょう。
年金分割にあたっての注意点また、他にも注意点があります。
なお、年金分割をするには年金事務所での請求手続が必要です。原則として、離婚をした日の翌日から2年以内に手続をとった人しか請求できません。
また、もし離婚後に夫が死亡すれば、請求の期限が死亡から1ヶ月後に退縮されてしまいます。
分割の請求手続は先延ばしせずに、早めに行うように心がけた方がよいでしょう。年金分割の請求は、離婚の場合だけでなく、婚姻取消によって婚姻が解消した場合や、事実婚で夫の社会保険の扶養に入っていた場合も可能です。
手続きに時間制限があるので、早めに年金事務所へ行った方がよいということですね。婚姻取消や事実婚の解消の場合も離婚と同じように対応できますから、迷ったらとにかく年金事務所へ行くことをおすすめします。
年金分割の割合は、基本的に2分の1である年金分割ができるといっても、ほんの一部しかもらえないのでは意味がありませんよね。どの程度の割合で年金を分割できるのでしょうか。
年金分割の制度には、(1)合意分割制度、(2)3号分割制度、という2種類があり、それぞれ違いがあるので、区別をしておく必要があります。
(1)合意分割制度について
合意分割制度は、夫婦の合意や裁判所の決定により決まった割合(按分割合)で分割する方法です。
合意分割では、夫婦が婚姻してから離婚するまでの全期間が対象となり、その間に夫が支払った保険料の支払実績をどんな割合で分割するかを協議します。妻が分割を受けられる上限は、2分の1の割合までです。
もし話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の調停や審判によって決定されます。(2)3号分割制度について
3号分割制度とは、分割の請求があれば、夫婦の合意や裁判所の決定がなくても2分の1の割合で年金分割が行われる制度です。
とくに専業主婦など国民年金第3号被保険者からの請求が条件のため、3号分割と言われています。強制力が強い分割方法なので、その他にも様々な条件があります。分割の対象になるのは、3号分割の制度ができた2008年(平成20年)4月1日以降に妻が被保険者だった期間の分のみです。
年金分割には合意分割と3号分割の2種類があり、どちらの場合でも妻が受け取れるのは2分の1までということですね。専業主婦にとっては、強制力の強い3号分割の方が有利ですが、分割の方法はどうやって決定するのでしょうか。
合意分割の請求を行うと、婚姻期間中に3号分割の対象期間があれば、同時に2つの請求を行ったものとみなされると決まっています。
この場合は話し合いで決める必要がなく、強制的に2分の1の割合で分割されます。つまりどちらかを選ぶ余地は、あまりありません。
請求さえすれば、基本的に3号分割に従って2分の1で決定されるというわけですね。請求を忘れなければ、年金分割はほぼ確実に可能になると考えてよいでしょう。
離婚ができなければ、年金分割もできない!最後に、年金分割のちょっとした落とし穴について触れておきます。年金分割は離婚に伴う制度なので、そもそも離婚ができなければ年金分割もできないという問題です。
別居をしております。5歳年上の主人と最後まで添い遂げたらいいのですが何かしら不安、不信感があり離婚を切り出しました。主人は離婚をして気持ちをすっきりしたらいいとお互い離婚することには反対はなかったので、年金分割の話を持ち出しました。途端に主人の態度がかわり話にならなくなりました。
(中略)
そもそもご主人が現状で離婚に同意するか否か、によります。
離婚の話自体がこれ以上進まないのであれば、離婚調停の申し立てを行ない、その中で年金分割についても決定することになります。
年金分割をしたくないがために、相手が離婚に同意しないケースもあるというわけです。話し合いで決着がつかなければ、調停や裁判を行いましょう。
まとめ:年金分割は必ず申請し、離婚後も安定した生活を送ろう年金分割制度ができたことで、夫婦間の不平等はかなり解消されました。申請さえすれば、離婚後も安定した生活を送れます。しかし、できてから間もない制度のため、判例などが不足しているのも事実です。老後の生活を左右する問題だけに当事者の不安も大きく、Legalusにも年金分割に関する多数の相談が寄せられています。
困ったら、離婚問題に詳しい弁護士に相談してみるのも、有効な手段です。
更新時の情報をもとに執筆しています。適法性については自身で確認のうえ、ご活用ください。
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